第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「更生手続」とは、株式会社について、この法律の定めるところにより、更生計画を定め、更生計画が定められた場合にこれを遂行する手続(更生手続開始の申立てについて更生手続開始の決定をするかどうかに関する審理及び裁判をする手続を含む。)をいう。
2 この法律において「更生計画」とは、更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部を変更する条項その他の第百六十七条に規定する条項を定めた計画をいう。
3 この法律において「更生事件」とは、更生手続に係る事件をいう。
4 この法律において「更生裁判所」とは、更生事件が係属している地方裁判所をいう。
5 この法律(第六条、第四十一条第一項第二号、第百五十五条第二項、第百五十九条、第二百四十六条第一項から第三項まで、第二百四十八条第一項から第三項まで、第二百五十条並びに第二百五十五条第一項及び第二項を除く。)において「裁判所」とは、更生事件を取り扱う一人の裁判官又は裁判官の合議体をいう。
6 この法律において「開始前会社」とは、更生裁判所に更生事件が係属している株式会社であって、更生手続開始の決定がされていないものをいう。
7 この法律において「更生会社」とは、更生裁判所に更生事件が係属している株式会社であって、更生手続開始の決定がされたものをいう。
8 この法律において「更生債権」とは、更生会社に対し更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権又は次に掲げる権利であって、更生担保権又は共益債権に該当しないものをいう。
一 更生手続開始後の利息の請求権
二 更生手続開始後の不履行による損害賠償又は違約金の請求権
三 更生手続参加の費用の請求権
四 第五十八条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)に規定する債権
五 第六十一条第一項の規定により双務契約が解除された場合における相手方の損害賠償の請求権
六 第六十三条において準用する破産法(平成十六年法律第七十五号)第五十八条第二項の規定による損害賠償の請求権
七 第六十三条において準用する破産法第五十九条第一項の規定による請求権(更生会社の有するものを除く。)
八 第九十一条の二第二項第二号又は第三号に定める権利
9 この法律において「更生債権者」とは、更生債権を有する者をいう。
10 この法律において「更生担保権」とは、更生手続開始当時更生会社の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権及び商法(明治三十二年法律第四十八号)又は会社法(平成十七年法律第八十六号)の規定による留置権に限る。)の被担保債権であって更生手続開始前の原因に基づいて生じたもの又は第八項各号に掲げるもの(共益債権であるものを除く。)のうち、当該担保権の目的である財産の価額が更生手続開始の時における時価であるとした場合における当該担保権によって担保された範囲のものをいう。ただし、当該被担保債権(社債を除く。)のうち利息又は不履行による損害賠償若しくは違約金の請求権の部分については、更生手続開始後一年を経過する時(その時までに更生計画認可の決定があるときは、当該決定の時)までに生ずるものに限る。
11 この法律において「更生担保権者」とは、更生担保権を有する者をいう。
12 この法律において「更生債権等」とは、更生債権又は更生担保権をいう。ただし、次章第二節においては、開始前会社について更生手続開始の決定がされたとすれば更生債権又は更生担保権となるものをいう。
13 この法律において「更生債権者等」とは、更生債権者又は更生担保権者をいう。ただし、次章第二節においては、開始前会社について更生手続開始の決定がされたとすれば更生債権者又は更生担保権者となるものをいう。
14 この法律において「更生会社財産」とは、更生会社に属する一切の財産をいう。
15 この法律において「租税等の請求権」とは、国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権であって、共益債権に該当しないものをいう。
(外国人の地位)
第三条 外国人又は外国法人は、更生手続に関し日本人又は日本法人と同一の地位を有する。
(更生事件の管轄)
第四条 この法律の規定による更生手続開始の申立ては、株式会社が日本国内に営業所を有するときに限り、することができる。
第五条 更生事件は、株式会社の主たる営業所の所在地(外国に主たる営業所がある場合にあっては、日本における主たる営業所の所在地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 前項の規定にかかわらず、更生手続開始の申立ては、株式会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所にもすることができる。
3 第一項の規定にかかわらず、株式会社が他の株式会社の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。以下同じ。)の過半数を有する場合には、当該他の株式会社(以下この項及び次項において「子株式会社」という。)について更生事件が係属しているときにおける当該株式会社(以下この項及び次項において「親株式会社」という。)についての更生手続開始の申立ては、子株式会社の更生事件が係属している地方裁判所にもすることができ、親株式会社について更生事件が係属しているときにおける子株式会社についての更生手続開始の申立ては、親株式会社の更生事件が係属している地方裁判所にもすることができる。
4 子株式会社又は親株式会社及び子株式会社が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、当該他の株式会社を当該親株式会社の子株式会社とみなして、前項の規定を適用する。
5 第一項の規定にかかわらず、株式会社が最終事業年度について会社法第四百四十四条の規定により当該株式会社及び他の株式会社に係る連結計算書類(同条第一項に規定する連結計算書類をいう。)を作成し、かつ、当該株式会社の定時株主総会においてその内容が報告された場合には、当該他の株式会社について更生事件が係属しているときにおける当該株式会社についての更生手続開始の申立ては、当該他の株式会社の更生事件が係属している地方裁判所にもすることができ、当該株式会社について更生事件が係属しているときにおける当該他の株式会社についての更生手続開始の申立ては、当該株式会社の更生事件が係属している地方裁判所にもすることができる。
6 第一項の規定にかかわらず、更生手続開始の申立ては、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にもすることができる。
7 前各項の規定により二以上の地方裁判所が管轄権を有するときは、更生事件は、先に更生手続開始の申立てがあった地方裁判所が管轄する。
(専属管轄)
第六条 この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。
(更生事件の移送)
第七条 裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、更生事件を次に掲げる地方裁判所のいずれかに移送することができる。
一 更生手続開始の申立てに係る株式会社の営業所の所在地を管轄する地方裁判所
二 前号の株式会社の財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所
三 第五条第二項から第六項までに規定する地方裁判所
(任意的口頭弁論等)
第八条 更生手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
2 裁判所は、職権で、更生事件に関して必要な調査をすることができる。
3 裁判所は、必要があると認めるときは、開始前会社又は更生会社の事業を所管する行政庁及び租税等の請求権(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(昭和四十四年法律第四十六号。以下「租税条約等実施特例法」という。)第十一条第一項に規定する共助対象外国租税(以下「共助対象外国租税」という。)の請求権を除く。)につき徴収の権限を有する者に対して、当該開始前会社又は当該更生会社の更生手続について意見の陳述を求めることができる。
4 前項に規定する行政庁又は徴収の権限を有する者は、裁判所に対して、同項に規定する開始前会社又は更生会社の更生手続について意見を述べることができる。
(不服申立て)
第九条 更生手続に関する裁判につき利害関係を有する者は、この法律に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができる。その期間は、裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して二週間とする。
(公告等)
第十条 この法律の規定による公告は、官報に掲載してする。
2 公告は、掲載があった日の翌日に、その効力を生ずる。
3 この法律の規定により送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができる。ただし、この法律の規定により公告及び送達をしなければならない場合は、この限りでない。
4 この法律の規定により裁判の公告がされたときは、一切の関係人に対して当該裁判の告知があったものとみなす。
5 前二項の規定は、この法律に特別の定めがある場合には、適用しない。
(事件に関する文書の閲覧等)
第十一条 利害関係人は、裁判所書記官に対し、この法律(この法律において準用する他の法律を含む。)の規定に基づき、裁判所に提出され、又は裁判所が作成した文書その他の物件(以下この条及び次条第一項において「文書等」という。)の閲覧を請求することができる。
2 利害関係人は、裁判所書記官に対し、文書等の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
3 前項の規定は、文書等のうち録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について利害関係人の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。
4 前三項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる者は、当該各号に定める命令、保全処分、許可又は裁判のいずれかがあるまでの間は、前三項の規定による請求をすることができない。ただし、当該者が更生手続開始の申立人である場合は、この限りでない。
一 開始前会社以外の利害関係人 第二十四条第一項若しくは第二項の規定による中止の命令、第二十五条第二項に規定する包括的禁止命令、第二十八条第一項の規定による保全処分、第二十九条第三項の規定による許可、第三十条第二項に規定する保全管理命令、第三十五条第二項に規定する監督命令、第三十九条の二第一項の規定による保全処分又は更生手続開始の申立てについての裁判
二 開始前会社 更生手続開始の申立てに関する口頭弁論若しくは開始前会社を呼び出す審尋の期日の指定の裁判又は前号に定める命令、保全処分、許可若しくは裁判
(支障部分の閲覧等の制限)
第十二条 次に掲げる文書等について、利害関係人がその閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)を行うことにより、更生会社(開始前会社及び開始前会社又は更生会社であった株式会社を含む。以下この条において同じ。)の事業の維持更生に著しい支障を生ずるおそれ又は更生会社の財産に著しい損害を与えるおそれがある部分(以下この条において「支障部分」という。)があることにつき疎明があった場合には、裁判所は、当該文書等を提出した保全管理人、管財人又は調査委員の申立てにより、支障部分の閲覧等の請求をすることができる者を、当該申立てをした者及び更生会社(管財人又は保全管理人が選任されている場合にあっては、管財人又は保全管理人。次項において同じ。)に限ることができる。
一 第三十二条第一項ただし書、第四十六条第二項前段又は第七十二条第二項(第三十二条第三項において準用する場合を含む。)の許可を得るために裁判所に提出された文書等
二 第八十四条第二項の規定による報告又は第百二十五条第二項に規定する調査若しくは意見陳述に係る文書等
2 前項の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、利害関係人(同項の申立てをした者及び更生会社を除く。次項において同じ。)は、支障部分の閲覧等の請求をすることができない。
3 支障部分の閲覧等の請求をしようとする利害関係人は、更生裁判所に対し、第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、同項の規定による決定の取消しの申立てをすることができる。
4 第一項の申立てを却下した決定及び前項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 第一項の規定による決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じない。
(民事訴訟法の準用)
第十三条 更生手続に関しては、特別の定めがある場合を除き、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定を準用する。
(最高裁判所規則)
第十四条 この法律に定めるもののほか、更生手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第十五条及び第十六条 削除
第二章 更生手続開始の申立て及びこれに伴う保全措置
第一節 更生手続開始の申立て
(更生手続開始の申立て)
第十七条 株式会社は、当該株式会社に更生手続開始の原因となる事実(次の各号に掲げる場合のいずれかに該当する事実をいう。)があるときは、当該株式会社について更生手続開始の申立てをすることができる。
一 破産手続開始の原因となる事実が生ずるおそれがある場合
二 弁済期にある債務を弁済することとすれば、その事業の継続に著しい支障を来すおそれがある場合
2 株式会社に前項第一号に掲げる場合に該当する事実があるときは、次に掲げる者も、当該株式会社について更生手続開始の申立てをすることができる。
一 当該株式会社の資本金の額の十分の一以上に当たる債権を有する債権者
二 当該株式会社の総株主の議決権の十分の一以上を有する株主
(破産手続開始等の申立義務と更生手続開始の申立て)
第十八条 他の法律の規定により株式会社の清算人が当該株式会社に対して破産手続開始又は特別清算開始の申立てをしなければならない場合においても、更生手続開始の申立てをすることを妨げない。
(解散後の株式会社による更生手続開始の申立て)
第十九条 清算中、特別清算中又は破産手続開始後の株式会社がその更生手続開始の申立てをするには、会社法第三百九条第二項に定める決議によらなければならない。
(疎明)
第二十条 更生手続開始の申立てをするときは、第十七条第一項に規定する更生手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。
2 第十七条第二項の規定により債権者又は株主が申立てをするときは、その有する債権の額又は議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。)の数をも疎明しなければならない。
(費用の予納)
第二十一条 更生手続開始の申立てをするときは、申立人は、更生手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
2 費用の予納に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(意見の聴取等)
第二十二条 裁判所は、第十七条の規定による更生手続開始の申立てがあった場合には、当該申立てを棄却すべきこと又は更生手続開始の決定をすべきことが明らかである場合を除き、当該申立てについての決定をする前に、開始前会社の使用人の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、開始前会社の使用人の過半数で組織する労働組合がないときは開始前会社の使用人の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
2 第十七条第二項の規定により債権者又は株主が更生手続開始の申立てをした場合においては、裁判所は、当該申立てについての決定をするには、開始前会社の代表者(外国に本店があるときは、日本における代表者)を審尋しなければならない。
(更生手続開始の申立ての取下げの制限)
第二十三条 更生手続開始の申立てをした者は、更生手続開始の決定前に限り、当該申立てを取り下げることができる。この場合において、次条第一項若しくは第二項の規定による中止の命令、第二十五条第二項に規定する包括的禁止命令、第二十八条第一項の規定による保全処分、第二十九条第三項の規定による許可、第三十条第二項に規定する保全管理命令、第三十五条第二項に規定する監督命令又は第三十九条の二第一項の規定による保全処分があった後は、裁判所の許可を得なければならない。
第二節 更生手続開始の申立てに伴う保全措置
第一款 開始前会社に関する他の手続の中止命令等
(他の手続の中止命令等)
第二十四条 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続又は処分の中止を命ずることができる。ただし、第二号に掲げる手続又は第六号に掲げる処分については、その手続の申立人である更生債権者等又はその処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限る。
一 開始前会社についての破産手続、再生手続又は特別清算手続
二 強制執行等(更生債権等に基づく強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行又は更生債権等を被担保債権とする留置権による競売をいう。)の手続で、開始前会社の財産に対して既にされているもの
三 開始前会社に対して既にされている企業担保権の実行手続
四 開始前会社の財産関係の訴訟手続
五 開始前会社の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続
六 外国租税滞納処分(共助対象外国租税の請求権に基づき国税滞納処分の例によってする処分(共益債権を徴収するためのものを除く。)をいう。)で、開始前会社の財産に対して既にされているもの
2 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、職権で、国税滞納処分(共益債権を徴収するためのものを除き、国税滞納処分の例による処分(共益債権及び共助対象外国租税の請求権を徴収するためのものを除く。)を含む。)で、開始前会社の財産に対して既にされているものの中止を命ずることができる。ただし、あらかじめ、徴収の権限を有する者の意見を聴かなければならない。
3 前項の規定による中止の命令は、更生手続開始の申立てについて決定があったとき、又は中止を命ずる決定があった日から二月を経過したときは、その効力を失う。
4 裁判所は、第一項及び第二項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
5 裁判所は、開始前会社の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第一項第二号の規定により中止した同号に規定する強制執行等の手続、同項第六号の規定により中止した同号に規定する外国租税滞納処分又は第二項の規定により中止した同項に規定する国税滞納処分の取消しを命ずることができる。ただし、当該国税滞納処分の取消しを命ずる場合においては、あらかじめ、徴収の権限を有する者の意見を聴かなければならない。
6 第一項又は第二項の規定による中止の命令、第四項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
7 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
8 第六項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
(包括的禁止命令)
第二十五条 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、前条第一項第二号若しくは第六号又は第二項の規定による中止の命令によっては更生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、全ての更生債権者等に対し、同条第一項第二号に規定する強制執行等、同項第六号に規定する外国租税滞納処分及び同条第二項に規定する国税滞納処分の禁止を命ずることができる。ただし、事前に又は同時に、開始前会社の主要な財産に関し第二十八条第一項の規定による保全処分をした場合又は第三十条第二項に規定する保全管理命令若しくは第三十五条第二項に規定する監督命令をした場合に限る。
2 前項の規定による禁止の命令(以下「包括的禁止命令」という。)を発する場合において、裁判所は、相当と認めるときは、一定の範囲に属する前条第一項第二号に規定する強制執行等、同項第六号に規定する外国租税滞納処分又は同条第二項に規定する国税滞納処分を包括的禁止命令の対象から除外することができる。
3 包括的禁止命令が発せられた場合には、次の各号に掲げる手続で、開始前会社の財産に対して既にされているもの(当該包括的禁止命令により禁止されることとなるものに限る。)は、当該各号に定める時までの間、中止する。
一 前条第一項第二号に規定する強制執行等の手続及び同項第六号に規定する外国租税滞納処分 更生手続開始の申立てについての決定があった時
二 前条第二項に規定する国税滞納処分 前号に定める時又は当該包括的禁止命令の日から二月が経過した時のいずれか早い時
4 裁判所は、包括的禁止命令を変更し、又は取り消すことができる。
5 裁判所は、開始前会社の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第三項の規定により中止した同項各号に掲げる手続の取消しを命ずることができる。ただし、前条第二項に規定する国税滞納処分の取消しを命ずる場合においては、あらかじめ、徴収の権限を有する者の意見を聴かなければならない。
6 包括的禁止命令、第四項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
7 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
8 包括的禁止命令が発せられたときは、更生債権等(当該包括的禁止命令により前条第一項第二号に規定する強制執行等又は同条第二項に規定する国税滞納処分が禁止されているものに限る。)については、当該包括的禁止命令が効力を失った日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。
(包括的禁止命令に関する公告及び送達等)
第二十六条 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定があった場合には、その旨を公告し、その裁判書を開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。次項において同じ。)及び申立人に送達し、かつ、その決定の主文を知れている更生債権者等及び開始前会社(保全管理人が選任されている場合に限る。)に通知しなければならない。
2 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、開始前会社に対する裁判書の送達がされた時から、効力を生ずる。
3 前条第五項の規定による取消しの命令及び同条第六項の即時抗告についての裁判(包括的禁止命令を変更し、又は取り消す旨の決定を除く。)があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
(包括的禁止命令の解除)
第二十七条 裁判所は、包括的禁止命令を発した場合において、第二十四条第一項第二号に規定する強制執行等の申立人である更生債権者等に不当な損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該更生債権者等の申立てにより、当該更生債権者等に限り当該包括的禁止命令を解除する旨の決定をすることができる。この場合において、当該更生債権者等は、開始前会社の財産に対する当該強制執行等をすることができ、当該包括的禁止命令が発せられる前に当該更生債権者等がした当該強制執行等の手続は、続行する。
2 前項の規定は、裁判所が第二十四条第一項第六号に規定する外国租税滞納処分又は同条第二項に規定する国税滞納処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認める場合について準用する。
3 第一項(前項において準用する場合を含む。次項及び第六項において同じ。)の規定による解除の決定を受けた者に対する第二十五条第八項の規定の適用については、同項中「当該包括的禁止命令が効力を失った日」とあるのは、「第二十七条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定による解除の決定があった日」とする。
4 第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6 第一項の申立てについての裁判及び第四項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
第二款 開始前会社の業務及び財産に関する保全処分等
(開始前会社の業務及び財産に関する保全処分)
第二十八条 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、開始前会社の業務及び財産に関し、開始前会社の財産の処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
2 裁判所は、前項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
3 第一項の規定による保全処分及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
5 第三項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
6 裁判所が第一項の規定により開始前会社が更生債権者等に対して弁済その他の債務を消滅させる行為をすることを禁止する旨の保全処分を命じた場合には、更生債権者等は、更生手続の関係においては、当該保全処分に反してされた弁済その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができない。ただし、更生債権者等が、その行為の当時、当該保全処分がされたことを知っていたときに限る。
(更生手続開始前における商事留置権の消滅請求)
第二十九条 開始前会社の財産につき商法又は会社法の規定による留置権がある場合において、当該財産が開始前会社の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)は、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、留置権者に対して、当該留置権の消滅を請求することができる。
2 前項の請求をするには、同項の財産の価額に相当する金銭を、同項の留置権者に弁済しなければならない。
3 第一項の請求及び前項の弁済をするには、裁判所の許可を得なければならない。
4 前項の規定による許可があった場合における第二項の弁済の額が第一項の財産の価額を満たすときは、当該弁済の時又は同項の請求の時のいずれか遅い時に、同項の留置権は消滅する。
5 前項の規定により第一項の留置権が消滅したことを原因とする同項の財産の返還を求める訴訟においては、第二項の弁済の額が当該財産の価額を満たさない場合においても、原告の申立てがあり、当該訴訟の受訴裁判所が相当と認めるときは、当該受訴裁判所は、相当の期間内に不足額を弁済することを条件として、第一項の留置権者に対して、当該財産を返還することを命ずることができる。
第三款 保全管理命令
(保全管理命令)
第三十条 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、更生手続の目的を達成するために必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、開始前会社の業務及び財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができる。
2 裁判所は、前項の処分(以下「保全管理命令」という。)をする場合には、当該保全管理命令において、一人又は数人の保全管理人を選任しなければならない。ただし、第六十七条第三項に規定する者は、保全管理人に選任することができない。
3 裁判所は、保全管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
4 保全管理命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
(保全管理命令に関する公告及び送達)
第三十一条 裁判所は、保全管理命令を発したときは、その旨を公告しなければならない。保全管理命令を変更し、又は取り消す旨の決定があった場合も、同様とする。
2 保全管理命令、前条第三項の規定による決定及び同条第四項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
3 第十条第四項の規定は、第一項の場合については、適用しない。
(保全管理人の権限)
第三十二条 保全管理命令が発せられたときは、開始前会社の事業の経営並びに財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)の管理及び処分をする権利は、保全管理人に専属する。ただし、保全管理人が開始前会社の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
2 前項ただし書の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3 第七十二条第二項及び第三項の規定は、保全管理人について準用する。
(保全管理人代理)
第三十三条 保全管理人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で一人又は数人の保全管理人代理を選任することができる。ただし、第六十七条第三項に規定する者は、保全管理人代理に選任することができない。
2 前項の保全管理人代理の選任については、裁判所の許可を得なければならない。
(準用)
第三十四条 第五十四条、第五十七条、第五十九条、第六十七条第二項、第六十八条、第六十九条、第七十三条、第七十四条第一項、第七十六条から第八十条まで、第八十一条第一項から第四項まで及び第八十二条第一項から第三項までの規定は保全管理人について、第八十一条第一項から第四項までの規定は保全管理人代理について、それぞれ準用する。この場合において、第五十九条中「第四十三条第一項の規定による公告」とあるのは「第三十一条第一項の規定による公告」と、第八十二条第二項中「後任の管財人」とあるのは「後任の保全管理人又は管財人」と、同条第三項中「後任の管財人」とあるのは「後任の保全管理人、管財人」と読み替えるものとする。
2 第五十二条第一項から第三項までの規定は保全管理命令が発せられた場合について、同条第四項から第六項までの規定は保全管理命令が効力を失った場合(更生手続開始の決定があった場合を除く。)について、それぞれ準用する。
3 開始前会社の財産関係の事件で行政庁に係属するものについては、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める規定を準用する。
一 保全管理命令が発せられた場合 第五十二条第一項から第三項まで
二 保全管理命令が効力を失った場合(更生手続開始の決定があった場合を除く。)第五十二条第四項から第六項まで
4 第六十五条の規定は、保全管理人が選任されている期間中に取締役、執行役又は清算人が自己又は第三者のために開始前会社の事業の部類に属する取引をしようとする場合について準用する。
5 第六十六条第一項本文の規定は、保全管理人が選任されている期間中における開始前会社の取締役、会計参与、監査役、執行役及び清算人について準用する。
第四款 監督命令
(監督命令)
第三十五条 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、更生手続の目的を達成するために必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、監督委員による監督を命ずる処分をすることができる。
2 裁判所は、前項の処分(以下「監督命令」という。)をする場合には、当該監督命令において、一人又は数人の監督委員を選任し、かつ、その同意を得なければ開始前会社がすることができない行為を指定しなければならない。
3 前項に規定する監督委員の同意を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
4 裁判所は、監督命令を変更し、又は取り消すことができる。
5 監督命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
(監督命令に関する公告及び送達)
第三十六条 裁判所は、監督命令を発したときは、その旨を公告しなければならない。監督命令を変更し、又は取り消す旨の決定があった場合も、同様とする。
2 監督命令、前条第四項の規定による決定及び同条第五項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
3 第十条第四項の規定は、第一項の場合については、適用しない。
(取締役等の管財人の適性に関する調査)
第三十七条 裁判所は、監督委員に対して、開始前会社の取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人若しくは清算人若しくはこれらの者であった者又は発起人、設立時取締役若しくは設立時監査役であった者のうち裁判所の指定する者が管財人又は管財人代理の職務を行うに適した者であるかどうかについて調査し、かつ、裁判所の定める期間内に当該調査の結果を報告すべきことを命ずることができる。
(準用)
第三十八条 第六十七条第二項、第六十八条、第六十九条第一項、第七十七条、第八十条及び第八十一条第一項から第四項までの規定は、監督委員について準用する。
第五款 更生手続開始前の調査命令等
(更生手続開始前の調査命令)
第三十九条 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった時から当該申立てについての決定があるまでの間においても、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、次に掲げる事項の全部又は一部を対象とする第百二十五条第二項に規定する調査命令を発することができる。
一 第十七条第一項に規定する更生手続開始の原因となる事実及び第四十一条第一項第二号から第四号までに掲げる事由の有無、開始前会社の業務及び財産の状況その他更生手続開始の申立てについての判断をするのに必要な事項並びに更生手続を開始することの当否
二 第二十八条第一項の規定による保全処分、保全管理命令、監督命令、次条若しくは第四十条の規定による保全処分又は第百条第一項に規定する役員等責任査定決定を必要とする事情の有無及びその処分、命令又は決定の要否
三 その他更生事件に関し調査委員による調査又は意見陳述を必要とする事項
(否認権のための保全処分)
第三十九条の二 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった時から当該申立てについての決定があるまでの間において、否認権を保全するため必要があると認めるときは、利害関係人(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより又は職権で、仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
2 前項の規定による保全処分は、担保を立てさせて、又は立てさせないで命ずることができる。
3 裁判所は、申立てにより又は職権で、第一項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
4 第一項の規定による保全処分及び前項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6 第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
(更生手続開始前の役員等の財産に対する保全処分)
第四十条 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった時から当該申立てについての決定があるまでの間においても、緊急の必要があると認めるときは、開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより又は職権で、第九十九条第一項各号に掲げる保全処分をすることができる。
2 第九十九条第二項から第五項までの規定は、前項の規定による保全処分があった場合について準用する。
第三章 更生手続開始の決定及びこれに伴う効果等
第一節 更生手続開始の決定
(更生手続開始の決定)
第四十一条 裁判所は、第十七条の規定による更生手続開始の申立てがあった場合において、同条第一項に規定する更生手続開始の原因となる事実があると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、更生手続開始の決定をする。
一 更生手続の費用の予納がないとき。
二 裁判所に破産手続、再生手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
三 事業の継続を内容とする更生計画案の作成若しくは可決の見込み又は事業の継続を内容とする更生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
四 不当な目的で更生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。
2 前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる。
(更生手続開始の決定と同時に定めるべき事項)
第四十二条 裁判所は、更生手続開始の決定と同時に、一人又は数人の管財人を選任し、かつ、更生債権等の届出をすべき期間及び更生債権等の調査をするための期間を定めなければならない。
2 前項の場合において、知れている更生債権者等の数が千人以上であり、かつ、相当と認めるときは、裁判所は、次条第五項本文において準用する同条第三項第一号及び第四十四条第三項本文の規定による知れている更生債権者等に対する通知をせず、かつ、第百三十八条から第百四十条まで又は第百四十二条の規定により更生債権等の届出をした更生債権者等(以下「届出をした更生債権者等」という。)を関係人集会(更生計画案の決議をするためのものを除く。)の期日に呼び出さない旨の決定をすることができる。
(更生手続開始の公告等)
第四十三条 裁判所は、更生手続開始の決定をしたときは、直ちに、次に掲げる事項を公告しなければならない。ただし、第五号に規定する社債管理者等がないときは、同号に掲げる事項については、公告することを要しない。
一 更生手続開始の決定の主文
二 管財人の氏名又は名称
三 前条第一項の規定により定めた期間
四 財産所持者等(更生会社の財産の所持者及び更生会社に対して債務を負担する者をいう。)は、更生会社にその財産を交付し、又は弁済をしてはならない旨
五 更生会社が発行した社債について社債管理者等(社債管理者又は担保付社債信託法(明治三十八年法律第五十二号)第二条第一項に規定する信託契約の受託会社をいう。)がある場合における当該社債についての更生債権者等の議決権は、第百九十条第一項各号のいずれかに該当する場合(同条第三項の場合を除く。)でなければ行使することができない旨
2 前条第二項の決定があったときは、裁判所は、前項各号に掲げる事項のほか、第五項本文において準用する次項第一号及び次条第三項本文の規定による知れている更生債権者等に対する通知をせず、かつ、届出をした更生債権者等を関係人集会(更生計画案の決議をするためのものを除く。)の期日に呼び出さない旨をも公告しなければならない。
3 次に掲げる者には、前二項の規定により公告すべき事項を通知しなければならない。
一 管財人、更生会社及び知れている更生債権者等
二 知れている株主
三 第一項第四号に規定する財産所持者等であって知れているもの
四 保全管理命令、監督命令又は第三十九条の規定による調査命令があった場合における保全管理人、監督委員又は調査委員
4 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合には、それぞれ当該各号に定める者に対しては、同項の規定による通知をすることを要しない。
一 更生会社がその財産をもって約定劣後更生債権(更生債権者と更生会社との間において、更生手続開始前に、当該会社について破産手続が開始されたとすれば当該破産手続におけるその配当の順位が破産法第九十九条第一項に規定する劣後的破産債権に後れる旨の合意がされた債権をいう。以下同じ。)に優先する債権に係る債務を完済することができない状態にあることが明らかである場合 約定劣後更生債権を有する者であって知れているもの
二 更生会社がその財産をもって債務を完済することができない状態にあることが明らかである場合 知れている株主
5 第一項第二号、第三項第一号から第三号まで及び前項の規定は第一項第二号に掲げる事項に変更を生じた場合について、第一項第三号、第三項第一号及び第二号並びに前項の規定は第一項第三号に掲げる事項に変更を生じた場合(更生債権等の届出をすべき期間に変更を生じた場合に限る。)について準用する。ただし、前条第二項の決定があったときは、知れている更生債権者等に対しては、当該通知をすることを要しない。
(抗告)
第四十四条 更生手続開始の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
2 前章第二節の規定は、更生手続開始の申立てを棄却する決定に対して前項の即時抗告があった場合について準用する。
3 更生手続開始の決定をした裁判所は、第一項の即時抗告があった場合において、当該決定を取り消す決定が確定したときは、直ちにその主文を公告し、かつ、前条第三項各号(第四号を除く。)に掲げる者(同条第四項の規定により通知を受けなかった者を除く。)にその主文を通知しなければならない。ただし、第四十二条第二項の決定があったときは、知れている更生債権者等に対しては、当該通知をすることを要しない。
第二節 更生手続開始の決定に伴う効果
(更生会社の組織に関する基本的事項の変更の禁止)
第四十五条 更生手続開始後その終了までの間においては、更生計画の定めるところによらなければ、更生会社について次に掲げる行為を行うことができない。
一 株式の消却、更生会社の発行する売渡株式等(会社法第百七十九条の二第一項第五号に規定する売渡株式等をいう。以下同じ。)についての株式等売渡請求(同法第百七十九条の三第一項に規定する株式等売渡請求をいう。第百七十四条の三及び第二百十四条の二において同じ。)に係る売渡株式等の取得、株式の併合若しくは分割、株式無償割当て又は募集株式(同法第百九十九条第一項に規定する募集株式をいう。以下同じ。)を引き受ける者の募集
二 募集新株予約権(会社法第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権をいう。以下同じ。)を引き受ける者の募集、新株予約権の消却又は新株予約権無償割当て
三 資本金又は準備金(資本準備金及び利益準備金をいう。以下同じ。)の額の減少
四 剰余金の配当その他の会社法第四百六十一条第一項各号に掲げる行為
五 解散又は株式会社の継続
六 募集社債(会社法第六百七十六条に規定する募集社債をいう。以下同じ。)を引き受ける者の募集
七 持分会社への組織変更又は合併、会社分割、株式交換若しくは株式移転
2 更生手続開始後その終了までの間においては、更生計画の定めるところによるか、又は裁判所の許可を得なければ、更生会社の定款の変更をすることができない。
(事業等の譲渡)
第四十六条 更生手続開始後その終了までの間においては、更生計画の定めるところによらなければ、更生会社に係る会社法第四百六十七条第一項第一号から第二号の二までに掲げる行為(以下この条において「事業等の譲渡」という。)をすることができない。ただし、次項から第八項までの規定により更生会社に係る事業等の譲渡をする場合は、この限りでない。
2 更生手続開始後更生計画案を決議に付する旨の決定がされるまでの間においては、管財人は、裁判所の許可を得て、更生会社に係る事業等の譲渡をすることができる。この場合において、裁判所は、当該事業等の譲渡が当該更生会社の事業の更生のために必要であると認める場合に限り、許可をすることができる。
3 裁判所は、前項の許可をする場合には、次に掲げる者の意見を聴かなければならない。
一 知れている更生債権者(更生会社が更生手続開始の時においてその財産をもって約定劣後更生債権に優先する債権に係る債務を完済することができない状態にある場合における当該約定劣後更生債権を有する者を除く。)ただし、第百十七条第二項に規定する更生債権者委員会があるときは、その意見を聴けば足りる。
二 知れている更生担保権者。ただし、第百十七条第六項に規定する更生担保権者委員会があるときは、その意見を聴けば足りる。
三 労働組合等(更生会社の使用人の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、更生会社の使用人の過半数で組織する労働組合がないときは更生会社の使用人の過半数を代表する者をいう。)
4 管財人は、第二項の規定により更生会社に係る事業等の譲渡をしようとする場合には、あらかじめ、次に掲げる事項を公告し、又は株主に通知しなければならない。
一 当該事業等の譲渡の相手方、時期及び対価並びに当該事業等の譲渡の対象となる事業(会社法第四百六十七条第一項第二号の二に掲げる行為をする場合にあっては、同号の子会社の事業)の内容
二 当該事業等の譲渡に反対の意思を有する株主は、当該公告又は当該通知があった日から二週間以内にその旨を書面をもって管財人に通知すべき旨
5 前項の規定による株主に対する通知は、株主名簿に記載され、若しくは記録された住所又は株主が更生会社若しくは管財人に通知した場所若しくは連絡先にあてて、することができる。
6 第四項の規定による株主に対する通知は、その通知が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。
7 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、第二項の許可をすることができない。
一 第四項の規定による公告又は通知があった日から一月を経過した後に第二項の許可の申立てがあったとき。
二 第四項第二号に規定する期間内に、更生会社の総株主の議決権の三分の一を超える議決権を有する株主が、書面をもって管財人に第二項の規定による事業等の譲渡に反対の意思を有する旨の通知をしたとき。
8 第四項から前項までの規定は、第二項の規定による事業等の譲渡に係る契約の相手方が更生会社の特別支配会社(会社法第四百六十八条第一項に規定する特別支配会社をいう。)である場合又は第二項の許可の時において更生会社がその財産をもって債務を完済することができない状態にある場合には、適用しない。
9 第二項の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
10 第二項の許可を得て更生会社に係る事業等の譲渡をする場合には、会社法第二編第七章の規定は、適用しない。
(更生債権等の弁済の禁止)
第四十七条 更生債権等については、更生手続開始後は、この法律に特別の定めがある場合を除き、更生計画の定めるところによらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。
2 更生会社を主要な取引先とする中小企業者が、その有する更生債権等の弁済を受けなければ、事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるときは、裁判所は、更生計画認可の決定をする前でも、管財人の申立てにより又は職権で、その全部又は一部の弁済をすることを許可することができる。
3 裁判所は、前項の規定による許可をする場合には、更生会社と同項の中小企業者との取引の状況、更生会社の資産状態、利害関係人の利害その他一切の事情を考慮しなければならない。
4 管財人は、更生債権者等から第二項の申立てをすべきことを求められたときは、直ちにその旨を裁判所に報告しなければならない。この場合において、その申立てをしないこととしたときは、遅滞なく、その事情を裁判所に報告しなければならない。
5 少額の更生債権等を早期に弁済することにより更生手続を円滑に進行することができるとき、又は少額の更生債権等を早期に弁済しなければ更生会社の事業の継続に著しい支障を来すときは、裁判所は、更生計画認可の決定をする前でも、管財人の申立てにより、その弁済をすることを許可することができる。
6 第二項から前項までの規定は、約定劣後更生債権である更生債権については、適用しない。
7 第一項の規定は、次に掲げる事由により、更生債権等である租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)が消滅する場合には、適用しない。
一 第二十四条第二項に規定する国税滞納処分(当該国税滞納処分又はその続行が許される場合に限る。)
二 第二十四条第二項に規定する国税滞納処分による差押えを受けた更生会社の債権(差押えの効力の及ぶ債権を含む。)の第三債務者が当該国税滞納処分の中止中に徴収の権限を有する者に対して任意にした給付
三 徴収の権限を有する者による還付金又は過誤納金の充当
四 管財人が裁判所の許可を得てした弁済
(管財人による相殺)
第四十七条の二 管財人は、更生会社財産に属する債権をもって更生債権等と相殺することが更生債権者等の一般の利益に適合するときは、裁判所の許可を得て、その相殺をすることができる。
(相殺権)
第四十八条 更生債権者等が更生手続開始当時更生会社に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第百三十八条第一項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するようになったときは、更生債権者等は、当該債権届出期間内に限り、更生計画の定めるところによらないで、相殺をすることができる。債務が期限付であるときも、同様とする。
2 更生債権者等が更生手続開始当時更生会社に対して負担する債務が賃料債務である場合には、更生債権者等は、更生手続開始後にその弁済期が到来すべき賃料債務(前項の債権届出期間の満了後にその弁済期が到来すべきものを含む。次項において同じ。)については、更生手続開始の時における賃料の六月分に相当する額を限度として、前項の債権届出期間内に限り、更生計画の定めるところによらないで、相殺をすることができる。
3 前項に規定する場合において、更生債権者等が、更生手続開始後にその弁済期が到来すべき賃料債務について、更生手続開始後その弁済期に弁済をしたときは、更生債権者等が有する敷金の返還請求権は、更生手続開始の時における賃料の六月分に相当する額(同項の規定により相殺をする場合には、相殺により免れる賃料債務の額を控除した額)の範囲内におけるその弁済額を限度として、共益債権とする。
4 前二項の規定は、地代又は小作料の支払を目的とする債務について準用する。
(相殺の禁止)
第四十九条 更生債権者等は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
一 更生手続開始後に更生会社に対して債務を負担したとき。
二 支払不能(更生会社が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。以下同じ。)になった後に契約によって負担する債務を専ら更生債権等をもってする相殺に供する目的で更生会社の財産の処分を内容とする契約を更生会社との間で締結し、又は更生会社に対して債務を負担する者の債務を引き受けることを内容とする契約を締結することにより更生会社に対して債務を負担した場合であって、当該契約の締結の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
三 支払の停止があった後に更生会社に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。
四 更生手続開始、破産手続開始、再生手続開始又は特別清算開始の申立て(以下この条及び次条において「更生手続開始の申立て等」という。)があった後に更生会社に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、更生手続開始の申立て等があったことを知っていたとき。
2 前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する債務の負担が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。
一 法定の原因
二 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは更生手続開始の申立て等があったことを更生債権者等が知った時より前に生じた原因
三 更生手続開始の申立て等があった時より一年以上前に生じた原因
第四十九条の二 更生会社に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
一 更生手続開始後に他人の更生債権等を取得したとき。
二 支払不能になった後に更生債権等を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
三 支払の停止があった後に更生債権等を取得した場合であって、その取得の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。
四 更生手続開始の申立て等があった後に更生債権等を取得した場合であって、その取得の当時、更生手続開始の申立て等があったことを知っていたとき。
2 前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する更生債権等の取得が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。
一 法定の原因
二 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは更生手続開始の申立て等があったことを更生会社に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因
三 更生手続開始の申立て等があった時より一年以上前に生じた原因
四 更生会社に対して債務を負担する者と更生会社との間の契約
(他の手続の中止等)
第五十条 更生手続開始の決定があったときは、破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始若しくは特別清算開始の申立て、更生会社の財産に対する第二十四条第一項第二号に規定する強制執行等、企業担保権の実行若しくは同項第六号に規定する外国租税滞納処分又は更生債権等に基づく財産開示手続の申立てはすることができず、破産手続、再生手続、更生会社の財産に対して既にされている同項第二号に規定する強制執行等の手続、企業担保権の実行手続及び同項第六号に規定する外国租税滞納処分並びに更生債権等に基づく財産開示手続は中止し、特別清算手続はその効力を失う。
2 更生手続開始の決定があったときは、当該決定の日から一年間(一年経過前に更生計画が認可されることなく更生手続が終了し、又は更生計画が認可されたときは、当該終了又は当該認可の時までの間)は、更生会社の財産に対する第二十四条第二項に規定する国税滞納処分はすることができず、更生会社の財産に対して既にされている同項に規定する国税滞納処分は中止する。
3 裁判所は、必要があると認めるときは、管財人の申立てにより又は職権で、前項の一年の期間を伸長することができる。ただし、裁判所は、あらかじめ、徴収の権限を有する者の同意を得なければならない。
4 徴収の権限を有する者は、前項の同意をすることができる。
5 裁判所は、更生に支障を来さないと認めるときは、管財人若しくは租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)につき徴収の権限を有する者の申立てにより又は職権で、次に掲げる手続又は処分の続行を命ずることができる。
一 第一項の規定により中止した第二十四条第一項第二号に規定する強制執行等の手続、企業担保権の実行手続又は同項第六号に規定する外国租税滞納処分
二 第二項の規定により中止した第二十四条第二項に規定する国税滞納処分
6 裁判所は、更生のため必要があると認めるときは、管財人の申立てにより又は職権で、担保を立てさせて、又は立てさせないで、前項各号に掲げる手続又は処分の取消しを命ずることができる。
7 裁判所は、更生計画案を決議に付する旨の決定があるまでの間において、更生担保権に係る担保権の目的である財産で、更生会社の事業の更生のために必要でないことが明らかなものがあるときは、管財人の申立てにより又は職権で、当該財産について第一項の規定による担保権の実行の禁止を解除する旨の決定をすることができる。
8 管財人は、更生担保権者から前項の申立てをすべきことを求められたときは、直ちにその旨を裁判所に報告しなければならない。この場合において、その申立てをしないこととしたときは、遅滞なく、その事情を裁判所に報告しなければならない。
9 更生手続開始の決定があったときは、次に掲げる請求権は、共益債権とする。
一 第一項の規定により中止した破産手続における財団債権(破産法第百四十八条第一項第三号に掲げる請求権を除き、破産手続が開始されなかった場合における同法第五十五条第二項及び第百四十八条第四項に規定する請求権を含む。)又は再生手続における共益債権(再生手続が開始されなかった場合における民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第五十条第二項並びに第百二十条第三項及び第四項に規定する請求権を含む。)
二 第一項の規定により効力を失った手続のために更生会社に対して生じた債権及びその手続に関する更生会社に対する費用請求権
三 第五項の規定により続行された手続又は処分に関する更生会社に対する費用請求権
四 第七項の解除の決定により申立てが可能となった担保権の実行手続に関する更生会社に対する費用請求権
10 第二十四条第二項に規定する国税滞納処分により徴収すべき徴収金の請求権の時効は、第二項及び第三項の規定により当該国税滞納処分をすることができず、又は当該国税滞納処分が中止している期間は、進行しない。
11 更生手続開始の決定があったときは、更生手続が終了するまでの間(更生計画認可の決定があったときは、第二百四条第二項に規定する更生計画で定められた弁済期間が満了する時(その期間の満了前に更生計画に基づく弁済が完了した場合にあっては、弁済が完了した時)までの間)は、罰金、科料及び追徴の時効は、進行しない。ただし、当該罰金、科料又は追徴に係る請求権が共益債権である場合は、この限りでない。
(続行された強制執行等における配当等に充てるべき金銭の取扱い)
第五十一条 前条第五項の規定により続行された手続又は処分及び同条第七項の解除の決定により申立てが可能となった担保権の実行手続においては、配当又は弁済金の交付(以下この条において「配当等」という。)を実施することができない。ただし、前条第五項第二号の規定により続行された処分における租税等の請求権に対する配当等については、この限りでない。
2 前項本文に規定する手続(更生債権等を被担保債権とする留置権であって、商法又は会社法の規定以外の規定によるものによる競売の手続を除く。次項において同じ。)又は処分においては、配当等に充てるべき金銭が生じたとき(その時点において更生計画認可の決定がない場合は、当該決定があったとき)は、管財人(第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復した場合又は更生手続終了後は、更生会社)に対して、当該金銭に相当する額(前項ただし書の規定により配当等が実施されたときは、当該配当等の額を控除した額)の金銭を交付しなければならない。
3 更生計画認可の決定前に更生手続が終了したときは、第一項本文の規定にかかわらず、同項本文に規定する手続又は処分においては、その手続又は処分の性質に反しない限り、配当等に充てるべき金銭(同項ただし書の規定により配当等が実施されたものを除く。)について、配当等を実施しなければならない。
(更生会社の財産関係の訴えの取扱い)
第五十二条 更生手続開始の決定があったときは、更生会社の財産関係の訴訟手続は、中断する。
2 管財人は、前項の規定により中断した訴訟手続のうち更生債権等に関しないものを受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
3 前項の場合においては、相手方の更生会社に対する訴訟費用請求権は、共益債権とする。
4 更生手続が終了したときは、管財人を当事者とする更生会社の財産関係の訴訟手続は、中断する。
5 更生会社であった株式会社は、前項の規定により中断した訴訟手続(第二百三十四条第三号又は第四号に掲げる事由が生じた場合における第九十七条第一項の訴えに係る訴訟手続を除く。)を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
6 第一項の規定により中断した訴訟手続について第二項の規定による受継があるまでに更生手続が終了したときは、更生会社であった株式会社は、当然訴訟手続を受継する。
(債権者代位訴訟、詐害行為取消訴訟等の取扱い)
第五十二条の二 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十三条若しくは第四百二十四条の規定により更生債権者の提起した訴訟又は破産法若しくは民事再生法の規定による否認の訴訟若しくは否認の請求を認容する決定に対する異議の訴訟が更生手続開始当時係属するときは、その訴訟手続は、中断する。
2 管財人は、前項の規定により中断した訴訟手続を受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
3 前項の場合においては、相手方の更生債権者、破産管財人又は再生手続における管財人若しくは否認権限を有する監督委員(民事再生法第百二十八条第二項に規定する否認権限を有する監督委員をいう。第五項において同じ。)に対する訴訟費用請求権は、共益債権とする。
4 第一項の規定により中断した訴訟手続について第二項の規定による受継があった後に更生手続が終了したときは、当該訴訟手続は中断する。
5 前項の場合には、更生債権者、破産管財人又は再生手続における管財人若しくは否認権限を有する監督委員において当該訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
6 第一項の規定により中断した訴訟手続について第二項の規定による受継があるまでに更生手続が終了したときは、前項前段に規定する者は、当該訴訟手続を当然受継する。
(行政庁に係属する事件の取扱い)
第五十三条 第五十二条の規定は、更生会社の財産関係の事件で行政庁に係属するものについて準用する。
(更生会社のした法律行為の効力)
第五十四条 更生会社が更生手続開始後に更生会社財産に関してした法律行為は、更生手続の関係においては、その効力を主張することができない。
2 株式会社が当該株式会社についての更生手続開始の決定があった日にした法律行為は、更生手続開始後にしたものと推定する
(管財人等の行為によらない更生債権者等の権利取得の効力)
第五十五条 更生債権者等は、更生手続開始後、更生債権等につき更生会社財産に関して管財人又は更生会社の行為によらないで権利を取得しても、更生手続の関係においては、その効力を主張することができない。
2 前条第二項の規定は、更生手続開始の決定があった日における前項の権利の取得について準用する。
(登記及び登録の効力)
第五十六条 不動産又は船舶に関し更生手続開始前に生じた登記原因に基づき更生手続開始後にされた登記又は不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第百五条第一号の規定による仮登記は、更生手続の関係においては、その効力を主張することができない。ただし、登記権利者が更生手続開始の事実を知らないでした登記又は仮登記については、この限りでない。
2 前項の規定は、権利の設定、移転若しくは変更に関する登録若しくは仮登録又は企業担保権の設定、移転若しくは変更に関する登記について準用する。
(更生会社に対する弁済の効力)
第五十七条 更生手続開始後に、その事実を知らないで更生会社にした弁済は、更生手続の関係においても、その効力を主張することができる。
2 更生手続開始後に、その事実を知って更生会社にした弁済は、更生会社財産が受けた利益の限度においてのみ、更生手続の関係において、その効力を主張することができる。
(為替手形の引受け又は支払等)
第五十八条 為替手形の振出人又は裏書人である株式会社について更生手続が開始された場合において、支払人又は予備支払人がその事実を知らないで引受け又は支払をしたときは、その支払人又は予備支払人は、これによって生じた債権につき、更生債権者としてその権利を行うことができる。
2 前項の規定は、小切手及び金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする有価証券について準用する。
(善意又は悪意の推定)
第五十九条 前三条の規定の適用については、第四十三条第一項の規定による公告の前においてはその事実を知らなかったものと推定し、当該公告の後においてはその事実を知っていたものと推定する。
(共有関係)
第六十条 更生会社が他人と共同して財産権を有する場合において、更生手続が開始されたときは、管財人は、共有者の間で分割をしない定めがあるときでも、分割の請求をすることができる。
2 前項の場合には、他の共有者は、相当の償金を支払って更生会社の持分を取得することができる。
(双務契約)
第六十一条 双務契約について更生会社及びその相手方が更生手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、管財人は、契約の解除をし、又は更生会社の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
2 前項の場合には、相手方は、管財人に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか、又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、管財人がその期間内に確答をしないときは、同項の規定による解除権を放棄したものとみなす。
3 前二項の規定は、労働協約には、適用しない。
4 第一項の規定により更生会社の債務の履行をする場合において、相手方が有する請求権は、共益債権とする。
5 破産法第五十四条の規定は、第一項の規定による契約の解除があった場合について準用する。この場合において、同条第一項中「破産債権者」とあるのは「更生債権者」と、同条第二項中「破産者」とあるのは「更生会社」と、「破産財団」とあるのは「更生会社財産」と、「財団債権者」とあるのは「共益債権者」と読み替えるものとする。
(継続的給付を目的とする双務契約)
第六十二条 更生会社に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、更生手続開始の申立て前の給付に係る更生債権等について弁済がないことを理由としては、更生手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。
2 前項の双務契約の相手方が更生手続開始の申立て後更生手続開始前にした給付に係る請求権(一定期間ごとに債権額を算定すべき継続的給付については、申立ての日の属する期間内の給付に係る請求権を含む。)は、共益債権とする。
3 前二項の規定は、労働契約には、適用しない。
(双務契約についての破産法の準用)
第六十三条 破産法第五十六条、第五十八条及び第五十九条の規定は、更生手続が開始された場合について準用する。この場合において、同法第五十六条第一項中「第五十三条第一項及び第二項」とあるのは「会社更生法第六十一条第一項及び第二項」と、「破産者」とあるのは「更生会社」と、同条第二項中「財団債権」とあるのは「共益債権」と、同法第五十八条第一項中「破産手続開始」とあるのは「更生手続開始」と、同条第三項において準用する同法第五十四条第一項中「破産債権者」とあるのは「更生債権者」と、同法第五十九条第一項中「破産手続」とあるのは「更生手続」と、同条第二項中「請求権は、破産者が有するときは破産財団に属し」とあるのは「請求権は」と、「破産債権」とあるのは「更生債権」と読み替えるものとする。
(取戻権)
第六十四条 更生手続の開始は、更生会社に属しない財産を更生会社から取り戻す権利に影響を及ぼさない。
2 破産法第六十三条及び第六十四条の規定は、更生手続が開始された場合について準用する。この場合において、同法第六十三条第一項中「破産手続開始の決定」とあるのは「更生手続開始の決定」と、同項ただし書及び同法第六十四条中「破産管財人」とあるのは「管財人」と、同法第六十三条第二項中「第五十三条第一項及び第二項」とあるのは「会社更生法第六十一条第一項及び第二項」と、同条第三項中「第一項」とあるのは「前二項」と、「同項」とあるのは「第一項」と、同法第六十四条第一項中「破産者」とあるのは「株式会社」と、「破産手続開始」とあるのは「更生手続開始」と読み替えるものとする。
(取締役等の競業の制限)
第六十五条 更生会社の取締役、執行役又は清算人は、更生手続開始後その終了までの間において自己又は第三者のために更生会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、会社法第三百五十六条第一項(同法第四百十九条第二項又は第四百八十二条第四項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、管財人に対し、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。ただし、第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復している期間中は、この限りでない。
2 前項本文の取引をした取締役、執行役又は清算人は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を管財人に報告しなければならない。
3 更生会社の取締役、執行役又は清算人が第一項本文の規定に違反して同項本文の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役、清算人又は第三者が得た利益の額は、更生会社に生じた損害の額と推定する。
(取締役等の報酬等)
第六十六条 更生会社の取締役、会計参与、監査役、執行役及び清算人は、更生会社に対して、更生手続開始後その終了までの間の報酬等(会社法第三百六十一条第一項に規定する報酬等をいう。次項において同じ。)を請求することができない。ただし、第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復している期間中は、この限りでない。
2 前項ただし書の場合における取締役、会計参与、監査役、執行役及び清算人が受ける個人別の報酬等の内容は、会社法第三百六十一条第一項(同法第四百八十二条第四項において準用する場合を含む。)及び第三項、第三百七十九条第一項及び第二項、第三百八十七条第一項及び第二項並びに第四百四条第三項の規定にかかわらず、管財人が、裁判所の許可を得て定める。
第三節 管財人
第一款 管財人の選任及び監督
(管財人の選任)
第六十七条 管財人は、裁判所が選任する。
2 法人は、管財人となることができる。
3 裁判所は、第百条第一項に規定する役員等責任査定決定を受けるおそれがあると認められる者は、管財人に選任することができない。
(管財人に対する監督等)
第六十八条 管財人は、裁判所が監督する。
2 裁判所は、管財人が更生会社の業務及び財産の管理を適切に行っていないとき、その他重要な事由があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、管財人を解任することができる。この場合においては、その管財人を審尋しなければならない。
(数人の管財人の職務執行)
第六十九条 管財人が数人あるときは、共同してその職務を行う。ただし、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができる。
2 管財人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
(管財人代理)
第七十条 管財人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で一人又は数人の管財人代理を選任することができる。ただし、第六十七条第三項に規定する者は、管財人代理に選任することができない。
2 前項の管財人代理の選任については、裁判所の許可を得なければならない。
(法律顧問)
第七十一条 管財人は、更生手続において生ずる法律問題(法律事件に関するものを除く。)について自己を助言する者(以下「法律顧問」という。)を選任するには、裁判所の許可を得なければならない。
第二款 管財人の権限等
(管財人の権限)
第七十二条 更生手続開始の決定があった場合には、更生会社の事業の経営並びに財産(日本国内にあるかどうかを問わない。第四項において同じ。)の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した管財人に専属する。
2 裁判所は、更生手続開始後において、必要があると認めるときは、管財人が次に掲げる行為をするには裁判所の許可を得なければならないものとすることができる。
一 財産の処分
二 財産の譲受け
三 借財
四 第六十一条第一項の規定による契約の解除
五 訴えの提起
六 和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)
七 権利の放棄
八 共益債権又は第六十四条第一項に規定する権利の承認
九 更生担保権に係る担保の変換
十 その他裁判所の指定する行為
3 前項の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
4 前三項の規定については、更生計画の定め又は裁判所の決定で、更生計画認可の決定後の更生会社に対しては適用しないこととすることができる。この場合においては、管財人は、更生会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分を監督する。
5 裁判所は、更生計画に前項前段の規定による定めがない場合において必要があると認めるときは、管財人の申立てにより又は職権で、同項前段の規定による決定をする。
6 裁判所は、管財人の申立てにより又は職権で、前項の規定による決定を取り消すことができる。
7 前二項の規定による決定があったときは、その旨を公告し、かつ、その裁判書を管財人及び更生会社に送達しなければならない。この場合においては、第十条第四項の規定は、適用しない。
(更生会社の業務及び財産の管理)
第七十三条 管財人は、就職の後直ちに更生会社の業務及び財産の管理に着手しなければならない。
(当事者適格等)
第七十四条 更生会社の財産関係の訴えについては、管財人を原告又は被告とする。
2 前項の規定は、第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復している期間中に新たに提起された更生会社の財産関係の訴えについては、適用しない。
3 第五十二条第一項、第二項及び第六項の規定は、第七十二条第四項前段の規定による更生計画の定め又は裁判所の決定が取り消された場合における前項の訴えについて準用する。
(郵便物等の管理)
第七十五条 裁判所は、管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、更生会社にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(以下「郵便物等」という。)を管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。
2 裁判所は、更生会社の申立てにより又は職権で、管財人の意見を聴いて、前項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。
3 更生手続が終了したときは、裁判所は、第一項に規定する嘱託を取り消さなければならない。第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復したときも、同様とする。
4 第一項又は第二項の規定による決定及び同項の申立てを却下する裁判に対しては、更生会社又は管財人は、即時抗告をすることができる。
5 第一項の規定による決定に対する前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
第七十六条 管財人は、更生会社にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
2 更生会社は、管財人に対し、管財人が受け取った前項の郵便物等の閲覧又は当該郵便物等で更生会社財産に関しないものの交付を求めることができる。
(更生会社及び子会社に対する調査)
第七十七条 管財人は、更生会社の取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人、清算人及び使用人その他の従業者並びにこれらの者であった者並びに発起人、設立時取締役及び設立時監査役であった者に対して更生会社の業務及び財産の状況につき報告を求め、又は更生会社の帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
2 管財人は、その職務を行うため必要があるときは、更生会社の子会社(会社法第二条第三号に規定する子会社をいう。)に対してその業務及び財産の状況につき報告を求め、又はその帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
(管財人の自己取引)
第七十八条 管財人は、裁判所の許可を得なければ、更生会社の財産を譲り受け、更生会社に対して自己の財産を譲り渡し、その他自己又は第三者のために更生会社と取引をすることができない。
2 前項の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
(管財人の競業の制限)
第七十九条 管財人は、自己又は第三者のために更生会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、裁判所に対し、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
2 前項の取引をした管財人は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を裁判所に報告しなければならない。
3 管財人が第一項の規定に違反して同項の取引をしたときは、当該取引によって管財人又は第三者が得た利益の額は、更生会社に生じた損害の額と推定する。
(管財人の注意義務)
第八十条 管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。
2 管財人が前項の注意を怠ったときは、その管財人は、利害関係人に対し、連帯して損害を賠償する義務を負う。
(管財人の情報提供努力義務)
第八十条の二 管財人は、更生債権等である給料の請求権又は退職手当の請求権を有する者に対し、更生手続に参加するのに必要な情報を提供するよう努めなければならない。
(管財人の報酬等)
第八十一条 管財人は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる。
2 管財人は、その選任後、更生会社若しくは更生計画の定めにより設立された会社に対する債権又は更生会社若しくは当該会社の株式若しくは持分を譲り受け、又は譲り渡すには、裁判所の許可を得なければならない。
3 管財人は、前項の許可を得ないで同項に規定する行為をしたときは、費用及び報酬の支払を受けることができない。
4 第一項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前各項の規定は、管財人代理及び法律顧問について準用する。
(任務終了の場合の報告義務等)
第八十二条 管財人の任務が終了した場合には、管財人は、遅滞なく、裁判所に計算の報告をしなければならない。
2 前項の場合において、管財人が欠けたときは、同項の計算の報告は、同項の規定にかかわらず、後任の管財人がしなければならない。
3 管財人の任務が終了した場合において、急迫の事情があるときは、管財人又はその承継人は、後任の管財人又は更生会社が財産を管理することができるに至るまで必要な処分をしなければならない。
4 第二百三十四条第二号から第四号までに掲げる事由のいずれかが生じた場合には、第二百五十四条第六項又は第二百五十七条に規定する場合を除き、管財人は、共益債権を弁済しなければならない。ただし、その存否又は額について争いのある共益債権については、その債権を有する者のために供託をしなければならない。
第三款 更生会社の財産状況の調査
(財産の価額の評定等)
第八十三条 管財人は、更生手続開始後遅滞なく、更生会社に属する一切の財産につき、その価額を評定しなければならない。
2 前項の規定による評定は、更生手続開始の時における時価によるものとする。
3 管財人は、第一項の規定による評定を完了したときは、直ちに更生手続開始の時における貸借対照表及び財産目録を作成し、これらを裁判所に提出しなければならない。
4 更生計画認可の決定があったときは、管財人は、更生計画認可の決定の時における貸借対照表及び財産目録を作成し、これらを裁判所に提出しなければならない。
5 前項の貸借対照表及び財産目録に記載し、又は記録すべき財産の評価については、法務省令の定めるところによる。
(裁判所への報告)
第八十四条 管財人は、更生手続開始後遅滞なく、次に掲げる事項を記載した報告書を、裁判所に提出しなければならない。
一 更生手続開始に至った事情
二 更生会社の業務及び財産に関する経過及び現状
三 第九十九条第一項の規定による保全処分又は第百条第一項に規定する役員等責任査定決定を必要とする事情の有無
四 その他更生手続に関し必要な事項
2 管財人は、前項の規定によるもののほか、裁判所の定めるところにより、更生会社の業務及び財産の管理状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならない。
(財産状況報告集会への報告)
第八十五条 更生会社の財産状況を報告するために招集された関係人集会においては、管財人は、前条第一項各号に掲げる事項の要旨を報告しなければならない。
2 前項の関係人集会においては、裁判所は、管財人、更生会社、届出をした更生債権者等又は株主から、管財人の選任並びに更生会社の業務及び財産の管理に関する事項につき、意見を聴かなければならない。
3 第一項の関係人集会においては、第四十六条第三項第三号に規定する労働組合等は、前項に規定する事項について意見を述べることができる。
4 裁判所は、第一項の関係人集会を招集しないこととしたときは、前二項に規定する者(管財人を除く。)に対し、管財人の選任について裁判所の定める期間内に書面により意見を述べることができる旨を通知しなければならない。
第四節 否認権
(更生債権者等を害する行為の否認)
第八十六条 次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)は、更生手続開始後、更生会社財産のために否認することができる。
一 更生会社が更生債権者等を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、更生債権者等を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
二 更生会社が支払の停止又は更生手続開始、破産手続開始、再生手続開始若しくは特別清算開始の申立て(以下この節において「支払の停止等」という。)があった後にした更生債権者等を害する行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び更生債権者等を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 更生会社がした債務の消滅に関する行為であって、債権者の受けた給付の価額が当該行為によって消滅した債務の額より過大であるものは、前項各号に掲げる要件のいずれかに該当するときは、更生手続開始後、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分に限り、更生会社財産のために否認することができる。
3 更生会社が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、更生手続開始後、更生会社財産のために否認することができる。
(相当の対価を得てした財産の処分行為の否認)
第八十六条の二 更生会社が、その有する財産を処分する行為をした場合において、その行為の相手方から相当の対価を取得しているときは、その行為は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、更生手続開始後、更生会社財産のために否認することができる。
一 当該行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、更生会社において隠匿、無償の供与その他の更生債権者等を害する処分(以下この条並びに第九十一条の二第二項及び第三項において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
二 更生会社が、当該行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
三 相手方が、当該行為の当時、更生会社が前号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。
2 前項の規定の適用については、当該行為の相手方が次に掲げる者のいずれかであるときは、その相手方は、当該行為の当時、更生会社が同項第二号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
一 更生会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員を含む。)、監査役、執行役、会計監査人(会計監査人が法人であるときは、その職務を行うべき社員を含む。)又は清算人
二 更生会社の総株主の議決権の過半数を有する者
三 更生会社の総株主の議決権の過半数を子株式会社(法人が株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合における当該株式会社をいう。以下この号において同じ。)又は親法人(子株式会社である株式会社の総株主の議決権の過半数を有する法人をいう。)及び子株式会社が有する場合における当該親法人
(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)
第八十六条の三 次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、更生手続開始後、更生会社財産のために否認することができる。
一 更生会社が支払不能になった後又は更生手続開始、破産手続開始、再生手続開始若しくは特別清算開始の申立て(以下この節において「更生手続開始の申立て等」という。)があった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
ロ 当該行為が更生手続開始の申立て等があった後にされたものである場合 更生手続開始の申立て等があったこと。
二 更生会社の義務に属せず、又はその時期が更生会社の義務に属しない行為であって、支払不能になる前三十日以内にされたもの。ただし、債権者がその行為の当時他の更生債権者等を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項第一号の規定の適用については、次に掲げる場合には、債権者は、同号に掲げる行為の当時、同号イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実(同号イに掲げる場合にあっては、支払不能であったこと及び支払の停止があったこと)を知っていたものと推定する。
一 債権者が前条第二項各号に掲げる者のいずれかである場合
二 前項第一号に掲げる行為が更生会社の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が更生会社の義務に属しないものである場合
3 第一項各号の規定の適用については、支払の停止(更生手続開始の申立て等の前一年以内のものに限る。)があった後は、支払不能であったものと推定する。
(手形債務支払の場合等の例外)
第八十七条 前条第一項第一号の規定は、更生会社から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ手形上の債務者の一人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しない。
2 前項の場合において、最終の償還義務者又は手形の振出しを委託した者が振出しの当時支払の停止等があったことを知り、又は過失によって知らなかったときは、管財人は、これらの者に更生会社が支払った金額を償還させることができる。
3 前条第一項の規定は、更生会社が租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)又は第百四十二条第二号に規定する更生手続開始前の罰金等の請求権につき、その徴収の権限を有する者に対してした担保の供与又は債務の消滅に関する行為には、適用しない。
(権利変動の対抗要件の否認)
第八十八条 支払の停止等があった後権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む。)をした場合において、その行為が権利の設定、移転又は変更があった日から十五日を経過した後悪意でしたものであるときは、これを否認することができる。ただし、当該仮登記又は当該仮登録以外の仮登記又は仮登録があった後にこれらに基づいてされた本登記又は本登録については、この限りでない。
2 前項の規定は、権利取得の効力を生ずる登録について準用する。
(執行行為の否認)
第八十九条 否認権は、否認しようとする行為について執行力のある債務名義があるとき、又はその行為が執行行為に基づくものであるときでも、行うことを妨げない。
(支払の停止を要件とする否認の制限)
第九十条 更生手続開始の申立て等の日から一年以上前にした行為(第八十六条第三項に規定する行為を除く。)は、支払の停止があった後にされたものであること又は支払の停止の事実を知っていたことを理由として否認することができない。
(否認権行使の効果)
第九十一条 否認権の行使は、更生会社財産を原状に復させる。
2 第八十六条第三項に規定する行為が否認された場合において、相手方は、当該行為の当時、支払の停止等があったこと及び更生債権者等を害する事実を知らなかったときは、その現に受けている利益を償還すれば足りる。
(更生会社の受けた反対給付に関する相手方の権利等)
第九十一条の二 第八十六条第一項若しくは第三項又は第八十六条の二第一項に規定する行為が否認されたときは、相手方は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
一 更生会社の受けた反対給付が更生会社財産中に現存する場合 当該反対給付の返還を請求する権利
二 更生会社の受けた反対給付が更生会社財産中に現存しない場合 共益債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
2 前項第二号の規定にかかわらず、同号に掲げる場合において、当該行為の当時、更生会社が対価として取得した財産について隠匿等の処分をする意思を有し、かつ、相手方が更生会社がその意思を有していたことを知っていたときは、相手方は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
一 更生会社の受けた反対給付によって生じた利益の全部が更生会社財産中に現存する場合 共益債権者としてその現存利益の返還を請求する権利
二 更生会社の受けた反対給付によって生じた利益が更生会社財産中に現存しない場合 更生債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
三 更生会社の受けた反対給付によって生じた利益の一部が更生会社財産中に現存する場合 共益債権者としてその現存利益の返還を請求する権利及び更生債権者として反対給付と現存利益との差額の償還を請求する権利
3 前項の規定の適用については、当該行為の相手方が第八十六条の二第二項各号に掲げる者のいずれかであるときは、その相手方は、当該行為の当時、更生会社が前項の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたものと推定する。
4 管財人は、第八十六条第一項若しくは第三項又は第八十六条の二第一項に規定する行為を否認しようとするときは、前条第一項の規定により更生会社財産に復すべき財産の返還に代えて、相手方に対し、当該財産の価額から前三項の規定により共益債権となる額(第一項第一号に掲げる場合にあっては、更生会社の受けた反対給付の価額)を控除した額の償還を請求することができる。
(相手方の債権の回復)
第九十二条 第八十六条の三第一項に規定する行為が否認された場合において、相手方がその受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、相手方の債権は、これによって原状に復する。
(転得者に対する否認権)
第九十三条 次に掲げる場合には、否認権は、転得者に対しても、行使することができる。
一 転得者が転得の当時、それぞれその前者に対する否認の原因のあることを知っていたとき。
二 転得者が第八十六条の二第二項各号に掲げる者のいずれかであるとき。ただし、転得の当時、それぞれその前者に対する否認の原因のあることを知らなかったときは、この限りでない。
三 転得者が無償行為又はこれと同視すべき有償行為によって転得した場合において、それぞれその前者に対して否認の原因があるとき。
2 第九十一条第二項の規定は、前項第三号の規定により否認権の行使があった場合について準用する。
(保全処分に係る手続の続行と担保の取扱い)
第九十四条 第三十九条の二第一項(第四十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定による保全処分が命じられた場合において、更生手続開始の決定があったときは、管財人は、当該保全処分に係る手続を続行することができる。
2 管財人が更生手続開始の決定後一月以内に前項の規定により同項の保全処分に係る手続を続行しないときは、当該保全処分は、その効力を失う。
3 管財人は、第一項の規定により同項の保全処分に係る手続を続行しようとする場合において、第三十九条の二第二項(第四十四条第二項において準用する場合を含む。)に規定する担保の全部又は一部が更生会社財産に属する財産でないときは、その担保の全部又は一部を更生会社財産に属する財産による担保に変換しなければならない。
4 民事保全法(平成元年法律第九十一号)第十八条並びに第二章第四節(第三十七条第五項から第七項までを除く。)及び第五節の規定は、第一項の規定により管財人が続行する手続に係る保全処分について準用する。
(否認権の行使)
第九十五条 否認権は、訴え、否認の請求又は抗弁によって、管財人が行う。
2 前項の訴え及び否認の請求事件は、更生裁判所が管轄する。
(否認の請求及びこれについての決定)
第九十六条 否認の請求をするときは、その原因となる事実を疎明しなければならない。
2 否認の請求を認容し、又はこれを棄却する裁判は、理由を付した決定でしなければならない。
3 裁判所は、前項の決定をする場合には、相手方又は転得者を審尋しなければならない。
4 否認の請求を認容する決定があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
5 否認の請求の手続は、更生手続が終了したときは、終了する。
(否認の請求を認容する決定に対する異議の訴え)
第九十七条 否認の請求を認容する決定に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。
2 前項の訴えは、更生裁判所が管轄する。
3 第一項の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、否認の請求を認容する決定を認可し、変更し、又は取り消す。
4 否認の請求を認容する決定の全部又は一部を認可する判決が確定したときは、当該決定(当該判決において認可された部分に限る。)は、確定判決と同一の効力を有する。第一項の訴えが、同項に規定する期間内に提起されなかったとき、取り下げられたとき、又は却下されたときにおける否認の請求を認容する決定についても、同様とする。
5 第一項の決定を認可し、又は変更する判決については、受訴裁判所は、民事訴訟法第二百五十九条第一項の定めるところにより、仮執行の宣言をすることができる。
6 第一項の訴えに係る訴訟手続は、第二百三十四条第二号又は第五号に掲げる事由が生じたときは、第五十二条第四項の規定にかかわらず、終了するものとする。
(否認権行使の期間)
第九十八条 否認権は、更生手続開始の日(更生手続開始の日より前に破産手続又は再生手続が開始されている場合にあっては、破産手続開始又は再生手続開始の日)から二年を経過したときは、行使することができない。否認しようとする行為の日から二十年を経過したときも、同様とする。
第五節 更生会社の役員等の責任の追及
(役員等の財産に対する保全処分)
第九十九条 裁判所は、更生手続開始の決定があった場合において、必要があると認めるときは、管財人の申立てにより又は職権で、次に掲げる保全処分をすることができる。
一 発起人、設立時取締役、設立時監査役、取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人又は清算人(以下この節において「役員等」という。)の責任に基づく損害賠償請求権を保全するための当該役員等の財産に対する保全処分
二 役員等(設立時監査役、会計参与、監査役、会計監査人及び清算人を除く。)に対する会社法第五十二条第一項、第五十二条の二第一項若しくは第二項、第百三条第二項、第二百十三条第一項、第二百十三条の三第一項、第二百八十六条第一項又は第二百八十六条の三第一項の規定による支払請求権を保全するための当該役員等の財産に対する保全処分
2 裁判所は、前項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
3 第一項の規定による保全処分又は前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
5 第三項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
(役員等の責任の査定の申立て等)
第百条 裁判所は、更生手続開始の決定があった場合において、前条第一項各号に規定する請求権が存在し、かつ、必要があると認めるときは、管財人の申立てにより又は職権で、決定で、当該請求権の額その他の内容を査定する裁判(以下この節において「役員等責任査定決定」という。)をすることができる。
2 前項の申立てをするときは、その原因となる事実を疎明しなければならない。
3 裁判所は、職権で役員等責任査定決定の手続を開始する場合には、その旨の決定をしなければならない。
4 第一項の申立て又は前項の決定があったときは、時効の中断に関しては、裁判上の請求があったものとみなす。
5 役員等責任査定決定の手続(役員等責任査定決定があった後のものを除く。)は、更生手続が終了したときは、終了する。
(役員等責任査定決定等)
第百一条 役員等責任査定決定及び前条第一項の申立てを棄却する決定には、理由を付さなければならない。
2 裁判所は、前項の決定をする場合には、役員等を審尋しなければならない。
3 役員等責任査定決定があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
(役員等責任査定決定に対する異議の訴え)
第百二条 役員等責任査定決定に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。
2 前項の訴えは、更生裁判所が管轄する。
3 第一項の訴えは、これを提起する者が、役員等であるときは管財人を、管財人であるときは役員等を、それぞれ被告としなければならない。
4 第一項の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、役員等責任査定決定を認可し、変更し、又は取り消す。
5 役員等責任査定決定を認可し、又は変更した判決は、強制執行に関しては、給付を命ずる判決と同一の効力を有する。
6 役員等責任査定決定を認可し、又は変更した判決については、受訴裁判所は、民事訴訟法第二百五十九条第一項の定めるところにより、仮執行の宣言をすることができる。
(役員等責任査定決定の効力)
第百三条 前条第一項の訴えが、同項の期間内に提起されなかったとき、取り下げられたとき、又は却下されたときは、役員等責任査定決定は、給付を命ずる確定判決と同一の効力を有する。
第六節 担保権消滅の請求等
第一款 担保権消滅の請求
(担保権消滅許可の決定)
第百四条 裁判所は、更生手続開始当時更生会社の財産につき特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権(以下この款において「担保権」という。)がある場合において、更生会社の事業の更生のために必要であると認めるときは、管財人の申立てにより、当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産を目的とするすべての担保権を消滅させることを許可する旨の決定をすることができる。
2 前項の決定は、更生計画案を決議に付する旨の決定があった後は、することができない。
3 第一項の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 担保権の目的である財産の表示
二 前号の財産の価額
三 消滅すべき担保権の表示
4 第一項の決定があった場合には、その裁判書を、前項の書面(以下この条及び次条において「申立書」という。)とともに、当該申立書に記載された同項第三号の担保権を有する者(以下この款において「被申立担保権者」という。)に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
5 第一項の決定に対しては、被申立担保権者は、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を被申立担保権者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
7 申立書に記載された第三項第三号の担保権が根抵当権である場合において、根抵当権者が第四項の規定による送達を受けた時から二週間を経過したときは、当該根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
8 民法第三百九十八条の二十第二項の規定は、第一項の申立てが取り下げられ、又は同項の決定が取り消された場合について準用する。
(価額決定の請求)
第百五条 被申立担保権者は、申立書に記載された前条第三項第二号の価額(第百七条及び第百八条において「申出額」という。)について異議があるときは、当該申立書の送達を受けた日から一月以内に、担保権の目的である財産(次条において「財産」という。)について価額の決定を請求することができる。
2 前条第一項の決定をした裁判所は、やむを得ない事由がある場合に限り、被申立担保権者の申立てにより、前項の期間を伸長することができる。
3 第一項の規定による請求(以下この条から第百八条までにおいて「価額決定の請求」という。)に係る事件は、更生裁判所が管轄する。
4 価額決定の請求をする者は、その請求に係る手続の費用として更生裁判所の定める金額を予納しなければならない。
5 前項に規定する費用の予納がないときは、更生裁判所は、価額決定の請求を却下しなければならない。
(財産の価額の決定)
第百六条 価額決定の請求があった場合には、更生裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、評価人を選任し、財産の評価を命じなければならない。
2 前項の場合には、更生裁判所は、評価人の評価に基づき、決定で、当該決定の時における財産の価額を定めなければならない。
3 被申立担保権者が数人ある場合には、前項の決定は、被申立担保権者の全員につき前条第一項の期間(同条第二項の規定により期間が伸長されたときは、その伸長された期間。第百八条第一項第一号において「請求期間」という。)が経過した後にしなければならない。この場合において、数個の価額決定の請求事件が同時に係属するときは、事件を併合して裁判しなければならない。
4 第二項の決定は、価額決定の請求をしなかった被申立担保権者に対しても、その効力を有する。
5 価額決定の請求についての決定に対しては、管財人及び被申立担保権者は、即時抗告をすることができる。
6 価額決定の請求についての決定又は前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を管財人及び被申立担保権者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
(費用の負担)
第百七条 価額決定の請求に係る手続に要した費用は、前条第二項の決定により定められた価額が、申出額を超える場合には更生会社の負担とし、申出額を超えない場合には価額決定の請求をした者の負担とする。ただし、申出額を超える額が当該費用の額に満たないときは、当該費用のうち、その超える額に相当する部分は更生会社の負担とし、その余の部分は価額決定の請求をした者の負担とする。
2 前条第五項の即時抗告に係る手続に要した費用は、当該即時抗告をした者の負担とする。
3 第一項の規定により更生会社に対して費用請求権を有する者は、その費用に関し、次条第一項又は第百十二条第二項の規定により納付された金銭について、他の被申立担保権者に先立ち弁済を受ける権利を有する。
4 次条第五項の場合には、第一項及び第二項の費用は、これらの規定にかかわらず、更生会社の負担とする。この場合においては、更生会社に対する費用請求権は、共益債権とする。
(価額に相当する金銭の納付等)
第百八条 管財人は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金銭を、裁判所の定める期限までに、裁判所に納付しなければならない。
一 請求期間内に価額決定の請求がなかったとき、又は価額決定の請求のすべてが取り下げられ、若しくは却下されたとき 申出額に相当する金銭
二 第百六条第二項の決定が確定したとき 当該決定により定められた価額に相当する金銭
2 裁判所は、前項の期限の到来前においては、同項の期限を変更することができる。
3 被申立担保権者の有する担保権は、第一項又は第百十二条第二項の規定による金銭の納付があった時に消滅する。
4 第一項又は第百十二条第二項の規定による金銭の納付があったときは、裁判所書記官は、消滅した担保権に係る登記又は登録の抹消を嘱託しなければならない。
5 管財人が第一項若しくは第百十二条第二項の規定による金銭の納付をしないとき、又は管財人がこれらの規定による金銭の納付をする前に更生計画認可の決定があったときは、裁判所は、第百四条第一項の決定を取り消さなければならない。
(更生計画認可の決定があった場合の納付された金銭の取扱い)
第百九条 裁判所は、更生計画認可の決定があったときは、管財人(第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復した場合は、更生会社)に対して、前条第一項の規定により納付された金銭に相当する額(第百十一条第六項の規定による金銭の交付があったときは、当該交付に係る額を控除した額)又は第百十二条第二項の規定により納付された金銭に相当する額の金銭を交付しなければならない。
(更生計画認可前に更生手続が終了した場合の納付された金銭の取扱い)
第百十条 裁判所は、更生計画認可の決定前に更生手続が終了したときは、次項に規定する場合を除き、第百八条第一項又は第百十二条第二項の規定により納付された金銭について、配当表に基づいて、被申立担保権者に対する配当を実施しなければならない。
2 被申立担保権者が一人である場合又は被申立担保権者が二人以上であって第百八条第一項若しくは第百十二条第二項の規定により納付された金銭で各被申立担保権者の有する担保権によって担保される債権及び第百七条第一項の規定により更生会社の負担すべき費用を弁済することができる場合には、裁判所は、当該金銭の交付計算書を作成して、被申立担保権者に弁済金を交付し、剰余金を更生会社に交付する。
3 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第八十五条及び第八十八条から第九十二条までの規定は第一項の配当の手続について、同法第八十八条、第九十一条及び第九十二条の規定は前項の規定による弁済金の交付の手続について、それぞれ準用する。
(更生計画認可前の剰余金等の管財人への交付)
第百十一条 裁判所は、更生計画認可の決定の前において、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、管財人の申立てにより、当該各号に定める金額を管財人に交付する旨の決定をすることができる。
一 前条の規定により被申立担保権者に配当(弁済金の交付を含む。)をすべきこととなる可能性のある金額(次項において「配当等見込額」という。)を第百八条第一項の規定により納付される金銭に相当する金額から控除しても、剰余がある場合 当該剰余金額
二 すべての被申立担保権者が第百八条第一項の規定により納付される金銭に相当する金額の全部又は一部を管財人に交付することに同意している場合 当該同意のある金額
2 前項第一号に規定する配当等見込額は、次に掲げる金額の合計額とする。
一 各被申立担保権者が届け出た更生債権等(確定したものを除く。)についての届出額のうち、次のイ及びロのいずれにも該当するもの
イ 当該届出の内容によれば各被申立担保権者の有する担保権の被担保債権(利息又は不履行による損害賠償若しくは違約金に係る被担保債権にあっては、更生手続開始後二年を経過する時までに生ずるものに限る。次号イにおいて同じ。)となるもの
ロ イの担保権によって担保された範囲のもの
二 各被申立担保権者が届け出た更生債権等であって確定したものについての確定額のうち、次のイ及びロのいずれにも該当するもの
イ 確定した更生債権等の内容によれば各被申立担保権者の有する担保権の被担保債権となるもの
ロ イの担保権によって担保された範囲のもの
三 第百五条第四項の規定により予納された額
3 裁判所は、第百三十八条第一項に規定する債権届出期間が経過し、かつ、第百八条第一項各号に掲げる場合のいずれかに該当するに至った後でなければ、第一項の決定をすることができない。
4 第一項の申立てについての裁判に対しては、管財人及び被申立担保権者は、即時抗告をすることができる。
5 第一項の申立て又は前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を管財人及び被申立担保権者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
6 裁判所は、第一項の決定が確定したときは、次条第二項の規定による金銭の納付がされた場合を除き、当該決定において定める金額に相当する金銭を管財人(第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復した場合は、更生会社)に交付しなければならない。
(差引納付)
第百十二条 裁判所は、管財人が第百八条第一項の規定による金銭の納付をする前であっても、前条第一項の決定をすることができる。
2 管財人は、第百八条第一項の規定による金銭の納付をする前に前条第一項の決定が確定したときは、第百八条第一項の規定にかかわらず、同項の規定により納付すべき金銭の額から当該決定において定める金額を控除した額を、同項に規定する期限までに、裁判所に納付すれば足りる。
第二款 債権質の第三債務者の供託
第百十三条 更生担保権に係る質権の目的である金銭債権の債務者は、当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託して、その債務を免れることができる。
2 前項の規定による供託がされたときは、同項の質権を有していた更生担保権者は、供託金につき質権者と同一の権利を有する。
第七節 関係人集会
(関係人集会の招集)
第百十四条 裁判所は、次の各号に掲げる者のいずれかの申立てがあった場合には、関係人集会を招集しなければならない。これらの申立てがない場合であっても、裁判所は、相当と認めるときは、関係人集会を招集することができる。
一 管財人
二 第百十七条第二項に規定する更生債権者委員会
三 第百十七条第六項に規定する更生担保権者委員会
四 第百十七条第七項に規定する株主委員会
五 届出があった更生債権等の全部について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる更生債権等を有する更生債権者等
六 更生会社の総株主の議決権の十分の一以上を有する株主
2 前項前段の規定にかかわらず、更生会社が更生手続開始の時においてその財産をもって債務を完済することができない状態にあるときは、同項第四号及び第六号に掲げる者は、同項前段の申立てをすることができない。
(関係人集会の期日の呼出し等)
第百十五条 関係人集会の期日には、管財人、更生会社、届出をした更生債権者等、株主及び更生会社の事業の更生のために債務を負担し又は担保を提供する者があるときは、その者を呼び出さなければならない。ただし、第四十二条第二項の決定があったときは、更生計画案の決議をするための関係人集会の期日を除き、届出をした更生債権者等を呼び出すことを要しない。
2 前項本文の規定にかかわらず、届出をした更生債権者等又は株主であって議決権を行使することができないものは、呼び出さないことができる。
3 関係人集会の期日は、第四十六条第三項第三号に規定する労働組合等に通知しなければならない。
4 裁判所は、関係人集会の期日及び会議の目的である事項を公告しなければならない。
5 関係人集会の期日においてその延期又は続行について言渡しがあったときは、第一項及び前二項の規定は、適用しない。
(関係人集会の指揮)
第百十六条 関係人集会は、裁判所が指揮する。
第八節 更生債権者委員会及び代理委員等
(更生債権者委員会等)
第百十七条 裁判所は、更生債権者をもって構成する委員会がある場合には、利害関係人の申立てにより、当該委員会が、この法律の定めるところにより、更生手続に関与することを承認することができる。ただし、次の各号のいずれにも該当する場合に限る。
一 委員の数が、三人以上最高裁判所規則で定める人数以内であること。
二 更生債権者の過半数が当該委員会が更生手続に関与することについて同意していると認められること。
三 当該委員会が更生債権者全体の利益を適切に代表すると認められること。
2 裁判所は、必要があると認めるときは、更生手続において、前項の規定により承認された委員会(以下「更生債権者委員会」という。)に対して、意見の陳述を求めることができる。
3 更生債権者委員会は、更生手続において、裁判所又は管財人(第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復したときは、管財人又は更生会社)に対して、意見を述べることができる。
4 更生債権者委員会に更生会社の事業の更生に貢献する活動があったと認められるときは、裁判所は、当該活動のために必要な費用を支出した更生債権者の申立てにより、更生会社財産から、当該更生債権者に対し、相当と認める額の費用を償還することを許可することができる。
5 裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも第一項の規定による承認を取り消すことができる。
6 第一項の規定は更生担保権者をもって構成する委員会がある場合について、第二項から前項までの規定はこの項において準用する第一項の規定により承認された委員会(以下「更生担保権者委員会」という。)がある場合について、それぞれ準用する。
7 第一項の規定は株主をもって構成する委員会がある場合について、第二項から第五項までの規定はこの項において準用する第一項の規定により承認された委員会(第百二十一条において「株主委員会」という。)がある場合について、それぞれ準用する。
(更生債権者委員会の意見聴取)
第百十八条 裁判所書記官は、前条第一項の規定による承認があったときは、遅滞なく、管財人(第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復したときは、更生会社。次項において同じ。)に対して、その旨を通知しなければならない。
2 管財人は、前項の通知を受けたときは、遅滞なく、更生会社の業務及び財産の管理に関する事項について、更生債権者委員会の意見を聴かなければならない。
(管財人の更生債権者委員会に対する報告義務)
第百十九条 管財人は、第八十三条第三項若しくは第四項又は第八十四条の規定により報告書等(報告書、貸借対照表又は財産目録をいう。以下この条において同じ。)を裁判所に提出したときは、遅滞なく、当該報告書等を更生債権者委員会にも提出しなければならない。
2 管財人は、前項の場合において、当該報告書等に第十二条第一項の支障部分に該当する部分があると主張して同項の申立てをしたときは、当該部分を除いた報告書等を更生債権者委員会に提出すれば足りる。
(管財人に対する報告命令)
第百二十条 更生債権者委員会は、更生債権者全体の利益のために必要があるときは、裁判所に対し、管財人に更生会社の業務及び財産の管理状況その他更生会社の事業の更生に関し必要な事項について第八十四条第二項の規定による報告をすることを命ずるよう申し出ることができる。
2 前項の申出を受けた裁判所は、当該申出が相当であると認めるときは、管財人に対し、第八十四条第二項の規定による報告をすることを命じなければならない。
(準用)
第百二十一条 前三条の規定は、更生担保権者委員会又は株主委員会がある場合について準用する。
(代理委員)
第百二十二条 更生債権者等又は株主は、裁判所の許可を得て、共同して又は各別に、一人又は数人の代理委員を選任することができる。
2 裁判所は、更生手続の円滑な進行を図るために必要があると認めるときは、更生債権者等又は株主に対し、相当の期間を定めて、代理委員の選任を勧告することができる。
3 代理委員は、これを選任した更生債権者等又は株主のために、更生手続に属する一切の行為をすることができる。
4 一の更生債権者等又は一の株主について代理委員が数人あるときは、共同してその権限を行使する。ただし、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
5 裁判所は、代理委員の権限の行使が著しく不公正であると認めるときは、第一項の許可の決定又は次条第一項の選任の決定を取り消すことができる。
6 更生債権者等又は株主は、いつでも、その選任した代理委員を解任することができる。
(裁判所による代理委員の選任)
第百二十三条 裁判所は、共同の利益を有する更生債権者等又は株主が著しく多数である場合において、これらの者のうちに前条第二項の規定による勧告を受けたにもかかわらず同項の期間内に代理委員を選任しない者があり、かつ、代理委員の選任がなければ更生手続の進行に支障があると認めるときは、当該者のために、相当と認める者を代理委員に選任することができる。
2 前項の規定により代理委員を選任するには、当該代理委員の同意を得なければならない。
3 第一項の規定により代理委員が選任された場合には、当該代理委員は、本人(その者のために同項の規定により代理委員が選任された者をいう。第六項において同じ。)が前条第一項の規定により選任したものとみなす。
4 第一項の規定により選任された代理委員は、正当な理由があるときは、裁判所の許可を得て辞任することができる。
5 第一項の規定により選任された代理委員は、更生会社財産から、次に掲げるものの支払を受けることができる。
一 前条第三項に規定する行為をするために必要な費用について、その前払又は支出額の償還
二 裁判所が相当と認める額の報酬
6 第一項の規定により代理委員が選任された場合における当該代理委員と本人との間の関係については、民法第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十四条の規定を準用する。
(報償金等)
第百二十四条 裁判所は、更生債権者等、株主若しくは代理委員又はこれらの者の代理人が更生会社の事業の更生に貢献したと認められるときは、管財人の申立てにより又は職権で、管財人が、更生会社財産から、これらの者に対し、その事務処理に要した費用を償還し、又は報償金を支払うことを許可することができる。
2 前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第九節 調査命令
(調査命令)
第百二十五条 裁判所は、更生手続開始後において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、次に掲げる事項の全部又は一部を対象とする調査委員による調査又は意見陳述を命ずる処分をすることができる。
一 第九十九条第一項の規定による保全処分又は第百条第一項に規定する役員等責任査定決定を必要とする事情の有無及びその処分又は決定の要否
二 管財人の作成する貸借対照表及び財産目録の当否並びに更生会社の業務及び財産の管理状況その他裁判所の命ずる事項に関する管財人の報告の当否
三 更生計画案又は更生計画の当否
四 その他更生事件に関し調査委員による調査又は意見陳述を必要とする事項
2 裁判所は、前項の処分(以下「調査命令」という。)をする場合には、当該調査命令において、一人又は数人の調査委員を選任し、かつ、調査委員の調査又は意見陳述の対象となるべき事項及び裁判所に対して報告又は陳述をすべき期間を定めなければならない。
3 裁判所は、調査命令を変更し、又は取り消すことができる。
4 調査命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6 第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
(準用)
第百二十六条 第六十七条第二項、第六十八条、第六十九条第一項本文、第七十七条、第八十条及び第八十一条第一項から第四項までの規定は、調査委員について準用する。
第四章 共益債権及び開始後債権
第一節 共益債権
(共益債権となる請求権)
第百二十七条 次に掲げる請求権は、共益債権とする。
一 更生債権者等及び株主の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
二 更生手続開始後の更生会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権
三 更生計画の遂行に関する費用の請求権(更生手続終了後に生じたものを除く。)
四 第八十一条第一項(第三十四条第一項、第三十八条、第八十一条第五項及び前条において準用する場合を含む。)、第百十七条第四項(同条第六項及び第七項において準用する場合を含む。)第百二十三条第五項、第百二十四条第一項及び第百六十二条の規定により支払うべき費用、報酬及び報償金の請求権
五 更生会社の業務及び財産に関し管財人又は更生会社(第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復した場合に限る。)が権限に基づいてした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権
六 事務管理又は不当利得により更生手続開始後に更生会社に対して生じた請求権
七 更生会社のために支出すべきやむを得ない費用の請求権で、更生手続開始後に生じたもの(前各号に掲げるものを除く。)
(開始前の借入金等)
第百二十八条 保全管理人が開始前会社の業務及び財産に関し権限に基づいてした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権は、共益債権とする。
2 開始前会社(保全管理人が選任されているものを除く。以下この項及び第四項において同じ。)が、更生手続開始の申立て後更生手続開始前に、資金の借入れ、原材料の購入その他開始前会社の事業の継続に欠くことができない行為をする場合には、裁判所は、その行為によって生ずべき相手方の請求権を共益債権とする旨の許可をすることができる。
3 裁判所は、監督委員に対し、前項の許可に代わる承認をする権限を付与することができる。
4 開始前会社が第二項の許可又は前項の承認を得て第二項に規定する行為をしたときは、その行為によって生じた相手方の請求権は、共益債権とする。
(源泉徴収所得税等)
第百二十九条 更生会社に対して更生手続開始前の原因に基づいて生じた源泉徴収に係る所得税、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税、石油石炭税、地方消費税、申告納付の方法により徴収する道府県たばこ税(都たばこ税を含む。)及び市町村たばこ税(特別区たばこ税を含む。)並びに特別徴収義務者が徴収して納入すべき地方税の請求権で、更生手続開始当時まだ納期限の到来していないものは、共益債権とする。
(使用人の給料等)
第百三十条 株式会社について更生手続開始の決定があった場合において、更生手続開始前六月間の当該株式会社の使用人の給料の請求権及び更生手続開始前の原因に基づいて生じた当該株式会社の使用人の身元保証金の返還請求権は、共益債権とする。
2 前項に規定する場合において、更生計画認可の決定前に退職した当該株式会社の使用人の退職手当の請求権は、退職前六月間の給料の総額に相当する額又はその退職手当の額の三分の一に相当する額のいずれか多い額を共益債権とする。
3 前項の退職手当の請求権で定期金債権であるものは、同項の規定にかかわらず、各期における定期金につき、その額の三分の一に相当する額を共益債権とする。
4 前二項の規定は、第百二十七条の規定により共益債権とされる退職手当の請求権については、適用しない。
5 第一項に規定する場合において、更生手続開始前の原因に基づいて生じた当該株式会社の使用人の預り金の返還請求権は、更生手続開始前六月間の給料の総額に相当する額又はその預り金の額の三分の一に相当する額のいずれか多い額を共益債権とする。
(社債管理者等の費用及び報酬)
第百三十一条 第四十三条第一項第五号に規定する社債管理者等が更生債権等である社債の管理に関する事務を行おうとする場合には、裁判所は、更生手続の目的を達成するために必要があると認めるときは、当該社債管理者等の更生会社に対する当該事務の処理に要する費用の請求権を共益債権とする旨の許可をすることができる。
2 前項の社債管理者等が同項の許可を得ないで更生債権等である社債の管理に関する事務を行った場合であっても、裁判所は、当該社債管理者等が更生会社の事業の更生に貢献したと認められるときは、当該事務の処理に要した費用の償還請求権のうちその貢献の程度を考慮して相当と認める額を共益債権とする旨の許可をすることができる。
3 裁判所は、更生手続開始後の原因に基づいて生じた第一項の社債管理者等の報酬の請求権のうち相当と認める額を共益債権とする旨の許可をすることができる。
4 前三項の規定による許可を得た請求権は、共益債権とする。
5 第一項から第三項までの規定による許可の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(共益債権の取扱い)
第百三十二条 共益債権は、更生計画の定めるところによらないで、随時弁済する。
2 共益債権は、更生債権等に先立って、弁済する。
3 共益債権に基づき更生会社の財産に対し強制執行又は仮差押えがされている場合において、その強制執行又は仮差押えが更生会社の事業の更生に著しい支障を及ぼし、かつ、更生会社が他に換価の容易な財産を十分に有するときは、裁判所は、更生手続開始後において、管財人(第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復したときは、更生会社。次条第三項において同じ。)の申立てにより又は職権で、担保を立てさせて、又は立てさせないで、その強制執行又は仮差押えの手続の中止又は取消しを命ずることができる。共益債権である共助対象外国租税の請求権に基づき更生会社の財産に対し国税滞納処分の例によってする処分がされている場合におけるその処分の中止又は取消しについても、同様とする。
4 裁判所は、前項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
5 第三項の規定による中止又は取消しの命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
(更生会社財産不足の場合の弁済方法等)
第百三十三条 更生会社財産が共益債権の総額を弁済するのに足りないことが明らかになった場合における共益債権の弁済は、法令に定める優先権にかかわらず、債権額の割合による。ただし、共益債権について存する留置権、特別の先取特権、質権及び抵当権の効力を妨げない。
2 前項本文に規定する場合には、前条第一項の規定は、適用しない。
3 第一項本文に規定する場合には、裁判所は、管財人の申立てにより又は職権で、共益債権に基づき更生会社の財産に対してされている強制執行又は仮差押えの手続の取消しを命ずることができる。共益債権である共助対象外国租税の請求権に基づき更生会社の財産に対してされている国税滞納処分の例によってする処分の取消しについても、同様とする。
4 前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
第二節 開始後債権
第百三十四条 更生手続開始後の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権又は更生債権等であるものを除く。)は、開始後債権とする。
2 開始後債権については、更生手続が開始された時から更生計画で定められた弁済期間が満了する時(更生計画認可の決定前に更生手続が終了した場合にあっては更生手続が終了した時、その期間の満了前に更生計画に基づく弁済が完了した場合にあっては弁済が完了した時)までの間は、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。
3 開始後債権に基づく更生会社の財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、担保権の実行及び企業担保権の実行並びに開始後債権に基づく財産開示手続の申立ては、前項に規定する期間は、することができない。開始後債権である共助対象外国租税の請求権に基づく更生会社の財産に対する国税滞納処分の例によってする処分についても、同様とする。
第五章 更生債権者及び更生担保権者
第一節 更生債権者及び更生担保権者の手続参加
(更生債権者等の手続参加)
第百三十五条 更生債権者等は、その有する更生債権等をもって更生手続に参加することができる。
2 破産法第百四条及び第百五条の規定は、更生手続が開始された場合における更生債権者等の権利の行使について準用する。この場合において、同法第百四条及び第百五条中「破産手続開始」とあるのは「更生手続開始」と、同法第百四条第一項、第三項及び第四項並びに第百五条中「破産手続に」とあるのは「更生手続に」と、同法第百四条第三項から第五項までの規定中「破産者」とあるのは「更生会社」と、同条第四項中「破産債権者」とあるのは「更生債権者又は更生担保権者」と読み替えるものとする。
3 第一項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権をもって更生手続に参加するには、共助実施決定(租税条約等実施特例法第十一条第一項に規定する共助実施決定をいう。第百六十四条第二項において同じ。)を得なければならない。
(更生債権者等の議決権)
第百三十六条 更生債権者等は、その有する更生債権等につき、次の各号に掲げる債権の区分に従い、それぞれ当該各号に定める金額に応じて、議決権を有する。
一 更生手続開始後に期限が到来すべき確定期限付債権で無利息のもの 更生手続開始の時から期限に至るまでの期間の年数(その期間に一年に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)に応じた債権に対する法定利息を債権額から控除した額
二 金額及び存続期間が確定している定期金債権 各定期金につき前号の規定に準じて算定される額の合計額(その額が法定利率によりその定期金に相当する利息を生ずべき元本額を超えるときは、その元本額)
三 次に掲げる債権 更生手続開始の時における評価額
イ 更生手続開始後に期限が到来すべき不確定期限付債権で無利息のもの
ロ 金額又は存続期間が不確定である定期金債権
ハ 金銭の支払を目的としない債権
ニ 金銭債権で、その額が不確定であるもの又はその額を外国の通貨をもって定めたもの
ホ 条件付債権
ヘ 更生会社に対して行うことがある将来の請求権
四 前三号に掲げる債権以外の債権 債権額
2 前項の規定にかかわらず、更生債権者等は、更生債権等のうち次に掲げるものについては、議決権を有しない。
一 更生手続開始後の利息の請求権
二 更生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権
三 更生手続参加の費用の請求権
四 租税等の請求権
五 第百四十二条第二号に規定する更生手続開始前の罰金等の請求権
3 第一項の規定にかかわらず、更生会社が更生手続開始の時においてその財産をもって約定劣後更生債権に優先する債権に係る債務を完済することができない状態にあるときは、当該約定劣後更生債権を有する者は、議決権を有しない。
(更生債権者等が外国で受けた弁済)
第百三十七条 更生債権者等は、更生手続開始の決定があった後に、更生会社の財産で外国にあるものに対して権利を行使したことにより、更生債権等について弁済を受けた場合であっても、その弁済を受ける前の更生債権等の全部をもって更生手続に参加することができる。
2 前項の更生債権者等は、他の同順位の更生債権者等が自己の受けた弁済と同一の割合の弁済を受けるまでは、更生計画の定めるところによる弁済を受けることができない。
3 第一項の更生債権者等は、外国において弁済を受けた更生債権等の部分については、議決権を行使することができない。
第二節 更生債権及び更生担保権の届出
(更生債権等の届出)
第百三十八条 更生手続に参加しようとする更生債権者は、債権届出期間(第四十二条第一項の規定により定められた更生債権等の届出をすべき期間をいう。)内に、次に掲げる事項を裁判所に届け出なければならない。
一 各更生債権の内容及び原因
二 一般の優先権がある債権又は約定劣後更生債権であるときは、その旨
三 各更生債権についての議決権の額
四 前三号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項
2 更生手続に参加しようとする更生担保権者は、前項に規定する債権届出期間内に、次に掲げる事項を裁判所に届け出なければならない。
一 各更生担保権の内容及び原因
二 担保権の目的である財産及びその価額
三 各更生担保権についての議決権の額
四 前三号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項
(債権届出期間経過後の届出等)
第百三十九条 更生債権者等がその責めに帰することができない事由によって前条第一項に規定する債権届出期間内に更生債権等の届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅した後一月以内に限り、その届出をすることができる。
2 前項に規定する一月の期間は、伸長し、又は短縮することができない。
3 前条第一項に規定する債権届出期間の経過後に生じた更生債権等については、その権利の発生した後一月の不変期間内に、その届出をしなければならない。
4 第一項及び第三項の届出は、更生計画案を決議に付する旨の決定がされた後は、することができない。
5 第一項、第二項及び前項の規定は、更生債権者等が、その責めに帰することができない事由によって、届け出た事項について他の更生債権者等の利益を害すべき変更を加える場合について準用する。
(退職手当の請求権の届出の特例)
第百四十条 更生会社の使用人の退職手当の請求権についての更生債権等の届出は、退職した後にするものとする。
2 更生会社の使用人が第百三十八条第一項に規定する債権届出期間の経過後更生計画認可の決定以前に退職したときは、退職後一月の不変期間内に限り、退職手当の請求権についての更生債権等の届出をすることができる。
3 前二項の規定は、更生会社の取締役、会計参与、監査役、代表取締役、執行役、代表執行役、清算人又は代表清算人の退職手当の請求権について準用する。
(届出名義の変更)
第百四十一条 届出をした更生債権等を取得した者は、第百三十八条第一項に規定する債権届出期間が経過した後でも、届出名義の変更を受けることができる。
(租税等の請求権等の届出)
第百四十二条 次に掲げる請求権を有する者は、遅滞なく、当該請求権の額、原因及び担保権の内容並びに当該請求権が共助対象外国租税の請求権である場合にはその旨を裁判所に届け出なければならない。
一 租税等の請求権
二 更生手続開始前の罰金等の請求権(更生手続開始前の罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金又は過料の請求権であって、共益債権に該当しないものをいう。)
第百四十三条 削除
第三節 更生債権及び更生担保権の調査及び確定
第一款 更生債権及び更生担保権の調査
(更生債権者表及び更生担保権者表の作成等)
第百四十四条 裁判所書記官は、届出があった更生債権等について、更生債権者表及び更生担保権者表を作成しなければならない。
2 前項の更生債権者表には、各更生債権について、第百三十八条第一項第一号から第三号までに掲げる事項その他最高裁判所規則で定める事項を記載しなければならない。
3 第一項の更生担保権者表には、各更生担保権について、第百三十八条第二項第一号から第三号までに掲げる事項その他最高裁判所規則で定める事項を記載しなければならない。
4 更生債権者表又は更生担保権者表の記載に誤りがあるときは、裁判所書記官は、申立てにより又は職権で、いつでもその記載を更正する処分をすることができる。
(更生債権等の調査)
第百四十五条 裁判所による更生債権等の調査は、前条第二項及び第三項に規定する事項について、管財人が作成した認否書並びに更生債権者等、株主及び更生会社の書面による異議に基づいてする。
(認否書の作成及び提出)
第百四十六条 管財人は、第百三十八条第一項に規定する債権届出期間内に届出があった更生債権等について、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める事項についての認否を記載した認否書を作成しなければならない。
一 更生債権 内容、一般の優先権がある債権又は約定劣後更生債権であること及び議決権の額
二 更生担保権 内容、担保権の目的である財産の価額及び議決権の額
2 管財人は、第百三十九条第一項若しくは第三項の規定によりその届出があり、又は同条第五項の規定により届出事項の変更があった更生債権等についても、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める事項についての認否を前項の認否書に記載することができる。
一 更生債権 前項第一号に定める事項(届出事項の変更があった場合には、変更後の同号に定める事項)
二 更生担保権 前項第二号に定める事項(届出事項の変更があった場合には、変更後の同号に定める事項)
3 管財人は、一般調査期間(第四十二条第一項に規定する更生債権等の調査をするための期間をいう。)前の裁判所の定める期限までに、前二項の規定により作成した認否書を裁判所に提出しなければならない。
4 第一項の規定により同項の認否書に認否を記載すべき事項であって前項の規定により提出された認否書に認否の記載がないものがあるときは、管財人において当該事項を認めたものとみなす。
5 第二項の規定により同項各号に定める事項についての認否を認否書に記載することができる更生債権等について、第三項の規定により提出された認否書に当該事項の一部についての認否の記載があるときは、管財人において当該事項のうち当該認否書に認否の記載のないものを認めたものとみなす。
(一般調査期間における調査)
第百四十七条 届出をした更生債権者等及び株主は、前条第三項に規定する一般調査期間内に、裁判所に対し、同条第一項又は第二項に規定する更生債権等についての同条第一項各号又は第二項各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める事項について、書面で異議を述べることができる。
2 更生会社は、前項の一般調査期間内に、裁判所に対し、同項に規定する更生債権等の内容について、書面で異議を述べることができる。
3 第一項の一般調査期間を変更する決定をしたときは、その裁判書は、管財人、更生会社、届出をした更生債権者等及び株主(第百三十八条第一項に規定する債権届出期間の経過前にあっては、管財人、更生会社並びに知れている更生債権者等及び株主)に送達しなければならない。
4 前項の規定による送達は、書類を通常の取扱いによる郵便に付し、又は民間事業者による信書の送達に関する法律第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項に規定する信書便の役務を利用して送付する方法によりすることができる。
5 前項の規定による送達をした場合においては、その郵便物等が通常到達すべきであった時に、送達があったものとみなす。
(特別調査期間における調査)
第百四十八条 裁判所は、第百三十九条第一項若しくは第三項の規定によりその届出があり、又は同条第五項の規定により届出事項の変更があった更生債権等について、その調査をするための期間(以下この条において「特別調査期間」という。)を定めなければならない。ただし、当該更生債権等について、管財人が、第百四十六条第三項の規定により提出された認否書に、同条第二項の規定により同項各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める事項のいずれかについての認否を記載している場合は、この限りでない。
2 前項本文の場合には、特別調査期間に関する費用は、当該更生債権等を有する者の負担とする。
3 管財人は、特別調査期間に係る更生債権等については、第百四十六条第二項各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める事項についての認否を記載した認否書を作成し、特別調査期間前の裁判所の定める期限までに、これを裁判所に提出しなければならない。この場合には、同条第四項の規定を準用する。
4 届出をした更生債権者等及び株主にあっては前項の更生債権等についての第百四十六条第二項各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める事項につき、更生会社にあっては当該更生債権等の内容につき、特別調査期間内に、裁判所に対し、それぞれ書面で異議を述べることができる。
5 前条第三項から第五項までの規定は、特別調査期間を定める決定又はこれを変更する決定をした場合における裁判書の送達について準用する。
(特別調査期間に関する費用の予納)
第百四十八条の二 前条第一項本文の場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、同条第二項の更生債権等を有する者に対し、同項の費用の予納を命じなければならない。
2 前項の規定による処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
3 第一項の規定による処分に対しては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内に、異議の申立てをすることができる。
4 前項の異議の申立ては、執行停止の効力を有する。
5 第一項の場合において、同項の更生債権等を有する者が同項の費用の予納をしないときは、裁判所は、決定で、その者がした更生債権等の届出又は届出事項の変更に係る届出を却下しなければならない。
6 前項の規定による却下の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(債権届出期間経過後の退職による退職手当の請求権の調査の特例)
第百四十九条 第百四十条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定による届出があった更生債権等の調査については、第百四十五条から前条までの規定は、適用しない。当該更生債権等について、第百三十九条第五項の規定による届出事項の変更があった場合についても、同様とする。
2 前項の届出又は届出事項の変更があった場合には、裁判所は、同項の更生債権等の調査を行うため、直ちに、その旨を、管財人及び更生会社に通知しなければならない。
3 管財人は、前項の規定による通知があった日から三日以内に、裁判所に対し、書面で、第一項の更生債権等についての第百四十六条第二項各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める事項について、異議を述べることができる。更生会社が当該更生債権等の内容について異議を述べる場合についても、同様とする。
4 前項前段の規定による異議があったときは、裁判所書記官は、直ちに、その旨を、第一項の届出又は届出事項の変更をした更生債権者等に通知しなければならない。
(異議等のない更生債権等の確定)
第百五十条 第百四十六条第二項各号に定める事項は、更生債権等の調査において、管財人が認め、かつ、届出をした更生債権者等及び株主が調査期間内に異議を述べなかったとき(前条第一項の更生債権等の調査においては、管財人が同条第三項前段の規定による異議を述べなかったとき)は、確定する。
2 裁判所書記官は、更生債権等の調査の結果を更生債権者表及び更生担保権者表に記載しなければならない。
3 第一項の規定により確定した事項についての更生債権者表及び更生担保権者表の記載は、更生債権者等及び株主の全員に対して確定判決と同一の効力を有する。
第二款 更生債権及び更生担保権の確定のための裁判手続
(更生債権等査定決定)
第百五十一条 異議等のある更生債権等(更生債権等であって、その調査において、その内容(一般の優先権がある債権又は約定劣後更生債権であるかどうかの別を含む。)について管財人が認めず、若しくは第百四十九条第三項前段の規定による異議を述べ、又は届出をした更生債権者等若しくは株主が異議を述べたものをいう。)を有する更生債権者等は、異議者等(当該管財人並びに当該異議を述べた更生債権者等及び株主をいう。)の全員を相手方として、裁判所に、その内容(一般の優先権がある債権又は約定劣後更生債権であるかどうかの別を含む。)についての査定の申立て(以下この款において「更生債権等査定申立て」という。)をすることができる。ただし、第百五十六条第一項並びに第百五十八条第一項及び第二項の場合は、この限りでない。
2 更生債権等査定申立ては、前項本文に規定する異議等のある更生債権等に係る調査期間の末日又は第百四十九条第四項の通知があった日から一月の不変期間内にしなければならない。
3 更生債権等査定申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、決定で、第一項本文に規定する異議等のある更生債権等の存否及び内容(一般の優先権がある債権又は約定劣後更生債権であるかどうかの別を含む。)を査定する裁判(以下この款において「更生債権等査定決定」という。)をしなければならない。
4 裁判所は、更生債権等査定決定をする場合には、第一項本文に規定する異議者等を審尋しなければならない。
5 更生債権等査定申立てについての決定があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
6 第一項本文に規定する異議等のある更生債権等(第百五十八条第一項に規定するものを除く。)につき、第二項(第百五十六条第二項において準用する場合を含む。)の期間内に更生債権等査定申立て又は第百五十六条第一項の規定による受継の申立てがないときは、当該異議等のある更生債権等についての届出は、なかったものとみなす。
(更生債権等査定申立てについての決定に対する異議の訴え)
第百五十二条 更生債権等査定申立てについての決定に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴え(以下この款において「更生債権等査定異議の訴え」という。)を提起することができる。
2 更生債権等査定異議の訴えは、更生裁判所が管轄する。
3 更生債権等査定異議の訴えの第一審裁判所は、更生裁判所が更生事件を管轄することの根拠となる法令上の規定が第五条第六項の規定のみである場合(更生裁判所が第七条第三号の規定により更生事件の移送を受けた場合において、同号に規定する規定中移送を受けたことの根拠となる規定が同項の規定のみであるときを含む。)において、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、前項の規定にかかわらず、職権で、当該更生債権等査定異議の訴えに係る訴訟を第五条第一項に規定する地方裁判所に移送することができる。
4 更生債権等査定異議の訴えは、これを提起する者が、前条第一項本文に規定する異議等のある更生債権等を有する更生債権者等であるときは同項本文に規定する異議者等の全員を、当該異議者等であるときは当該更生債権者等を、それぞれ被告としなければならない。
5 更生債権等査定異議の訴えの口頭弁論は、第一項の期間を経過した後でなければ開始することができない。
6 同一の更生債権等に関し更生債権等査定異議の訴えが数個同時に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならない。この場合においては、民事訴訟法第四十条第一項から第三項までの規定を準用する。
7 更生債権等査定異議の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、更生債権等査定申立てについての決定を認可し、又は変更する。
(担保権の目的である財産についての価額決定の申立て)
第百五十三条 更生担保権者は、その有する更生担保権の内容の確定のために更生債権等査定申立てをした場合において、第百五十一条第一項本文に規定する異議者等のうちに当該更生担保権の調査において担保権の目的である財産の価額について認めず、又は異議を述べた者があるときは、当該者の全員を相手方として、当該更生債権等査定申立てをした日から二週間以内に、裁判所に、当該財産についての価額決定の申立て(以下この款において「価額決定の申立て」という。)をすることができる。
2 裁判所は、やむを得ない事由がある場合に限り、前項の更生担保権者の申立てにより、同項の期間を伸長することができる。
3 価額決定の申立てをする更生担保権者は、その手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
4 前項に規定する費用の予納がないときは、裁判所は、価額決定の申立てを却下しなければならない。
(担保権の目的である財産の価額の決定)
第百五十四条 価額決定の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、評価人を選任し、前条第一項の財産の評価を命じなければならない。
2 前項の場合には、裁判所は、評価人の評価に基づき、決定で、同項の財産の価額を定めなければならない。
3 価額決定の申立てについての決定に対しては、当該価額決定事件の当事者は、即時抗告をすることができる。
4 価額決定の申立てについての決定又は前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を同項に規定する当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
5 価額決定の申立てに係る手続に要した費用の負担は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定めるところによる。
一 決定価額(第二項の決定により定められた価額をいう。)が届出価額(前条第一項の更生担保権についての第百三十八条第二項第二号に掲げる価額をいう。)と等しいか、又はこれを上回る場合 当該価額決定の申立ての相手方である第百五十一条第一項本文に規定する異議者等の負担とする。
二 前号の決定価額が異議等のない価額(前号の異議者等が更生担保権の調査において述べた第一項の財産の価額のうち最も低いものをいう。)と等しいか、又はこれを下回る場合 前条第一項の更生担保権者の負担とする。
三 前二号に掲げる場合以外の場合 裁判所が、前二号に規定する者の全部又は一部に、その裁量で定める額を負担させる。
6 第三項の即時抗告に係る手続に要した費用は、当該即時抗告をした者の負担とする。
(価額決定手続と更生債権等査定決定の手続等との関係)
第百五十五条 更生担保権者がした更生債権等査定申立てについての決定は、第百五十三条第一項の期間(同条第二項の規定により期間が伸長されたときは、その伸長された期間)が経過した後(価額決定の申立てがあったときは、当該価額決定の申立てが取り下げられ、若しくは却下され、又は前条第二項の決定が確定した後)でなければ、することができない。
2 更生担保権の目的である財産についての次の各号に掲げる場合における当該各号に定める価額は、当該更生担保権を有する更生担保権者がした更生債権等査定申立て又は当該申立てについての決定に係る更生債権等査定異議の訴えが係属する裁判所を拘束する。
一 確定した前条第二項の決定がある場合 当該決定により定められた価額
二 前号に規定する決定がない場合 前条第五項第二号に規定する異議等のない価額
(異議等のある更生債権等に関する訴訟の受継)
第百五十六条 第百五十一条第一項本文に規定する異議等のある更生債権等に関し更生手続開始当時訴訟が係属する場合において、更生債権者等がその内容(一般の優先権がある債権又は約定劣後更生債権であるかどうかの別を含む。)の確定を求めようとするときは、同項本文に規定する異議者等の全員を当該訴訟の相手方として、訴訟手続の受継の申立てをしなければならない。
2 第百五十一条第二項の規定は、前項の申立てについて準用する。
(主張の制限)
第百五十七条 更生債権等査定申立て、更生債権等査定異議の訴え及び前条第一項の規定による受継があった訴訟に係る手続においては、更生債権者等は、第百三十八条第一項第一号及び第二号並びに第二項第一号及び第二号に掲げる事項について、更生債権者表又は更生担保権者表に記載されている事項のみを主張することができる。
(執行力ある債務名義のある債権等に対する異議の主張)
第百五十八条 第百五十一条第一項本文に規定する異議等のある更生債権等のうち執行力ある債務名義又は終局判決のあるものについては、同項本文に規定する異議者等は、更生会社がすることのできる訴訟手続によってのみ、異議を主張することができる。
2 前項に規定する異議等のある更生債権等に関し更生手続開始当時訴訟が係属する場合において、同項の異議者等が同項の規定による異議を主張しようとするときは、当該異議者等は、当該更生債権等を有する更生債権者等を相手方とする訴訟手続を受け継がなければならない。
3 第百五十一条第二項の規定は第一項の規定による異議の主張又は前項の規定による受継について、第百五十二条第五項及び第六項並びに前条の規定は前二項の場合について、それぞれ準用する。この場合においては、第百五十二条第五項中「第一項の期間」とあるのは、「第百五十一条第一項本文に規定する異議等のある更生債権等に係る調査期間の末日又は第百四十九条第四項の通知があった日から一月の不変期間」と読み替えるものとする。
4 前項において準用する第百五十一条第二項に規定する期間内に第一項の規定による異議の主張又は第二項の規定による受継がされなかった場合には、同条第一項本文に規定する異議者等が更生債権者等又は株主であるときは第百四十七条第一項又は第百四十八条第四項の異議はなかったものとみなし、当該異議者等が管財人であるときは管財人においてその更生債権等を認めたものとみなす。
(目的財産を共通にする複数の更生担保権がある場合の特例)
第百五十九条 担保権の目的である財産を共通にする更生担保権のうち確定した一の更生担保権についての次に掲げる事項は、他の更生担保権についての更生債権等査定申立て又は更生債権等の確定に関する訴訟(更生債権等査定異議の訴えに係る訴訟、第百五十六条第一項又は前条第二項の規定による受継があった訴訟及び同条第一項の規定による異議の主張に係る訴訟をいう。以下この款において同じ。)が係属する裁判所を拘束しない。
一 更生担保権の内容
二 担保権の目的である財産の価額
三 更生担保権が裁判により確定した場合においては、前二号に掲げるもののほか、当該裁判の理由に記載された事項
(更生債権等の確定に関する訴訟の結果の記載)
第百六十条 裁判所書記官は、管財人、更生債権者等又は株主の申立てにより、更生債権等の確定に関する訴訟の結果(更生債権等査定申立てについての決定に対する更生債権等査定異議の訴えが、第百五十二条第一項に規定する期間内に提起されなかったとき、取り下げられたとき、又は却下されたときは、当該決定の内容)を更生債権者表又は更生担保権者表に記載しなければならない。
(更生債権等の確定に関する訴訟の判決等の効力)
第百六十一条 更生債権等の確定に関する訴訟についてした判決は、更生債権者等及び株主の全員に対して、その効力を有する。
2 更生債権等査定申立てについての決定に対する更生債権等査定異議の訴えが、第百五十二条第一項に規定する期間内に提起されなかったとき、取り下げられたとき、又は却下されたときは、当該決定は、更生債権者等及び株主の全員に対して、確定判決と同一の効力を有する。
(訴訟費用の償還)
第百六十二条 更生会社財産が更生債権等の確定に関する訴訟(更生債権等査定申立てについての決定を含む。)によって利益を受けたときは、異議を主張した更生債権者等又は株主は、その利益の限度において、更生会社財産から訴訟費用の償還を受けることができる。
(更生手続終了の場合における更生債権等の確定手続の取扱い)
第百六十三条 更生手続が終了した際現に係属する更生債権等査定申立ての手続及び価額決定の申立ての手続は、更生計画認可の決定前に更生手続が終了したときは終了するものとし、更生計画認可の決定後に更生手続が終了したときは引き続き係属するものとする。
2 第五十二条第四項及び第五項の規定は、更生計画認可の決定後に更生手続が終了した場合における管財人を当事者とする更生債権等査定申立ての手続及び価額決定の申立ての手続について準用する。
3 更生計画認可の決定後に更生手続が終了した場合において、更生手続終了後に更生債権等査定申立てについての決定があったときは、第百五十二条第一項の規定により更生債権等査定異議の訴えを提起することができる。
4 更生手続が終了した際現に係属する更生債権等査定異議の訴えに係る訴訟手続であって、管財人が当事者でないものは、更生計画認可の決定前に更生手続が終了したときは中断するものとし、更生計画認可の決定後に更生手続が終了したときは引き続き係属するものとする。
5 更生手続が終了した際現に係属する訴訟手続(第五十二条第四項に規定する訴訟手続を除く。)であって、第百五十六条第一項又は第百五十八条第二項の規定による受継があったものは、更生計画認可の決定前に更生手続が終了したときは中断するものとし、更生計画認可の決定後に更生手続が終了したときは中断しないものとする。
6 前項の規定により訴訟手続が中断する場合においては、第五十二条第五項の規定を準用する。
第三款 租税等の請求権等についての特例
第百六十四条 租税等の請求権及び第百四十二条第二号に規定する更生手続開始前の罰金等の請求権については、前二款(第百四十四条を除く。)の規定は、適用しない。
2 第百四十二条の規定による届出があった請求権(罰金、科料及び刑事訴訟費用の請求権を除く。)の原因(共助対象外国租税の請求権にあっては、共助実施決定)が審査請求、訴訟(刑事訴訟を除く。次項において同じ。)その他の不服の申立てをすることができる処分である場合には、管財人は、当該届出があった請求権について、当該不服の申立てをする方法で、異議を主張することができる。
3 前項の場合において、当該届出があった請求権に関し更生手続開始当時訴訟が係属するときは、同項に規定する異議を主張しようとする管財人は、当該届出があった請求権を有する更生債権者等を相手方とする訴訟手続を受け継がなければならない。当該届出があった請求権に関し更生手続開始当時更生会社の財産関係の事件が行政庁に係属するときも、同様とする。
4 第二項の規定による異議の主張又は前項の規定による受継は、管財人が第二項に規定する届出があったことを知った日から一月の不変期間内にしなければならない。
5 第百五十条第二項の規定は第百四十二条の規定による届出があった請求権について、第百五十七条、第百六十条及び第百六十一条第一項の規定は第二項の規定による異議又は第三項の規定による受継があった場合について、それぞれ準用する。
第六章 株主
(株主の手続参加)
第百六十五条 株主は、その有する株式をもって更生手続に参加することができる。
2 株主として更生手続に参加することができる者は、株主名簿の記載又は記録によって定める。
3 裁判所は、株主名簿に記載又は記録のない株主の申立てにより、当該株主が更生手続に参加することを許可することができる。この場合においては、当該許可に係る株式については、前項の規定にかかわらず、当該許可を受けた者以外の者は、株主として更生手続に参加することができない。
4 裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、前項前段の規定による許可の決定を変更し、又は取り消すことができる。
5 第三項前段の申立てについての裁判及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
(株主の議決権)
第百六十六条 株主は、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、更生会社が単元株式数を定款で定めている場合においては、一単元の株式につき一個の議決権を有する。
2 前項の規定にかかわらず、更生会社が更生手続開始の時においてその財産をもって債務を完済することができない状態にあるときは、株主は、議決権を有しない。
第七章 更生計画の作成及び認可
第一節 更生計画の条項
(更生計画において定める事項)
第百六十七条 更生計画においては、次に掲げる事項に関する条項を定めなければならない。
一 全部又は一部の更生債権者等又は株主の権利の変更
二 更生会社の取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人及び清算人
三 共益債権の弁済
四 債務の弁済資金の調達方法
五 更生計画において予想された額を超える収益金の使途
六 次のイ及びロに掲げる金銭の額又は見込額及びこれらの使途
イ 第五十一条第一項本文に規定する手続又は処分における配当等に充てるべき金銭の額又は見込額
ロ 第百八条第一項の規定により裁判所に納付された金銭の額(第百十二条第二項の場合にあっては、同項の規定により裁判所に納付された金銭の額及び第百十一条第一項の決定において定める金額の合計額)
七 知れている開始後債権があるときは、その内容
2 第七十二条第四項前段に定めるもののほか、更生計画においては、第四十五条第一項各号に掲げる行為、定款の変更、事業譲渡等(会社法第四百六十八条第一項に規定する事業譲渡等をいう。第百七十四条第六号及び第二百十三条の二において同じ。)、株式会社の設立その他更生のために必要な事項に関する条項を定めることができる。
(更生計画による権利の変更)
第百六十八条 次に掲げる種類の権利を有する者についての更生計画の内容は、同一の種類の権利を有する者の間では、それぞれ平等でなければならない。ただし、不利益を受ける者の同意がある場合又は少額の更生債権等若しくは第百三十六条第二項第一号から第三号までに掲げる請求権について別段の定めをしても衡平を害しない場合その他同一の種類の権利を有する者の間に差を設けても衡平を害しない場合は、この限りでない。
一 更生担保権
二 一般の先取特権その他一般の優先権がある更生債権
三 前号及び次号に掲げるもの以外の更生債権
四 約定劣後更生債権
五 残余財産の分配に関し優先的内容を有する種類の株式
六 前号に掲げるもの以外の株式
2 前項第二号の更生債権について、優先権が一定の期間内の債権額につき存在する場合には、その期間は、更生手続開始の時からさかのぼって計算する。
3 更生計画においては、異なる種類の権利を有する者の間においては、第一項各号に掲げる種類の権利の順位を考慮して、更生計画の内容に公正かつ衡平な差を設けなければならない。この場合における権利の順位は、当該各号の順位による。
4 前項の規定は、租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)及び第百四十二条第二号に規定する更生手続開始前の罰金等の請求権については、適用しない。
5 更生計画によって債務が負担され、又は債務の期限が猶予されるときは、その債務の期限は、次に掲げる期間を超えてはならない。
一 担保物(その耐用期間が判定できるものに限る。)がある場合は、当該耐用期間又は十五年(更生計画の内容が更生債権者等に特に有利なものになる場合その他の特別の事情がある場合は、二十年)のいずれか短い期間
二 前号に規定する場合以外の場合は、十五年(更生計画の内容が更生債権者等に特に有利なものになる場合その他の特別の事情がある場合は、二十年)
6 前項の規定は、更生計画の定めにより社債を発行する場合については、適用しない。
7 第百四十二条第二号に規定する更生手続開始前の罰金等の請求権については、更生計画において減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない。
(租税等の請求権の取扱い)
第百六十九条 更生計画において、租税等の請求権につき、その権利に影響を及ぼす定めをするには、徴収の権限を有する者の同意を得なければならない。ただし、当該請求権について三年以下の期間の納税の猶予若しくは滞納処分による財産の換価の猶予の定めをする場合又は次に掲げるものに係る請求権についてその権利に影響を及ぼす定めをする場合には、徴収の権限を有する者の意見を聴けば足りる。
一 更生手続開始の決定の日から一年を経過する日(その日までに更生計画認可の決定があるときは、その決定の日)までの間に生ずる延滞税、利子税又は延滞金
二 納税の猶予又は滞納処分による財産の換価の猶予の定めをする場合におけるその猶予期間に係る延滞税又は延滞金
2 徴収の権限を有する者は、前項本文の同意をすることができる。
3 前二項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権については、その権利に影響を及ぼす定めをする場合においても、徴収の権限を有する者の意見を聴けば足りる。
(更生債権者等の権利の変更)
第百七十条 全部又は一部の更生債権者等又は株主の権利の変更に関する条項においては、届出をした更生債権者等及び株主の権利のうち変更されるべき権利を明示し、かつ、変更後の権利の内容を定めなければならない。ただし、第百七十二条に規定する更生債権等については、この限りでない。
2 届出をした更生債権者等又は株主の権利で、更生計画によってその権利に影響を受けないものがあるときは、その権利を明示しなければならない。
(債務の負担及び担保の提供)
第百七十一条 更生会社以外の者が更生会社の事業の更生のために債務を負担し、又は担保を提供するときは、更生計画において、その者を明示し、かつ、その債務又は担保権の内容を定めなければならない。更生会社の財産から担保を提供するときも、同様とする。
2 更生計画において、前項の規定による定めをするには、債務を負担し、又は担保を提供する者の同意を得なければならない。
(未確定の更生債権等の取扱い)
第百七十二条 第百五十一条第一項本文に規定する異議等のある更生債権等で、その確定手続が終了していないものがあるときは、更生計画において、その権利確定の可能性を考慮し、これに対する適確な措置を定めなければならない。
(更生会社の取締役等)
第百七十三条 次の各号に掲げる条項においては、当該各号に定める事項を定めなければならない。
一 更生会社の取締役に関する条項(次号から第四号までに掲げるものを除く。) 取締役の氏名又はその選任の方法及び任期
二 更生会社が更生計画認可の決定の時において代表取締役を定める場合における更生会社の取締役に関する条項(次号に掲げるものを除く。) 取締役及び代表取締役の氏名又はその選任若しくは選定の方法及び任期
三 更生会社が更生計画認可の決定の時において監査等委員会設置会社となる場合における更生会社の取締役に関する条項 監査等委員(会社法第三十八条第二項に規定する監査等委員をいう。第百八十三条第十号及び第二百十一条第一項において同じ。)である取締役及びそれ以外の取締役並びに代表取締役の氏名又はその選任若しくは選定の方法及び任期
四 更生会社が更生計画認可の決定の時において指名委員会等設置会社となる場合における更生会社の取締役に関する条項 取締役及び各委員会(会社法第四百条第一項に規定する各委員会をいう。以下同じ。)の委員の氏名又はその選任若しくは選定の方法及び任期
五 更生会社が更生計画認可の決定の時において会計参与設置会社となる場合における更生会社の会計参与に関する条項 会計参与の氏名若しくは名称又はその選任の方法及び任期
六 更生会社が更生計画認可の決定の時において監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。次項第三号において同じ。)となる場合における更生会社の監査役に関する条項 監査役の氏名又はその選任の方法及び任期
七 更生会社が更生計画認可の決定の時において会計監査人設置会社となる場合における更生会社の会計監査人に関する条項 会計監査人の氏名若しくは名称又はその選任の方法及び任期
八 更生会社が更生計画認可の決定の時において指名委員会等設置会社となる場合における更生会社の執行役に関する条項 執行役及び代表執行役の氏名又はその選任若しくは選定の方法及び任期
2 更生会社が更生計画認可の決定の時において清算株式会社となる場合には、次の各号に掲げる条項において、当該各号に定める事項を定めなければならない。
一 更生会社の清算人に関する条項(次号に掲げるものを除く。)清算人の氏名又はその選任の方法及び任期
二 更生会社が更生計画認可の決定の時において代表清算人を定める場合における更生会社の清算人に関する条項 清算人及び代表清算人の氏名又はその選任若しくは選定の方法及び任期
三 更生会社が更生計画認可の決定の時において監査役設置会社となる場合における更生会社の監査役に関する条項 監査役の氏名又はその選任の方法及び任期
(株式の消却、併合又は分割等)
第百七十四条 次に掲げる行為に関する条項においては、更生手続が行われていない場合に当該行為を行うとすれば株主総会の決議その他の株式会社の機関の決定が必要となる事項を定めなければならない。
一 株式の消却、併合若しくは分割又は株式無償割当て
二 新株予約権の消却又は新株予約権無償割当て
三 資本金又は準備金の額の減少
四 剰余金の配当その他の会社法第四百六十一条第一項各号に掲げる行為
五 定款の変更
六 事業譲渡等
七 株式会社の継続
(更生会社による株式の取得)
第百七十四条の二 更生会社による株式の取得に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 更生会社が取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二 更生会社が前号の株式を取得する日
(株式等売渡請求に係る売渡株式等の取得)
第百七十四条の三 更生会社の発行する売渡株式等についての株式等売渡請求に係る売渡株式等の取得に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 特別支配株主(会社法第百七十九条第一項に規定する特別支配株主をいう。第三号及び第二百十四条の二において同じ。)の氏名又は名称及び住所
二 会社法第百七十九条の二第一項各号に掲げる事項
三 特別支配株主が株式等売渡請求に係る売渡株式等の取得に際して更生債権者等に対して金銭を交付するときは、当該金銭の額又はその算定方法
四 前号に規定する場合には、更生債権者等に対する同号の金銭の割当てに関する事項
(募集株式を引き受ける者の募集)
第百七十五条 募集株式を引き受ける者の募集に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 会社法第百九十九条第二項に規定する募集事項
二 第二百五条第一項の規定により、更生計画の定めに従い、更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部が消滅した場合において、これらの者が会社法第二百三条第二項の申込みをしたときは募集株式の払込金額の全部又は一部の払込みをしたものとみなすこととするときは、その旨
三 更生債権者等又は株主に対して会社法第二百三条第二項の申込みをすることにより更生会社の募集株式の割当てを受ける権利を与えるときは、その旨及び当該募集株式の引受けの申込みの期日
四 前号に規定する場合には、更生債権者等又は株主に対する募集株式の割当てに関する事項
(募集新株予約権を引き受ける者の募集)
第百七十六条 募集新株予約権(当該募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下同じ。)を引き受ける者の募集に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 会社法第二百三十八条第一項に規定する募集事項
二 第二百五条第一項の規定により、更生計画の定めに従い、更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部が消滅した場合において、これらの者が会社法第二百四十二条第二項の申込みをしたときは募集新株予約権の払込金額の全部又は一部の払込みをしたものとみなすこととするときは、その旨
三 更生債権者等又は株主に対して会社法第二百四十二条第二項の申込みをすることにより更生会社の募集新株予約権の割当てを受ける権利を与えるときは、その旨及び当該募集新株予約権の引受けの申込みの期日
四 前号に規定する場合には、更生債権者等又は株主に対する募集新株予約権の割当てに関する事項
五 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合において、当該新株予約権付社債についての社債が担保付社債であるときは、その担保権の内容及び担保付社債信託法第二条第一項に規定する信託契約の受託会社の商号
(募集社債を引き受ける者の募集)
第百七十七条 募集社債(新株予約権付社債についてのものを除く。以下同じ。)を引き受ける者の募集に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 会社法第六百七十六条各号に掲げる事項
二 募集社債が担保付社債であるときは、その担保権の内容及び担保付社債信託法第二条第一項に規定する信託契約の受託会社の商号
三 第二百五条第一項の規定により、更生計画の定めに従い、更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部が消滅した場合において、これらの者が会社法第六百七十七条第二項の申込みをしたときは募集社債の払込金額の全部又は一部の払込みをしたものとみなすこととするときは、その旨
四 更生債権者等又は株主に対して会社法第六百七十七条第二項の申込みをすることにより更生会社の募集社債の割当てを受ける権利を与えるときは、その旨及び当該募集社債の引受けの申込みの期日
五 前号に規定する場合には、更生債権者等又は株主に対する募集社債の割当てに関する事項
(更生債権者等又は株主の権利の消滅と引換えにする株式等の発行)
第百七十七条の二 更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部の消滅と引換えにする株式の発行に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 発行する株式の数(種類株式発行会社にあっては、発行する株式の種類及び種類ごとの数)
二 増加する資本金及び資本準備金に関する事項
三 更生債権者等又は株主に対する発行する株式の割当てに関する事項
2 更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部の消滅と引換えにする新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この条、第百八十三条第十三号及び第二百二十五条第五項において同じ。)の発行に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 発行する新株予約権の内容及び数
二 発行する新株予約権を割り当てる日
三 発行する新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、会社法第六百七十六条各号に掲げる事項
四 前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された新株予約権についての会社法第百十八条第一項、第百七十九条第二項、第七百七十七条第一項、第七百八十七条第一項又は第八百八条第一項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め
五 第三号に規定する場合において、当該新株予約権付社債についての社債が担保付社債であるときは、その担保権の内容及び担保付社債信託法第二条第一項に規定する信託契約の受託会社の商号
六 更生債権者等又は株主に対する発行する新株予約権の割当てに関する事項
3 更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部の消滅と引換えにする社債(新株予約権付社債についてのものを除く。以下この条、第百八十三条第十三号及び第二百二十五条第五項において同じ。)の発行に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 発行する社債の総額
二 発行する各社債の金額
三 発行する社債の利率
四 発行する社債の償還の方法及び期限
五 会社法第六百七十六条第五号から第八号まで及び第十二号に掲げる事項
六 発行する社債が担保付社債であるときは、その担保権の内容及び担保付社債信託法第二条第一項に規定する信託契約の受託会社の商号
七 更生債権者等又は株主に対する発行する社債の割当てに関する事項
(解散)
第百七十八条 解散に関する条項においては、その旨及び解散の時期を定めなければならない。ただし、合併による解散の場合は、この限りでない。
(組織変更)
第百七十九条 持分会社への組織変更に関する条項においては、組織変更計画において定めるべき事項を定めなければならない。
(吸収合併)
第百八十条 吸収合併(更生会社が消滅する吸収合併であって、吸収合併後存続する会社(以下「吸収合併存続会社」という。)が株式会社であるものに限る。以下この項において同じ。)に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 吸収合併契約において定めるべき事項
二 吸収合併存続会社が吸収合併に際して更生債権者等に対して金銭その他の財産(以下「金銭等」という。)を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項
イ 当該金銭等が吸収合併存続会社の株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該吸収合併存続会社の資本金及び準備金の額に関する事項
ロ 当該金銭等が吸収合併存続会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ 当該金銭等が吸収合併存続会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ 当該金銭等が吸収合併存続会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
ホ 当該金銭等が吸収合併存続会社の株式等(株式、社債及び新株予約権をいう。以下同じ。)以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
三 前号に規定する場合には、更生債権者等に対する同号の金銭等の割当てに関する事項
2 吸収合併(更生会社が消滅する吸収合併であって、吸収合併存続会社が持分会社であるものに限る。以下この項において同じ。)に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 吸収合併契約において定めるべき事項
二 更生債権者等が吸収合併に際して吸収合併存続会社の社員となるときは、次のイからハまでに掲げる吸収合併存続会社の区分に応じ、当該イからハまでに定める事項
イ 合名会社 当該社員の氏名又は名称及び住所並びに出資の価額
ロ 合資会社 当該社員の氏名又は名称及び住所、当該社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別並びに当該社員の出資の価額
ハ 合同会社 当該社員の氏名又は名称及び住所並びに出資の価額
三 吸収合併存続会社が吸収合併に際して更生債権者等に対して金銭等(吸収合併存続会社の持分を除く。)を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項
イ 当該金銭等が吸収合併存続会社の社債であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ロ 当該金銭等が吸収合併存続会社の社債以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
四 前号に規定する場合には、更生債権者等に対する同号の金銭等の割当てに関する事項
3 吸収合併(更生会社が吸収合併存続会社となるものに限る。)に関する条項においては、吸収合併契約において定めるべき事項を定めなければならない。
(新設合併)
第百八十一条 新設合併(更生会社が消滅する新設合併であって、新設合併により設立する会社(以下「新設合併設立会社」という。)が株式会社であるものに限る。以下この項において同じ。)に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 新設合併契約において定めるべき事項
二 新設合併設立会社が新設合併に際して更生債権者等に対して株式等を交付するときは、当該株式等についての次に掲げる事項
イ 当該株式等が新設合併設立会社の株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該新設合併設立会社の資本金及び準備金の額に関する事項
ロ 当該株式等が新設合併設立会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ 当該株式等が新設合併設立会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ 当該株式等が新設合併設立会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
三 前号に規定する場合には、更生債権者等に対する同号の株式等の割当てに関する事項
2 新設合併(更生会社が消滅する新設合併であって、新設合併設立会社が持分会社であるものに限る。以下この項において同じ。)に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 新設合併契約において定めるべき事項
二 更生債権者等が新設合併設立会社の社員となるときは、会社法第七百五十五条第一項第四号に掲げる事項
三 新設合併設立会社が新設合併に際して更生債権者等に対して社債を交付するときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
四 前号に規定する場合には、更生債権者等に対する同号の社債の割当てに関する事項
(吸収分割)
第百八十二条 吸収分割に関する条項においては、吸収分割契約において定めるべき事項を定めなければならない。
(新設分割)
第百八十二条の二 新設分割に関する条項においては、新設分割計画において定めるべき事項を定めなければならない。
(株式交換)
第百八十二条の三 株式交換(更生会社が株式交換をする株式会社(以下「株式交換完全子会社」という。)となる株式交換であって、その発行済株式の全部を取得する会社(以下「株式交換完全親会社」という。)が株式会社であるものに限る。以下この項において同じ。)に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株式交換契約において定めるべき事項
二 株式交換完全親会社が株式交換に際して更生債権者等に対して金銭等を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項
イ 当該金銭等が株式交換完全親会社の株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式交換完全親会社の資本金及び準備金の額に関する事項
ロ 当該金銭等が株式交換完全親会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ 当該金銭等が株式交換完全親会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ 当該金銭等が株式交換完全親会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
ホ 当該金銭等が株式交換完全親会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
三 前号に規定する場合には、更生債権者等に対する同号の金銭等の割当てに関する事項
2 株式交換(更生会社が株式交換完全子会社となる株式交換であって、株式交換完全親会社が合同会社であるものに限る。以下この項において同じ。)に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株式交換契約において定めるべき事項
二 更生債権者等が株式交換に際して株式交換完全親会社の社員となるときは、当該社員の氏名又は名称及び住所並びに出資の価額
三 株式交換完全親会社が株式交換に際して更生債権者等に対して金銭等(株式交換完全親会社の持分を除く。)を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項
イ 当該金銭等が当該株式交換完全親会社の社債であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ロ 当該金銭等が当該株式交換完全親会社の社債以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
四 前号に規定する場合には、更生債権者等に対する同号の金銭等の割当てに関する事項
3 株式交換(更生会社が株式交換完全親会社となるものに限る。)に関する条項においては、株式交換契約において定めるべき事項を定めなければならない。
(株式移転)
第百八十二条の四 株式移転に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株式移転計画において定めるべき事項
二 株式移転により設立する株式会社(以下「株式移転設立完全親会社」という。)が株式移転に際して更生債権者等に対して当該株式移転設立完全親会社の株式等を交付するときは、当該株式等についての次に掲げる事項
イ 当該株式等が株式移転設立完全親会社の株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式移転設立完全親会社の資本金及び準備金の額に関する事項
ロ 当該株式等が株式移転設立完全親会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ 当該株式等が株式移転設立完全親会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ 当該株式等が株式移転設立完全親会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
三 前号に規定する場合には、更生債権者等に対する同号の株式等の割当てに関する事項
(新会社の設立)
第百八十三条 株式会社の設立に関する条項においては、次に掲げる事項を定めなければならない。ただし、新設合併、新設分割又は株式移転により株式会社を設立する場合は、この限りでない。
一 設立する株式会社(以下この条において「新会社」という。)についての会社法第二十七条第一号から第四号までに掲げる事項、新会社が発行することができる株式の総数並びに新会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項
二 新会社の定款で定める事項(前号に掲げる事項に係るものを除く。)
三 新会社の設立時募集株式(会社法第五十八条第一項に規定する設立時募集株式をいう。以下同じ。)を引き受ける者の募集をするときは、同項各号に掲げる事項
四 第二百五条第一項の規定により、更生計画の定めに従い、更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部が消滅した場合において、これらの者が会社法第五十九条第三項の申込みをしたときは新会社の設立時募集株式の払込金額の全部又は一部の払込みをしたものとみなすこととするときは、その旨
五 更生計画により、更生債権者等又は株主に対して会社法第五十九条第三項の申込みをすることにより新会社の設立時募集株式の割当てを受ける権利を与えるときは、その旨及び当該設立時募集株式の引受けの申込みの期日
六 前号に規定する場合には、更生債権者等又は株主に対する設立時募集株式の割当てに関する事項
七 更生会社から新会社に移転すべき財産及びその額
八 新会社の設立時取締役の氏名又はその選任の方法及び監査等委員会設置会社である場合には設立時監査等委員(会社法第三十八条第二項に規定する設立時監査等委員をいう。第十号において同じ。)である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役のいずれであるかの別
九 次のイからホまでに掲げる場合の区分に応じ、当該イからホまでに定める事項
イ 新会社が代表取締役を定める場合 設立時代表取締役の氏名又はその選定の方法
ロ 新会社が会計参与設置会社である場合 設立時会計参与の氏名若しくは名称又はその選任の方法
ハ 新会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合 設立時監査役の氏名又はその選任の方法
ニ 新会社が会計監査人設置会社である場合 設立時会計監査人の氏名若しくは名称又はその選任の方法
ホ 新会社が指名委員会等設置会社である場合 設立時委員、設立時執行役及び設立時代表執行役の氏名又はその選任若しくは選定の方法
十 新会社の設立時取締役(新会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)、設立時会計参与、設立時監査役、設立時代表取締役、設立時委員、設立時執行役、設立時代表執行役又は設立時会計監査人(第二百二十五条第五項において「設立時取締役等」という。)が新会社の成立後において取締役(新会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、代表取締役、各委員会の委員、執行役、代表執行役又は会計監査人(同項において「新会社取締役等」という。)となった場合における当該新会社取締役等の任期
十一 新会社が募集新株予約権を引き受ける者の募集をするときは、第百七十六条各号に掲げる事項
十二 新会社が募集社債を引き受ける者の募集をするときは、第百七十七条各号に掲げる事項
十三 新会社が更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部の消滅と引換えに新会社の設立時発行株式、新株予約権又は社債の発行をするときは、第百七十七条の二に定める事項
第二節 更生計画案の提出
(更生計画案の提出時期)
第百八十四条 管財人は、第百三十八条第一項に規定する債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、更生計画案を作成して裁判所に提出しなければならない。
2 更生会社、届出をした更生債権者等又は株主は、裁判所の定める期間内に、更生計画案を作成して裁判所に提出することができる。
3 前二項の期間(次項の規定により伸長された期間を除く。)の末日は、更生手続開始の決定の日から一年以内の日でなければならない。
4 裁判所は、特別の事情があるときは、申立てにより又は職権で、第一項又は第二項の規定により定めた期間を伸長することができる。
(事業の全部の廃止を内容とする更生計画案)
第百八十五条 更生会社の事業を当該更生会社が継続し、又は当該事業を事業の譲渡、合併、会社分割若しくは株式会社の設立により他の者が継続することを内容とする更生計画案の作成が困難であることが更生手続開始後に明らかになったときは、裁判所は、前条第一項又は第二項に規定する者の申立てにより、更生会社の事業の全部の廃止を内容とする更生計画案の作成を許可することができる。ただし、債権者の一般の利益を害するときは、この限りでない。
2 裁判所は、更生計画案を決議に付する旨の決定をするまでは、いつでも前項本文の許可を取り消すことができる。
(更生計画案の修正)
第百八十六条 更生計画案の提出者は、裁判所の許可を得て、更生計画案を修正することができる。ただし、更生計画案を決議に付する旨の決定がされた後は、この限りでない。
(行政庁の意見)
第百八十七条 裁判所は、行政庁の許可、認可、免許その他の処分を要する事項を定めた更生計画案については、当該事項につき当該行政庁の意見を聴かなければならない。前条の規定による修正があった場合における修正後の更生計画案についても、同様とする。
(更生会社の労働組合等の意見)
第百八十八条 裁判所は、更生計画案について、第四十六条第三項第三号に規定する労働組合等の意見を聴かなければならない。第百八十六条の規定による修正があった場合における修正後の更生計画案についても、同様とする。
第三節 更生計画案の決議
(決議に付する旨の決定)
第百八十九条 更生計画案の提出があったときは、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該更生計画案を決議に付する旨の決定をする。
一 第百四十六条第三項に規定する一般調査期間が終了していないとき。
二 管財人が第八十四条第一項の規定による報告書の提出又は第八十五条第一項の規定による関係人集会における報告をしていないとき。
三 裁判所が更生計画案について第百九十九条第二項各号(第四号を除く。)に掲げる要件のいずれかを満たさないものと認めるとき。
四 第二百三十六条第二号の規定により更生手続を廃止するとき。
2 裁判所は、前項の決議に付する旨の決定において、議決権を行使することができる更生債権者等又は株主(以下この節において「議決権者」という。)の議決権行使の方法及び第百九十三条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により議決権の不統一行使をする場合における裁判所に対する通知の期限を定めなければならない。この場合においては、議決権行使の方法として、次に掲げる方法のいずれかを定めなければならない。
一 関係人集会の期日において議決権を行使する方法
二 書面等投票(書面その他の最高裁判所規則で定める方法のうち裁判所の定めるものによる投票をいう。)により裁判所の定める期間内に議決権を行使する方法
三 前二号に掲げる方法のうち議決権者が選択するものにより議決権を行使する方法。この場合においては、前号の期間の末日は、第一号の関係人集会の期日より前の日でなければならない。
3 裁判所は、第一項の決議に付する旨の決定をした場合には、前項前段に規定する期限を公告し、かつ、当該期限及び更生計画案の内容又はその要旨を第百十五条第一項本文に規定する者(同条第二項に規定する者を除く。)に通知しなければならない。
4 裁判所は、議決権行使の方法として第二項第二号又は第三号に掲げる方法を定めたときは、その旨を公告し、かつ、議決権者に対して、同項第二号に規定する書面等投票は裁判所の定める期間内に限りすることができる旨を通知しなければならない。
5 裁判所は、議決権行使の方法として第二項第二号に掲げる方法を定めた場合において、第百十四条第一項各号に掲げる者(同条第二項の規定により同条第一項前段の申立てをすることができない者を除く。)が前項の期間内に更生計画案の決議をするための関係人集会の招集の申立てをしたときは、議決権行使の方法につき、当該定めを取り消して、第二項第一号又は第三号に掲げる方法を定めなければならない。
(社債権者の議決権の行使に関する制限)
第百九十条 更生債権等である社債を有する社債権者は、当該社債について第四十三条第一項第五号に規定する社債管理者等がある場合には、次の各号のいずれかに該当する場合に限り、当該社債について議決権を行使することができる。
一 当該社債について更生債権等の届出をしたとき、又は届出名義の変更を受けたとき。
二 当該社債管理者等が当該社債について更生債権等の届出をした場合において、更生計画案を決議に付する旨の決定があるまでに、裁判所に対し、当該社債について議決権を行使する意思がある旨の申出をしたとき(当該申出のあった更生債権等である社債について次項の規定による申出名義の変更を受けた場合を含む。)
2 前項第二号に規定する申出のあった更生債権等である社債を取得した者は、申出名義の変更を受けることができる。
3 更生債権等である社債につき、更生計画案の決議における議決権の行使についての会社法第七百六条第一項の社債権者集会の決議が成立したとき又は同項ただし書の定めがあるときは、第一項の社債権者(同項各号のいずれかに該当するものに限る。)は、同項の規定にかかわらず、当該更生計画案の決議において議決権の行使をすることができない。
(関係人集会が開催される場合における議決権の額又は数の定め方等)
第百九十一条 裁判所が議決権行使の方法として第百八十九条第二項第一号又は第三号に掲げる方法を定めた場合においては、管財人、届出をした更生債権者等又は株主は、関係人集会の期日において、届出をした更生債権者等又は株主の議決権につき異議を述べることができる。ただし、第百五十条第一項の規定によりその額が確定した届出をした更生債権者等の議決権については、この限りでない。
2 前項本文に規定する場合においては、議決権者は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額又は数に応じて、議決権を行使することができる。
一 第百五十条第一項の規定によりその額が確定した議決権を有する届出をした更生債権者等 確定した額
二 前項本文の異議のない議決権を有する届出をした更生債権者等 届出の額
三 前項本文の異議のない議決権を有する株主 株主名簿に記載され、若しくは記録され、又は第百六十五条第三項の許可において定める数
四 前項本文の異議のある議決権を有する届出をした更生債権者等又は株主 裁判所が定める額又は数。ただし、裁判所が議決権を行使させない旨を定めたときは、議決権を行使することができない。
3 裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも前項第四号の規定による決定を変更することができる。
(関係人集会が開催されない場合における議決権の額又は数の定め方等)
第百九十二条 裁判所が議決権行使の方法として第百八十九条第二項第二号に掲げる方法を定めた場合においては、議決権者は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額又は数に応じて、議決権を行使することができる。
一 第百五十条第一項の規定によりその額が確定した議決権を有する届出をした更生債権者等 確定した額
二 届出をした更生債権者等(前号に掲げるものを除く。)裁判所が定める額。ただし、裁判所が議決権を行使させない旨を定めたときは、議決権を行使することができない。
三 株主 株主名簿に記載され、若しくは記録され、又は第百六十五条第三項の許可において定める数
2 裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、いつでも前項第二号の規定による決定を変更することができる。
(議決権の行使の方法等)
第百九十三条 議決権者は、代理人をもってその議決権を行使することができる。
2 議決権者は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。この場合においては、第百八十九条第二項前段に規定する期限までに、裁判所に対してその旨を書面で通知しなければならない。
3 前項の規定は、第一項に規定する代理人が委任を受けた議決権(自己の議決権を有するときは、当該議決権を含む。)を統一しないで行使する場合について準用する。
(基準日による議決権者の確定)
第百九十四条 裁判所は、相当と認めるときは、更生計画案を決議に付する旨の決定と同時に、一定の日(以下この条において「基準日」という。)を定めて、基準日における更生債権者表、更生担保権者表又は株主名簿に記載され、又は記録されている更生債権者等又は株主を議決権者と定めることができる。
2 裁判所は、基準日を公告しなければならない。この場合において、基準日は、当該公告の日から二週間を経過する日以後の日でなければならない。
(議決権を行使することができない者)
第百九十五条 更生計画によって影響を受けない権利又は第二百条第二項の規定によりその保護が定められている権利を有する者は、議決権を行使することができない。
(更生計画案の可決の要件)
第百九十六条 更生計画案の決議は、第百六十八条第一項各号に掲げる種類の権利又は次項の規定により定められた種類の権利を有する者に分かれて行う。
2 裁判所は、相当と認めるときは、二以上の第百六十八条第一項各号に掲げる種類の権利を一の種類の権利とし、又は一の当該各号に掲げる種類の権利を二以上の種類の権利とすることができる。ただし、更生債権、更生担保権又は株式は、それぞれ別の種類の権利としなければならない。
3 裁判所は、更生計画案を決議に付する旨の決定をするまでは、前項本文の決定を変更し、又は取り消すことができる。
4 前二項の規定による決定があった場合には、その裁判書を議決権者に送達しなければならない。ただし、関係人集会の期日において当該決定の言渡しがあったときは、この限りでない。
5 更生計画案を可決するには、第一項に規定する種類の権利ごとに、当該権利についての次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める者の同意がなければならない。
一 更生債権 議決権を行使することができる更生債権者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者
二 更生担保権 次のイからハまでに掲げる区分に応じ、当該イからハまでに定める者
イ 更生担保権の期限の猶予の定めをする更生計画案 議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の三分の二以上に当たる議決権を有する者
ロ 更生担保権の減免の定めその他期限の猶予以外の方法により更生担保権者の権利に影響を及ぼす定めをする更生計画案 議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の四分の三以上に当たる議決権を有する者
ハ 更生会社の事業の全部の廃止を内容とする更生計画案 議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の十分の九以上に当たる議決権を有する者
三 株式 議決権を行使することができる株主の議決権の総数の過半数に当たる議決権を有する者
(更生計画案の変更)
第百九十七条 更生計画案の提出者は、議決権行使の方法として第百八十九条第二項第一号又は第三号に掲げる方法が定められた場合には、更生債権者等及び株主に不利な影響を与えないときに限り、関係人集会において、裁判所の許可を得て、当該更生計画案を変更することができる。
(関係人集会の期日の続行)
第百九十八条 更生計画案についての議決権行使の方法として第百八十九条第二項第一号又は第三号に掲げる方法が定められ、かつ、当該更生計画案が可決されるに至らなかった場合において、関係人集会の期日の続行につき、第百九十六条第一項に規定する種類の権利ごとに、当該権利についての次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める者の同意があったときは、裁判所は、管財人、更生会社若しくは議決権者の申立てにより又は職権で、続行期日を定めて言い渡さなければならない。ただし、続行期日において当該更生計画案が可決される見込みがないことが明らかである場合は、この限りでない。
一 更生債権 議決権を行使することができる更生債権者の議決権の総額の三分の一以上に当たる議決権を有する者
二 更生担保権 議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者
三 株式 議決権を行使することができる株主の議決権の総数の三分の一以上に当たる議決権を有する者
2 前項本文の場合において、同項本文の更生計画案の可決は、当該更生計画案が決議に付された最初の関係人集会の期日から二月以内にされなければならない。
3 裁判所は、必要があると認めるときは、更生計画案の提出者の申立てにより又は職権で、前項の期間を伸長することができる。ただし、その期間は、一月を超えることができない。
第四節 更生計画の認可又は不認可の決定
(更生計画認可の要件等)
第百九十九条 更生計画案が可決されたときは、裁判所は、更生計画の認可又は不認可の決定をしなければならない。
2 裁判所は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、更生計画認可の決定をしなければならない。
一 更生手続又は更生計画が法令及び最高裁判所規則の規定に適合するものであること。
二 更生計画の内容が公正かつ衡平であること。
三 更生計画が遂行可能であること。
四 更生計画の決議が誠実かつ公正な方法でされたこと。
五 他の会社と共に第四十五条第一項第七号に掲げる行為を行うことを内容とする更生計画については、前項の規定による決定の時において、当該他の会社が当該行為を行うことができること。
六 行政庁の許可、認可、免許その他の処分を要する事項を定めた更生計画については、第百八十七条の規定による当該行政庁の意見と重要な点において反していないこと。
3 更生手続が法令又は最高裁判所規則の規定に違反している場合であっても、その違反の程度、更生会社の現況その他一切の事情を考慮して更生計画を認可しないことが不適当と認めるときは、裁判所は、更生計画認可の決定をすることができる。
4 裁判所は、前二項又は次条第一項の規定により更生計画認可の決定をする場合を除き、更生計画不認可の決定をしなければならない。
5 第百十五条第一項本文に規定する者及び第四十六条第三項第三号に規定する労働組合等は、更生計画を認可すべきかどうかについて、意見を述べることができる。
6 更生計画の認可又は不認可の決定があった場合には、その主文、理由の要旨及び更生計画又はその要旨を公告しなければならない。
7 前項に規定する場合には、同項の決定があった旨を第四十六条第三項第三号に規定する労働組合等に通知しなければならない。
(同意を得られなかった種類の権利がある場合の認可)
第二百条 第百九十六条第一項に規定する種類の権利の一部に同条第五項の要件を満たす同意を得られなかったものがあるため更生計画案が可決されなかった場合においても、裁判所は、更生計画案を変更し、同意が得られなかった種類の権利を有する者のために次に掲げる方法のいずれかにより当該権利を保護する条項を定めて、更生計画認可の決定をすることができる。
一 更生担保権者について、その更生担保権の全部をその担保権の被担保債権として存続させ、又はその担保権の目的である財産を裁判所が定める公正な取引価額(担保権による負担がないものとして評価するものとする。)以上の価額で売却し、その売得金から売却の費用を控除した残金で弁済し、又はこれを供託すること。
二 更生債権者については破産手続が開始された場合に配当を受けることが見込まれる額、株主については清算の場合に残余財産の分配により得ることが見込まれる利益の額を支払うこと。
三 当該権利を有する者に対して裁判所の定めるその権利の公正な取引価額を支払うこと。
四 その他前三号に準じて公正かつ衡平に当該権利を有する者を保護すること。
2 更生計画案について、第百九十六条第一項に規定する種類の権利の一部に、同条第五項の要件を満たす同意を得られないことが明らかなものがあるときは、裁判所は、更生計画案の作成者の申立てにより、あらかじめ、同意を得られないことが明らかな種類の権利を有する者のために前項各号に掲げる方法のいずれかにより当該権利を保護する条項を定めて、更生計画案を作成することを許可することができる。
3 前項の申立てがあったときは、裁判所は、申立人及び同意を得られないことが明らかな種類の権利を有する者のうち一人以上の意見を聴かなければならない。
(更生計画の効力発生の時期)
第二百一条 更生計画は、認可の決定の時から、効力を生ずる。
(更生計画認可の決定等に対する即時抗告)
第二百二条 更生計画の認可又は不認可の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合には、それぞれ当該各号に定める者は、更生計画の内容が第百六十八条第一項第四号から第六号までに違反することを理由とする場合を除き、即時抗告をすることができない。
一 更生会社が更生手続開始の時においてその財産をもって約定劣後更生債権に優先する債権に係る債務を完済することができない状態にある場合 約定劣後更生債権を有する者
二 更生会社が更生手続開始の時においてその財産をもって債務を完済することができない状態にある場合 株主
3 議決権を有しなかった更生債権者等又は株主が第一項の即時抗告をするには、更生債権者等又は株主であることを疎明しなければならない。
4 第一項の即時抗告は、更生計画の遂行に影響を及ぼさない。ただし、抗告裁判所又は更生計画認可の決定をした裁判所は、同項の決定の取消しの原因となることが明らかな事情及び更生計画の遂行によって生ずる償うことができない損害を避けるべき緊急の必要があることにつき疎明があったときは、抗告人の申立てにより、当該即時抗告につき決定があるまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで、当該更生計画の全部又は一部の遂行を停止し、その他必要な処分をすることができる。
5 前二項の規定は、第一項の即時抗告についての裁判に対する第十三条において準用する民事訴訟法第三百三十六条の規定による抗告及び同法第三百三十七条の規定による抗告の許可の申立てについて準用する。
第八章 更生計画認可後の手続
第一節 更生計画認可の決定の効力
(更生計画の効力範囲)
第二百三条 更生計画は、次に掲げる者のために、かつ、それらの者に対して効力を有する。
一 更生会社
二 すべての更生債権者等及び株主
三 更生会社の事業の更生のために債務を負担し、又は担保を提供する者
四 更生計画の定めるところにより更生会社が組織変更をした後の持分会社
五 更生計画の定めるところにより新設分割(他の会社と共同してするものを除く。)、株式移転(他の株式会社と共同してするものを除く。)又は第百八十三条に規定する条項により設立される会社
2 更生計画は、更生債権者等が更生会社の保証人その他更生会社と共に債務を負担する者に対して有する権利及び更生会社以外の者が更生債権者等のために提供した担保に影響を及ぼさない。
(更生債権等の免責等)
第二百四条 更生計画認可の決定があったときは、次に掲げる権利を除き、更生会社は、全ての更生債権等につきその責任を免れ、株主の権利及び更生会社の財産を目的とする担保権は全て消滅する。
一 更生計画の定め又はこの法律の規定によって認められた権利
二 更生手続開始後に更生会社の取締役等(取締役、会計参与、監査役、代表取締役、執行役、代表執行役、清算人又は代表清算人をいう。)又は使用人であった者で、更生計画認可の決定後も引き続きこれらの職に在職しているものの退職手当の請求権
三 第百四十二条第二号に規定する更生手続開始前の罰金等の請求権
四 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)のうち、これを免れ、若しくは免れようとし、不正の行為によりその還付を受け、又は徴収して納付し、若しくは納入すべきものを納付せず、若しくは納入しなかったことにより、更生手続開始後懲役若しくは罰金に処せられ、又は国税犯則取締法(明治三十三年法律第六十七号)第十四条第一項(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)において準用する場合を含む。)の規定による通告の旨を履行した場合における、免れ、若しくは免れようとし、還付を受け、又は納付せず、若しくは納入しなかった額の租税等の請求権で届出のないもの
2 更生計画認可の決定があったときは、前項第三号及び第四号に掲げる請求権については、更生計画で定められた弁済期間が満了する時(その期間の満了前に更生計画に基づく弁済が完了した場合にあっては、弁済が完了した時)までの間は、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。
3 第一項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権についての同項の規定による免責及び担保権の消滅の効力は、租税条約等実施特例法第十一条第一項の規定による共助との関係においてのみ主張することができる。
(届出をした更生債権者等の権利の変更)
第二百五条 更生計画認可の決定があったときは、届出をした更生債権者等及び株主の権利は、更生計画の定めに従い、変更される。
2 届出をした更生債権者等は、その有する更生債権等が確定している場合に限り、更生計画の定めによって認められた権利を行使することができる。
3 更生計画の定めによって株主に対し権利が認められた場合には、更生手続に参加しなかった株主も、更生計画の定めによって認められた権利を行使することができる。
4 会社法第百五十一条から第百五十三条までの規定は、株主が第一項の規定による権利の変更により受けるべき金銭等について準用する。
5 第一項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権についての同項の規定による権利の変更の効力は、租税条約等実施特例法第十一条第一項の規定による共助との関係においてのみ主張することができる。
(更生計画の条項の更生債権者表等への記載等)
第二百六条 更生計画認可の決定が確定したときは、裁判所書記官は、更生計画の条項を更生債権者表及び更生担保権者表に記載しなければならない。
2 前項の場合には、更生債権等に基づき更生計画の定めによって認められた権利については、その更生債権者表又は更生担保権者表の記載は、更生会社、第二百三条第一項第四号に掲げる持分会社、同項第五号に掲げる会社、更生債権者等、更生会社の株主及び更生会社の事業の更生のために債務を負担し、又は担保を提供する者に対して、確定判決と同一の効力を有する。
(租税等の時効の進行の停止)
第二百七条 更生計画認可の決定があったときは、租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)についての時効は、第百六十九条第一項の規定により納税の猶予又は滞納処分による財産の換価の猶予がされている期間中は、進行しない。
(中止した手続等の失効)
第二百八条 更生計画認可の決定があったときは、第五十条第一項の規定により中止した破産手続、再生手続(当該再生手続において、民事再生法第三十九条第一項の規定により中止した破産手続並びに同法第二十六条第一項第二号に規定する再生債権に基づく強制執行等の手続及び同項第五号に規定する再生債権に基づく外国租税滞納処分を含む。)、第二十四条第一項第二号に規定する強制執行等の手続、企業担保権の実行手続、同項第六号に規定する外国租税滞納処分及び財産開示手続は、その効力を失う。ただし、第五十条第五項の規定により続行された手続又は処分については、この限りでない。
第二節 更生計画の遂行
(更生計画の遂行)
第二百九条 更生計画認可の決定があったときは、管財人は、速やかに、更生計画の遂行又は更生会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分の監督を開始しなければならない。
2 管財人は、第二百三条第一項第五号に掲げる会社の更生計画の実行を監督する。
3 管財人は、前項に規定する会社の設立時取締役、設立時監査役、取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人、業務を執行する社員、清算人及び使用人その他の従業者並びにこれらの者であった者に対して当該会社の業務及び財産の状況につき報告を求め、又は当該会社の帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
4 裁判所は、更生計画の遂行を確実にするため必要があると認めるときは、管財人(第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復したときは、更生会社)又は更生会社の事業の更生のために債務を負担し、若しくは担保を提供する者に対し、次に掲げる者のために、相当な担保を立てるべきことを命ずることができる。
一 更生計画の定め又はこの法律の規定によって認められた権利を有する者
二 第百五十一条第一項本文に規定する異議等のある更生債権等でその確定手続が終了していないものを有する者
5 民事訴訟法第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。
(株主総会の決議等に関する法令の規定等の排除)
第二百十条 更生計画の遂行については、会社法その他の法令又は定款の規定にかかわらず、更生会社又は第百八十三条に規定する条項により設立される株式会社の株主総会の決議その他の機関の決定を要しない。
2 更生計画の遂行については、会社法その他の法令の規定にかかわらず、更生会社又は第百八十三条に規定する条項により設立される株式会社の株主又は新株予約権者は、更生会社又は同条に規定する条項により設立される株式会社に対し、自己の有する株式又は新株予約権を買い取ることを請求することができない。
3 更生計画の遂行については、会社法第八百二十八条、第八百二十九条及び第八百四十六条の二の規定にかかわらず、更生会社又は第百八十三条に規定する条項により設立される株式会社の株主等(同法第八百二十八条第二項第一号に規定する株主等をいう。)、新株予約権者、破産管財人又は債権者は、同法第八百二十八条第一項各号に掲げる行為の無効の訴え、同法第八百二十九条各号に掲げる行為が存在しないことの確認の訴え又は同法第八百四十六条の二第二項に規定する売渡株式等の取得の無効の訴えを提起することができない。
(更生会社の取締役等に関する特例)
第二百十一条 第百七十三条の規定により更生計画において取締役(更生会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項及び次項において同じ。)、会計参与、監査役、代表取締役、各委員会の委員、執行役、代表執行役、会計監査人、清算人又は代表清算人の氏名又は名称を定めたときは、これらの者は、更生計画認可の決定の時に、それぞれ、取締役、会計参与、監査役、代表取締役、各委員会の委員、執行役、代表執行役、会計監査人、清算人又は代表清算人となる。
2 第百七十三条の規定により更生計画において取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人又は清算人の選任の方法を定めたときは、これらの者の選任は、更生計画に定める方法による。
3 第百七十三条第一項第二号から第四号まで若しくは第八号又は第二項第二号の規定により更生計画において代表取締役、各委員会の委員、代表執行役又は代表清算人の選定の方法を定めたときは、これらの者の選定は、更生計画に定める方法による。
4 更生会社の従前の取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人又は清算人は、更生計画認可の決定の時に退任する。ただし、第一項の規定により引き続き取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人又は清算人となることを妨げない。
5 前項の規定は、更生会社の従前の代表取締役、各委員会の委員、代表執行役又は代表清算人について準用する。
6 第一項から第三項までの規定により取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人又は清算人に選任された者の任期及びこれらの規定により代表取締役、各委員会の委員、代表執行役又は代表清算人に選定された者の任期は、更生計画の定めるところによる。
(株式の併合に関する特例)
第二百十一条の二 第百七十四条第一号の規定により更生計画において更生会社が株式の併合をすることを定めた場合には、会社法第百八十二条の二及び第百八十二条の三の規定は、適用しない。
(資本金又は準備金の額の減少に関する特例)
第二百十二条 第百七十四条第三号の規定により更生計画において更生会社の資本金又は準備金の額の減少をすることを定めた場合には、会社法第四百四十九条及び第七百四十条の規定は、適用しない。
(定款の変更に関する特例)
第二百十三条 第百七十四条第五号の規定により更生計画において更生会社の定款を変更することを定めた場合には、その定款の変更は、更生計画認可の決定の時に、その効力を生ずる。ただし、その効力発生時期について更生計画において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
(事業譲渡等に関する特例)
第二百十三条の二 第百七十四条第六号の規定により更生計画において事業譲渡等(会社法第四百六十七条第一項第一号又は第二号に掲げる行為に限る。)をすることを定めた場合には、同法第二十三条の二の規定及び同法第二十四条第一項の規定により読み替えて適用する商法第十八条の二の規定は、更生会社の債権者については、適用しない。
(更生会社による株式の取得に関する特例)
第二百十四条 第百七十四条の二の規定により更生計画において更生会社が株式を取得することを定めた場合には、更生会社は、同条第二号の日に、同条第一号の株式を取得する。
(株式等売渡請求に係る売渡株式等の取得に関する特例)
第二百十四条の二 第百七十四条の三の規定により更生計画において更生会社の特別支配株主が株式等売渡請求に係る売渡株式等の取得をすることを定めた場合には、会社法第百七十九条の五、第百七十九条の七及び第百七十九条の八の規定は、適用しない。
(募集株式を引き受ける者の募集に関する特例)
第二百十五条 第百七十五条の規定により更生計画において更生会社が募集株式を引き受ける者の募集をすることを定めた場合には、株主に対して会社法第二百二条第一項第一号の募集株式の割当てを受ける権利を与える旨の定款の定めがあるときであっても、株主に対して当該権利を与えないで募集株式を発行することができる。
2 第百七十五条第三号の規定により更生計画において更生債権者等又は株主に対して同号の募集株式の割当てを受ける権利を与える旨を定めた場合には、更生会社は、これらの者に対し、次に掲げる事項を通知し、かつ、当該権利を有する更生債権者等の更生債権等につき無記名式の新株予約権証券若しくは無記名式の社債券が発行されているとき又は社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第四章の規定(同法その他の法令において準用する場合を含む。)の適用があるときは、次に掲げる事項を公告しなければならない。
一 当該更生債権者等又は株主が割当てを受ける募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数)
二 第百七十五条第三号の期日
三 第百七十五条第三号の募集株式の割当てを受ける権利を譲り渡すことができる旨
3 前項の規定による通知又は公告は、同項第二号の期日の二週間前にしなければならない。
4 第百七十五条第三号の募集株式の割当てを受ける権利を有する者は、更生会社が第二項の規定による通知又は公告をしたにもかかわらず、同項第二号の期日までに募集株式の引受けの申込みをしないときは、当該権利を失う。
5 第二項に規定する場合において、第百七十五条第三号の募集株式の割当てを受ける権利を有する更生債権者等又は株主がその割当てを受ける募集株式の数に一株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。
6 第一項に規定する場合には、会社法第百九十九条第五項、第二百七条、第二百十条及び第二編第二章第八節第六款の規定は、適用しない。
(募集新株予約権を引き受ける者の募集に関する特例)
第二百十六条 前条第一項の規定は、株主に対して会社法第二百四十一条第一項第一号の募集新株予約権の割当てを受ける権利を与える旨の定款の定めがある場合について準用する。
2 第百七十六条第三号の規定により更生計画において更生債権者等又は株主に対して同号の募集新株予約権の割当てを受ける権利を与える旨を定めた場合には、更生会社は、これらの者に対し、次に掲げる事項を通知し、かつ、当該権利を有する更生債権者等の更生債権等につき無記名式の新株予約権証券若しくは無記名式の社債券が発行されているとき又は社債、株式等の振替に関する法律第四章の規定(同法その他の法令において準用する場合を含む。)の適用があるときは、次に掲げる事項を公告しなければならない。
一 当該更生債権者等又は株主が割当てを受ける募集新株予約権の内容及び数
二 第百七十六条第三号の期日
三 第百七十六条第三号の募集新株予約権の割当てを受ける権利を譲り渡すことができる旨
3 前項の規定による通知又は公告は、同項第二号の期日の二週間前にしなければならない。
4 第百七十六条第三号の募集新株予約権の割当てを受ける権利を有する者は、更生会社が第二項の規定による通知又は公告をしたにもかかわらず、同項第二号の期日までに募集新株予約権の引受けの申込みをしないときは、当該権利を失う。
5 第二項に規定する場合において、第百七十六条第三号の募集新株予約権の割当てを受ける権利を有する更生債権者等又は株主がその割当てを受ける募集新株予約権の数に一に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。
6 第百七十六条の規定により更生計画において更生会社が募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを定めた場合には、会社法第二百三十八条第五項、第二百四十七条、第二百八十五条第一項第一号及び第二号、第二百八十六条、第二百八十六条の二第一項第一号並びに第二百八十六条の三の規定は、適用しない。
7 前項に規定する場合において、更生手続終了前に会社法第二百三十六条第一項第三号に掲げる事項についての定めのある新株予約権が行使されたときは、同法第二百八十四条の規定は、適用しない。
(募集社債を引き受ける者の募集に関する特例)
第二百十七条 第百七十七条第四号の規定により更生計画において更生債権者等又は株主に対して同号の募集社債の割当てを受ける権利を与える旨を定めた場合には、更生会社は、これらの者に対し、次に掲げる事項を通知し、かつ、当該権利を有する更生債権者等の更生債権等につき無記名式の新株予約権証券若しくは無記名式の社債券が発行されているとき又は社債、株式等の振替に関する法律第四章の規定(同法その他の法令において準用する場合を含む。)の適用があるときは、当該事項を公告しなければならない。
一 当該更生債権者等又は株主が割当てを受ける募集社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額
二 第百七十七条第四号の期日
三 第百七十七条第四号の募集社債の割当てを受ける権利を譲り渡すことができる旨
2 前項の規定による通知又は公告は、同項第二号の期日の二週間前にしなければならない。
3 第百七十七条第四号の募集社債の割当てを受ける権利を有する者は、更生会社が第一項の規定による通知又は公告をしたにもかかわらず、同項第二号の期日までに募集社債の引受けの申込みをしないときは、当該権利を失う。
4 第一項に規定する場合において、第百七十七条第四号の募集社債の割当てを受ける権利を有する更生債権者等又は株主がその割当てを受ける募集社債の数に一に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。
(更生債権者等又は株主の権利の消滅と引換えにする株式等の発行に関する特例)
第二百十七条の二 第百七十七条の二第一項の規定により更生計画において更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部の消滅と引換えに株式を発行することを定めた場合には、更生債権者等又は株主は、更生計画認可の決定の時に、同項第三号に掲げる事項についての定めに従い、同号の株式の株主となる。
2 第百七十七条の二第二項の規定により更生計画において更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部の消滅と引換えに同項に規定する新株予約権を発行することを定めた場合には、更生債権者等又は株主は、更生計画認可の決定の時に、同項第六号に掲げる事項についての定めに従い、同号の新株予約権の新株予約権者(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者)となる。
3 第百七十七条の二第三項の規定により更生計画において更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部の消滅と引換えに同項に規定する社債を発行することを定めた場合には、更生債権者等又は株主は、更生計画認可の決定の時に、同項第七号に掲げる事項についての定めに従い、同号の社債の社債権者となる。
(解散に関する特例)
第二百十八条 第百七十八条本文の規定により更生計画において更生会社が解散することを定めた場合には、更生会社は、更生計画に定める時期に解散する。
(組織変更に関する特例)
第二百十九条 第百七十九条の規定により更生計画において更生会社が組織変更をすることを定めた場合には、会社法第七百四十条、第七百七十五条及び第七百七十九条の規定は、適用しない。
(吸収合併に関する特例)
第二百二十条 第百八十条第一項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する吸収合併をすることを定めた場合において、次の各号に掲げる場合には、更生債権者等は、吸収合併がその効力を生ずる日(以下この条において「効力発生日」という。)に、同項第三号に掲げる事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。
一 第百八十条第一項第二号イに掲げる事項についての定めがある場合 同号イの株式の株主
二 第百八十条第一項第二号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの社債の社債権者
三 第百八十条第一項第二号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権の新株予約権者
四 第百八十条第一項第二号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者
2 前項に規定する場合には、会社法第七百四十条、第七百八十二条、第七百八十四条の二及び第七百八十九条の規定は、更生会社については、適用しない。
3 第百八十条第二項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する吸収合併をすることを定めた場合において、同項第二号に掲げる事項についての定めがあるときは、更生債権者等は、効力発生日に、同号に掲げる事項についての定めに従い、吸収合併存続会社の社員となる。この場合においては、吸収合併存続会社は、効力発生日に、同号の社員に係る定款の変更をしたものとみなす。
4 第百八十条第二項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する吸収合併をすることを定めた場合において、同項第三号イに掲げる事項についての定めがあるときは、更生債権者等は、効力発生日に、同項第四号に掲げる事項についての定めに従い、同項第三号イの社債の社債権者となる。
5 第百八十条第二項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する吸収合併をすることを定めた場合には、会社法第七百四十条、第七百八十二条、第七百八十四条の二及び第七百八十九条の規定は、更生会社については、適用しない。
6 第百八十条第三項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する吸収合併をすることを定めた場合には、会社法第七百四十条、第七百九十四条、第七百九十六条の二及び第七百九十九条の規定は、更生会社については、適用しない。
(新設合併に関する特例)
第二百二十一条 第百八十一条第一項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する新設合併をすることを定めた場合において、次の各号に掲げる場合には、更生債権者等は、新設合併設立会社の成立の日に、同項第三号に掲げる事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。
一 第百八十一条第一項第二号イに掲げる事項についての定めがある場合 同号イの株式の株主
二 第百八十一条第一項第二号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの社債の社債権者
三 第百八十一条第一項第二号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権の新株予約権者
四 第百八十一条第一項第二号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者
2 前項に規定する場合には、会社法第七百四十条、第八百三条、第八百五条の二及び第八百十条の規定は、更生会社については、適用しない。
3 第百八十一条第二項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する新設合併をすることを定めた場合において、同項第二号に掲げる事項についての定めがあるときは、更生債権者等は、新設合併設立会社の成立の日に、同号に掲げる事項についての定めに従い、当該新設合併設立会社の社員となる。
4 第百八十一条第二項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する新設合併をすることを定めた場合において、同項第三号に掲げる事項についての定めがあるときは、更生債権者等は、新設合併設立会社の成立の日に、同項第四号に掲げる事項についての定めに従い、同項第三号の社債の社債権者となる。
5 第百八十一条第二項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する新設合併をすることを定めた場合には、会社法第七百四十条、第八百三条、第八百五条の二及び第八百十条の規定は、更生会社については、適用しない。
(吸収分割に関する特例)
第二百二十二条 第百八十二条の規定により更生計画において更生会社が吸収分割(更生会社が吸収分割をする会社となるものに限る。)をすることを定めた場合には、会社法第七百四十条、第七百八十二条、第七百八十四条の二及び第七百八十九条の規定は、更生会社については、適用しない。
2 前項に規定する場合には、会社法第七百五十九条第二項から第四項まで及び第七百六十一条第二項から第四項までの規定は、更生会社の債権者については、適用しない。
3 第百八十二条の規定により更生計画において更生会社が吸収分割(更生会社が吸収分割をする会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社となるものに限る。)をすることを定めた場合には、会社法第七百四十条、第七百九十四条、第七百九十六条の二及び第七百九十九条の規定は、更生会社については、適用しない。
(新設分割に関する特例)
第二百二十三条 第百八十二条の二の規定により更生計画において更生会社が新設分割をすることを定めた場合には、会社法第七百四十条、第八百三条、第八百五条の二及び第八百十条の規定は、更生会社については、適用しない。
2 前項に規定する場合には、会社法第七百六十四条第二項から第四項まで及び第七百六十六条第二項から第四項までの規定は、更生会社の債権者については、適用しない。
(株式交換に関する特例)
第二百二十四条 第百八十二条の三第一項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する株式交換をすることを定めた場合において、次の各号に掲げる場合には、更生債権者等は、株式交換がその効力を生ずる日(以下この条において「効力発生日」という。)に、同項第三号に掲げる事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。
一 第百八十二条の三第一項第二号イに掲げる事項についての定めがある場合 同号イの株式の株主
二 第百八十二条の三第一項第二号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの社債の社債権者
三 第百八十二条の三第一項第二号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権の新株予約権者
四 第百八十二条の三第一項第二号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者
2 前項に規定する場合には、会社法第七百四十条、第七百八十二条、第七百八十四条の二及び第七百八十九条の規定は、更生会社については、適用しない。
3 第百八十二条の三第二項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する株式交換をすることを定めた場合において、同項第二号に掲げる事項についての定めがあるときは、更生債権者等は、効力発生日に、同号に掲げる事項についての定めに従い、当該株式交換完全親会社の社員となる。この場合においては、株式交換完全親会社は、効力発生日に、同号の社員に係る定款の変更をしたものとみなす。
4 第百八十二条の三第二項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する株式交換をすることを定めた場合において、同項第三号イに掲げる事項についての定めがあるときは、更生債権者等は、効力発生日に、同項第四号に掲げる事項についての定めに従い、同項第三号イの社債の社債権者となる。
5 第百八十二条の三第二項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する株式交換をすることを定めた場合には、会社法第七百四十条、第七百八十二条、第七百八十四条の二及び第七百八十九条の規定は、更生会社については、適用しない。
6 第百八十二条の三第三項の規定により更生計画において更生会社が同項に規定する株式交換をすることを定めた場合には、会社法第七百四十条、第七百九十四条、第七百九十六条の二及び第七百九十九条の規定は、更生会社については、適用しない。
(株式移転に関する特例)
第二百二十四条の二 第百八十二条の四の規定により更生計画において更生会社が株式移転をすることを定めた場合において、次の各号に掲げる場合には、更生債権者等は、株式移転設立完全親会社の成立の日に、同条第三号に掲げる事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。
一 第百八十二条の四第二号イに掲げる事項についての定めがある場合 同号イの株式の株主
二 第百八十二条の四第二号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの社債の社債権者
三 第百八十二条の四第二号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権の新株予約権者
四 第百八十二条の四第二号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者
2 前項に規定する場合には、会社法第七百四十条、第八百三条、第八百五条の二及び第八百十条の規定は、更生会社については、適用しない。
(新会社の設立に関する特例)
第二百二十五条 第百八十三条本文の規定により更生計画において株式会社を設立することを定めた場合には、当該株式会社(以下この条において「新会社」という。)についての発起人の職務は、管財人が行う。
2 前項に規定する場合においては、新会社の定款は、裁判所の認証を受けなければ、その効力を生じない。
3 第一項に規定する場合には、新会社の創立総会における決議は、その内容が更生計画の趣旨に反しない場合に限り、することができる。
4 第一項に規定する場合において、新会社が成立しなかったときは、更生会社は、管財人が同項の規定により新会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、新会社の設立に関して支出した費用を負担する。
5 第二百十一条第一項から第三項までの規定は新会社を設立する場合における設立時取締役等の選任又は選定について、同条第六項の規定は新会社の設立時取締役等が新会社の成立後において新会社取締役等となった場合における当該新会社取締役等の任期について、第二百十五条第二項から第五項までの規定は更生債権者等又は株主に対して第百八十三条第五号の新会社の設立時募集株式の割当てを受ける権利を与える場合について、第二百十六条及び第二百十七条の規定は新会社の募集新株予約権又は募集社債を引き受ける者の募集について、第二百十七条の二の規定は更生債権者等又は株主の権利の消滅と引換えにする新会社の設立時発行株式、新株予約権又は社債の発行について、それぞれ準用する。
6 第一項に規定する場合には、会社法第二十五条第一項第一号及び第二項、第二十六条第二項、第二十七条第五号、第三十条、第二編第一章第三節(第三十七条第三項を除く。)、第四節(第三十九条を除く。)、第五節及び第六節、第五十条、第五十一条、同章第八節、第五十八条、第五十九条第一項第一号(公証人の氏名に係る部分に限る。)、第二号(同法第二十七条第五号及び第三十二条第一項各号に掲げる事項に係る部分に限る。)及び第三号、第六十五条第一項、第八十八条から第九十条まで、第九十三条及び第九十四条(これらの規定中同法第九十三条第一項第一号及び第二号に掲げる事項に係る部分に限る。)、第百二条の二並びに第百三条の規定は、適用しない。
(新会社に異動した者の退職手当の取扱い)
第二百二十六条 更生手続開始後に更生会社の第二百四条第一項第二号に規定する取締役等又は使用人であった者で、前条第一項に規定する新会社が設立された際に更生会社を退職し、かつ、引き続き当該新会社の同号に規定する取締役等又は使用人となったものは、更生会社から退職手当の支給を受けることができない。
2 前項に規定する者の更生会社における在職期間は、退職手当の計算については、同項に規定する新会社における在職期間とみなす。
(管轄の特例)
第二百二十七条 更生計画において更生会社の株式の分割若しくは併合又は株式無償割当てをすることを定めた場合における会社法第二百三十四条第二項(同法第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による許可の申立てに係る事件は、同法第八百六十八条第一項の規定にかかわらず、更生手続が終了するまでの間は、更生裁判所が管轄する。
(募集株式等の割当てを受ける権利の譲渡)
第二百二十八条 更生計画の定めによって更生債権者等又は株主に対して更生会社又は第二百二十五条第一項に規定する新会社の募集株式若しくは設立時募集株式、募集新株予約権又は募集社債の割当てを受ける権利が与えられた場合には、当該権利は、これを他に譲渡することができる。
(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例)
第二百二十九条 更生債権者等又は株主が更生会社又は更生計画の定めにより設立される株式会社の株式を更生計画の定めによって取得する場合には、その取得は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第十一条の規定の適用については、これを代物弁済による取得とみなす。
(財団に関する処分の制限の特例)
第二百三十条 更生計画の定めによって更生会社の財産を処分する場合には、工場財団その他の財団又は財団に属する財産の処分の制限に関する法令の規定は、適用しない。
(許可、認可等に基づく権利の承継)
第二百三十一条 更生計画において更生会社が行政庁から得ていた許可、認可、免許その他の処分に基づく権利及び義務を第二百二十五条第一項に規定する新会社に移転することを定めたときは、当該新会社は、他の法令の規定にかかわらず、その権利及び義務を承継する。
(法人税法等の特例)
第二百三十二条 更生計画において第二百二十五条第一項に規定する新会社が更生会社の租税等の請求権に係る債務を承継することを定めたときは、当該新会社は当該債務を履行する義務を負い、更生会社は当該債務を免れる。
2 更生手続開始の決定があったときは、更生会社の事業年度は、その開始の時に終了し、これに続く事業年度は、更生計画認可の時(その時までに更生手続が終了したときは、その終了の日)に終了するものとする。ただし、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第十三条第一項ただし書及び地方税法第七十二条の十三第四項の規定の適用を妨げない。
3 更生手続開始の時に続く更生会社の事業年度又は連結事業年度の法人税並びに道府県民税、事業税及び市町村民税については、法人税法第七十一条、第八十一条の十九又は第百四十四条の三及び地方税法第五十三条第二項、第七十二条の二十六又は第三百二十一条の八第二項の規定は、適用しない。
第三節 更生計画の変更
第二百三十三条 更生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で更生計画に定める事項を変更する必要が生じたときは、裁判所は、更生手続終了前に限り、管財人、更生会社、届出をした更生債権者等又は株主の申立てにより、更生計画を変更することができる。
2 前項の規定により更生債権者等又は株主に不利な影響を及ぼすものと認められる更生計画の変更の申立てがあった場合には、更生計画案の提出があった場合の手続に関する規定を準用する。ただし、更生計画の変更によって不利な影響を受けない更生債権者等又は株主は、手続に参加させることを要せず、また、変更計画案について議決権を行使しない者(変更計画案について決議をするための関係人集会に出席した者を除く。)であって従前の更生計画に同意したものは、変更計画案に同意したものとみなす。
3 変更後の更生計画によって債務が負担され、又は債務の期限が猶予されるときは、その債務の期限は、次に掲げる期間を超えてはならない。
一 担保物(その耐用期間が判定できるものに限る。)がある場合は、当該耐用期間又は最初の更生計画認可の決定の時から十五年(変更後の更生計画の内容が更生債権者等に特に有利なものになる場合その他の特別の事情がある場合は、二十年)のいずれか短い期間
二 前号に規定する場合以外の場合は、最初の更生計画認可の決定の時から十五年(変更後の更生計画の内容が更生債権者等に特に有利なものになる場合その他の特別の事情がある場合は、二十年)
4 前項の規定は、変更後の更生計画の定めにより社債を発行し、又は既に更生計画の定めにより発行した社債の期限の猶予をする場合については、適用しない。
5 変更後の更生計画は、第一項の規定による変更の決定又は第二項の規定による認可の決定の時から、効力を生ずる。
6 前項に規定する決定に対しては、即時抗告をすることができる。この場合においては、第二百二条第二項から第五項までの規定を準用する。
7 第七十二条第七項の規定は、更生計画の変更により第七十二条第四項前段の規定による更生計画の定めが取り消された場合について準用する。
第九章 更生手続の終了
第一節 更生手続の終了事由
第二百三十四条 更生手続は、次に掲げる事由のいずれかが生じた時に終了する。
一 更生手続開始の申立てを棄却する決定の確定
二 第四十四条第一項の規定による即時抗告があった場合における更生手続開始の決定を取り消す決定の確定
三 更生計画不認可の決定の確定
四 更生手続廃止の決定の確定
五 更生手続終結の決定
第二節 更生計画認可前の更生手続の終了
第一款 更生計画不認可の決定
(不認可の決定が確定した場合の更生債権者表等の記載の効力)
第二百三十五条 更生計画不認可の決定が確定したときは、確定した更生債権等については、更生債権者表又は更生担保権者表の記載は、更生会社であった株式会社に対し、確定判決と同一の効力を有する。この場合においては、更生債権者等は、確定した更生債権等について、当該株式会社に対し、更生債権者表又は更生担保権者表の記載により強制執行をすることができる。
2 前項の規定は、同項に規定する株式会社が第百四十七条第二項、第百四十八条第四項又は第百四十九条第三項後段の規定による異議を述べた場合には、適用しない。
第二款 更生計画認可前の更生手続の廃止
(更生が困難な場合の更生手続廃止)
第二百三十六条 次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、職権で、更生手続廃止の決定をしなければならない。
一 決議に付するに足りる更生計画案の作成の見込みがないことが明らかになったとき。
二 裁判所の定めた期間若しくはその伸長した期間内に更生計画案の提出がないとき、又はその期間内に提出されたすべての更生計画案が決議に付するに足りないものであるとき。
三 更生計画案が否決されたとき、又は第百九十八条第一項本文の規定により関係人集会の続行期日が定められた場合において、同条第二項及び第三項の規定に適合する期間内に更生計画案が可決されないとき。
(更生手続開始原因が消滅した場合の更生手続廃止)
第二百三十七条 第百三十八条第一項に規定する債権届出期間の経過後更生計画認可の決定前において、第十七条第一項に規定する更生手続開始の原因となる事実のないことが明らかになったときは、裁判所は、管財人、更生会社又は届出をした更生債権者等の申立てにより、更生手続廃止の決定をしなければならない。
2 前項の申立てをするときは、同項に規定する更生手続開始の原因となる事実がないことを疎明しなければならない。
(更生手続廃止の公告等)
第二百三十八条 裁判所は、前二条の規定による更生手続廃止の決定をしたときは、直ちに、その主文及び理由の要旨を公告しなければならない。
2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3 第二百二条第三項の規定は、前項の即時抗告並びにこれについての決定に対する第十三条において準用する民事訴訟法第三百三十六条の規定による抗告及び同法第三百三十七条の規定による抗告の許可の申立てについて準用する。
4 前二条の規定による更生手続廃止の決定を取り消す決定が確定したときは、更生手続廃止の決定をした裁判所は、直ちに、その旨を公告しなければならない。
5 第一項の決定は、確定しなければその効力を生じない。
6 第二百三十五条の規定は、前二条の規定による更生手続廃止の決定が確定した場合について準用する。
第三節 更生計画認可後の更生手続の終了
第一款 更生手続の終結
(更生手続終結の決定)
第二百三十九条 次に掲げる場合には、裁判所は、管財人の申立てにより又は職権で、更生手続終結の決定をしなければならない。
一 更生計画が遂行された場合
二 更生計画の定めによって認められた金銭債権の総額の三分の二以上の額の弁済がされた時において、当該更生計画に不履行が生じていない場合。ただし、裁判所が、当該更生計画が遂行されないおそれがあると認めたときは、この限りでない。
三 更生計画が遂行されることが確実であると認められる場合(前号に該当する場合を除く。)
2 裁判所は、更生手続終結の決定をしたときは、その主文及び理由の要旨を公告しなければならない。
(更生手続終結後の更生債権者表等の記載の効力)
第二百四十条 更生手続終結の後においては、更生債権者等は、更生債権等に基づき更生計画の定めによって認められた権利について、更生会社であった株式会社及び更生会社の事業の更生のために債務を負担した者に対して、更生債権者表又は更生担保権者表の記載により強制執行をすることができる。ただし、民法第四百五十二条及び第四百五十三条の規定の適用を妨げない。
第二款 更生計画認可後の更生手続の廃止
第二百四十一条 更生計画認可の決定があった後に更生計画が遂行される見込みがないことが明らかになったときは、裁判所は、管財人の申立てにより又は職権で、更生手続廃止の決定をしなければならない。
2 前項の規定による更生手続の廃止の決定は、確定しなければその効力を生じない。
3 第一項の規定による更生手続の廃止は、更生計画の遂行及びこの法律の規定によって生じた効力に影響を及ぼさない。
4 第二百三十八条第一項から第三項までの規定は第一項の規定による更生手続廃止の決定をした場合について、同条第四項の規定は当該決定を取り消す決定が確定した場合について、前条の規定は第一項の規定による更生手続廃止の決定が確定した場合について、それぞれ準用する。
第十章 外国倒産処理手続がある場合の特則
(外国管財人との協力)
第二百四十二条 管財人は、更生会社についての外国倒産処理手続(外国で開始された手続であって、破産手続又は再生手続に相当するものをいう。以下同じ。)がある場合には、当該外国倒産処理手続における外国管財人(外国倒産処理手続において株式会社の財産の管理及び処分をする権利を有する者をいう。以下同じ。)に対し、更生会社の更生のために必要な協力及び情報の提供を求めることができる。
2 前項に規定する場合には、管財人は、同項の外国管財人に対し、更生会社の更生のために必要な協力及び情報の提供をするよう努めるものとする。
(更生手続の開始原因の推定)
第二百四十三条 株式会社についての外国倒産処理手続がある場合には、当該株式会社に第十七条第一項に規定する更生手続開始の原因となる事実があるものと推定する。
(外国管財人の権限等)
第二百四十四条 外国管財人は、株式会社に第十七条第一項第一号に掲げる場合に該当する事実があるときは、当該株式会社について更生手続開始の申立てをすることができる。
2 第二百四十二条第一項に規定する場合には、同項の外国管財人は、更生会社の更生手続において、関係人集会に出席し、意見を述べることができる。
3 第二百四十二条第一項に規定する場合には、同項の外国管財人は、更生会社の更生手続において、第百八十四条第一項に規定する期間(同条第四項の規定により期間が伸長されたときは、その伸長された期間)内に、更生計画案を作成して裁判所に提出することができる。
4 第一項の規定により外国管財人が更生手続開始の申立てをした場合において、包括的禁止命令又はこれを変更し、若しくは取り消す旨の決定があったときはその主文を、更生手続開始の決定があったときは第四十三条第一項の規定により公告すべき事項を、同項第二号又は第三号に掲げる事項に変更を生じたときはその旨を、更生手続開始の決定を取り消す決定が確定したときはその主文を、それぞれ外国管財人に通知しなければならない。
(相互の手続参加)
第二百四十五条 外国管財人は、届出をしていない更生債権者等であって、更生会社についての外国倒産処理手続に参加しているものを代理して、更生会社の更生手続に参加することができる。ただし、当該外国の法令によりその権限を有する場合に限る。
2 管財人は、届出をした更生債権者等であって、更生会社についての外国倒産処理手続に参加していないものを代理して、当該外国倒産処理手続に参加することができる。
3 管財人は、前項の規定による参加をした場合には、同項の規定により代理した更生債権者等のために、外国倒産処理手続に属する一切の行為をすることができる。ただし、届出の取下げ、和解その他の更生債権者等の権利を害するおそれがある行為をするには、当該更生債権者等の授権がなければならない。
第十一章 更生手続と他の倒産処理手続との間の移行等
第一節 破産手続から更生手続への移行
(破産管財人による更生手続開始の申立て)
第二百四十六条 破産管財人は、破産者である株式会社に第十七条第一項に規定する更生手続開始の原因となる事実があるときは、裁判所(破産事件を取り扱う一人の裁判官又は裁判官の合議体をいう。以下この条において同じ。)の許可を得て、当該株式会社について更生手続開始の申立てをすることができる。
2 裁判所は、更生手続によることが債権者の一般の利益に適合すると認める場合に限り、前項の許可をすることができる。
3 裁判所は、第一項の許可の申立てがあった場合には、当該申立てを却下すべきこと又は当該許可をすべきことが明らかである場合を除き、当該申立てについての決定をする前に、労働組合等(当該株式会社の使用人の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、当該株式会社の使用人の過半数で組織する労働組合がないときは当該株式会社の使用人の過半数を代表する者をいう。)の意見を聴かなければならない。
4 第一項の規定による更生手続開始の申立てについては、第二十条第一項の規定は、適用しない。
(更生債権の届出を要しない旨の決定)
第二百四十七条 裁判所は、更生手続開始の決定をする場合において、第五十条第一項の規定により中止することとなる破産手続において届出があった破産債権の内容及び原因、破産法第百二十五条第一項本文に規定する異議等のある破産債権の数、当該破産手続における配当の有無その他の事情を考慮して相当と認めるときは、当該決定と同時に、更生債権であって当該破産手続において破産債権としての届出があったもの(同法第九十七条第四号に規定する租税等の請求権及び同条第六号に規定する罰金等の請求権を除く。以下この条において同じ。)を有する更生債権者は当該更生債権の届出をすることを要しない旨の決定をすることができる。
2 裁判所は、前項の規定による決定をしたときは、第四十三条第一項の規定による公告に、更生債権であって前項の破産手続において破産債権としての届出があったものを有する更生債権者は当該更生債権の届出をすることを要しない旨を掲げ、かつ、その旨を知れている更生債権者に通知しなければならない。
3 第一項の規定による決定があった場合には、同項の破産手続において破産債権としての届出があった債権については、当該破産債権としての届出をした者(当該破産手続において当該届出があった債権について届出名義の変更を受けた者がある場合にあっては、その者。第五項において同じ。)が、第百三十八条第一項に規定する債権届出期間の初日に、更生債権の届出をしたものとみなす。
4 前項の場合においては、当該破産債権としての届出があった債権についての次の各号に掲げる事項の届出の区分に応じ、更生債権の届出としてそれぞれ当該各号に定める事項の届出をしたものとみなす。
一 破産法第九十九条第一項に規定する劣後的破産債権である旨の届出があった債権についての同法第百十一条第一項第一号に掲げる破産債権の額(同条第二項第二号に掲げる別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額の届出があった破産債権にあっては、当該債権の額。次号において同じ。)及び原因の届出 第百三十八条第一項第一号に掲げる更生債権の内容としての額及び同号に掲げる更生債権の原因の届出
二 当該破産債権としての届出があった債権のうち前号に掲げる債権以外のものについての破産法第百十一条第一項第一号に掲げる破産債権の額及び原因の届出 第百三十八条第一項第一号に掲げる更生債権の内容としての額及び同項第三号に掲げる更生債権についての議決権の額並びに同項第一号に掲げる更生債権の原因の届出
三 破産法第九十八条第一項に規定する優先的破産債権である旨の届出があった債権についての同法第百十一条第一項第二号に掲げるその旨の届出 第百三十八条第一項第二号に掲げる一般の優先権がある債権である旨の届出
四 破産法第九十九条第二項に規定する約定劣後破産債権である旨の届出があった債権についての同法第百十一条第一項第三号に掲げるその旨の届出 第百三十八条第一項第二号に掲げる約定劣後更生債権である旨の届出
5 前二項の規定は、当該破産債権としての届出をした者が第百三十八条第一項に規定する債権届出期間内に更生債権の届出をした場合には、当該破産債権としての届出をした者が有する第三項の破産債権としての届出があった債権については、適用しない。
第二節 再生手続から更生手続への移行
(再生手続における管財人による更生手続開始の申立て)
第二百四十八条 再生手続における管財人は、再生債務者である株式会社に第十七条第一項に規定する更生手続開始の原因となる事実があるときは、裁判所(再生事件を取り扱う一人の裁判官又は裁判官の合議体をいう。以下この条において同じ。)の許可を得て、当該株式会社について更生手続開始の申立てをすることができる。
2 裁判所は、更生手続によることが債権者の一般の利益に適合すると認める場合に限り、前項の許可をすることができる。
3 裁判所は、第一項の許可の申立てがあった場合には、当該申立てを却下すべきこと又は当該許可をすべきことが明らかである場合を除き、当該申立てについての決定をする前に、第二百四十六条第三項に規定する労働組合等の意見を聴かなければならない。
4 第一項の規定による更生手続開始の申立てについては、第二十条第一項の規定は、適用しない。
(更生債権の届出を要しない旨の決定)
第二百四十九条 裁判所は、更生手続開始の決定をする場合において、第五十条第一項の規定により中止することとなる再生手続において届出があった再生債権の内容及び原因、民事再生法第百五条第一項本文に規定する異議等のある再生債権の数、再生計画による権利の変更の有無及び内容その他の事情を考慮して相当と認めるときは、当該決定と同時に、更生債権であって当該再生手続において再生債権としての届出があったもの(同法第九十七条第一号に規定する再生手続開始前の罰金等を除く。以下この条において同じ。)を有する更生債権者は当該更生債権の届出をすることを要しない旨の決定をすることができる。
2 裁判所は、前項の規定による決定をしたときは、第四十三条第一項の規定による公告に、更生債権であって前項の再生手続において再生債権としての届出があったものを有する更生債権者は当該更生債権の届出をすることを要しない旨を掲げ、かつ、その旨を知れている更生債権者に通知しなければならない。
3 第一項の規定による決定があった場合には、同項の再生手続において再生債権としての届出があった債権については、当該再生債権としての届出をした者(当該再生手続において当該届出があった債権について届出名義の変更を受けた者がある場合にあっては、その者。第五項において同じ。)が、第百三十八条第一項に規定する債権届出期間の初日に、更生債権の届出をしたものとみなす。
4 前項の場合においては、当該再生債権としての届出があった債権についての次の各号に掲げる事項の届出の区分に応じ、更生債権の届出としてそれぞれ当該各号に定める事項の届出をしたものとみなす。
一 民事再生法第九十四条第二項に規定する別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額の届出があった債権についての当該債権の額並びに同条第一項に規定する再生債権の原因及び議決権の額の届出 第百三十八条第一項第一号に掲げる更生債権の内容としての額並びに同号に掲げる更生債権の原因及び同項第三号に掲げる更生債権についての議決権の額の届出
二 当該再生債権としての届出があった債権のうち前号に掲げる債権以外のものについての民事再生法第九十四条第一項に規定する再生債権の内容及び原因並びに議決権の額の届出 第百三十八条第一項第一号に掲げる更生債権の内容及び原因並びに同項第三号に掲げる更生債権についての議決権の額の届出
三 民事再生法第三十五条第四項に規定する約定劣後再生債権である旨の届出があった債権についての民事再生法第九十四条第一項に規定するその旨の届出 第百三十八条第一項第二号に掲げる約定劣後更生債権である旨の届出
5 前二項の規定は、当該再生債権としての届出をした者が第百三十八条第一項に規定する債権届出期間内に更生債権の届出をした場合には、当該再生債権としての届出をした者が有する第三項の再生債権としての届出があった債権については、適用しない。
第三節 更生手続から破産手続への移行
(更生手続開始の決定があった場合の破産事件の移送)
第二百五十条 裁判所(破産事件を取り扱う一人の裁判官又は裁判官の合議体をいう。)は、破産手続開始の前後を問わず、同一の債務者につき更生手続開始の決定があった場合において、当該破産事件を処理するために相当であると認めるときは、職権で、当該破産事件を更生裁判所に移送することができる。
(更生手続終了前の破産手続開始の申立て等)
第二百五十一条 破産手続開始前の更生会社について更生手続開始の決定の取消し、更生手続廃止又は更生計画不認可の決定があった場合には、第五十条第一項の規定にかかわらず、当該決定の確定前においても、更生裁判所に当該更生会社についての破産手続開始の申立てをすることができる。破産手続開始後の更生会社について更生計画認可の決定により破産手続が効力を失った後に第二百四十一条第一項の規定による更生手続廃止の決定があった場合も、同様とする。
2 前項前段の規定は、同項前段に規定する更生会社について既に開始された再生手続がある場合については、適用しない。
3 第一項の規定による破産手続開始の申立てに係る破産手続開始の決定は、同項前段に規定する決定又は同項後段の更生手続廃止の決定が確定した後でなければ、することができない。
(更生手続の終了に伴う職権による破産手続開始の決定)
第二百五十二条 破産手続開始前の株式会社について第二百三十四条第一号から第四号までに掲げる事由のいずれかが生じた場合において、裁判所は、当該株式会社に破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、職権で、破産法に従い、破産手続開始の決定をすることができる。ただし、当該株式会社について既に開始された再生手続がある場合は、この限りでない。
2 破産手続開始後の更生会社について更生計画認可の決定により破産手続が効力を失った後に第二百四十一条第一項の規定による更生手続廃止の決定が確定した場合には、裁判所は、職権で、破産法に従い、破産手続開始の決定をしなければならない。ただし、前条第一項後段の規定による破産手続開始の申立てに基づいて破産手続開始の決定をする場合は、この限りでない。
(更生手続の終了等に伴う破産手続開始前の保全処分等)
第二百五十三条 裁判所は、次に掲げる場合において、必要があると認めるときは、職権で、破産法第二十四条第一項の規定による中止の命令、同法第二十五条第二項に規定する包括的禁止命令、同法第二十八条第一項の規定による保全処分、同法第九十一条第二項に規定する保全管理命令又は同法第百七十一条第一項の規定による保全処分(以下この条及び第二百五十六条第四項において「保全処分等」という。)を命ずることができる。
一 破産手続開始前の株式会社につき更生手続開始の申立ての棄却の決定があった場合
二 破産手続開始前の更生会社につき更生手続開始の決定の取消し、更生手続廃止又は更生計画不認可の決定が確定した場合
三 破産手続開始後の更生会社につき更生計画認可の決定により破産手続が効力を失った後に第二百四十一条第一項の規定による更生手続廃止の決定が確定した場合
2 裁判所は、前項第一号又は第二号の規定による保全処分等を命じた場合において、前条第一項本文の規定による破産手続開始の決定をしないこととしたときは、遅滞なく、当該保全処分等を取り消さなければならない。
3 第一項第一号の規定による保全処分等は、同号に規定する決定を取り消す決定があったときは、その効力を失う。
4 破産法第二十四条第四項、第二十五条第六項、第二十八条第三項、第九十一条第五項及び第百七十一条第四項の規定にかかわらず、第二項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができない。
(更生手続の終了に伴う破産手続における破産法の適用関係)
第二百五十四条 破産手続開始前の株式会社に関する次に掲げる場合における破産法の関係規定(破産法第七十一条第一項第四号並びに第二項第二号及び第三号、第七十二条第一項第四号並びに第二項第二号及び第三号、第百六十条(第一項第一号を除く。)、第百六十二条(第一項第二号を除く。)、第百六十三条第二項、第百六十四条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第百六十六条並びに第百六十七条第二項(同法第百七十条第二項において準用する場合を含む。)の規定をいう。第三項において同じ。)の適用については、更生手続開始の申立て等(更生手続開始の申立て、更生手続開始によって効力を失った特別清算の手続における特別清算開始の申立て、更生計画認可の決定により効力を失った再生手続における再生手続開始の申立て又は破産法第二百六十五条の罪に該当することとなる当該株式会社の取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者の行為をいう。以下この項において同じ。)は、当該更生手続開始の申立て等の前に破産手続開始の申立てがないときに限り、破産手続開始の申立てとみなす。
一 第二百五十二条第一項本文の規定による破産手続開始の決定があった場合
二 更生手続開始の申立ての棄却の決定の確定前にされた破産手続開始の申立てに基づき、当該決定の確定後に破産手続開始の決定があった場合
三 更生手続開始の決定前にされた破産手続開始の申立てに基づき、第二百三十四条第二号若しくは第三号に掲げる事由の発生後又は第二百三十六条若しくは第二百三十七条第一項の規定による更生手続廃止の決定の確定後に、破産手続開始の決定があった場合
四 第二百五十一条第一項前段の規定による破産手続開始の申立てに基づき、破産手続開始の決定があった場合
2 更生計画不認可又は更生手続廃止の決定の確定による更生手続の終了に伴い前項各号に規定する破産手続開始の決定があった場合における破産法第百七十六条前段の規定の適用については、次に掲げる決定の日を同条前段の破産手続開始の日とみなす。
一 更生手続開始の決定
二 更生計画認可の決定により効力を失った再生手続における再生手続開始の決定
3 破産手続開始後の更生会社について第二百五十一条第一項後段の規定による破産手続開始の申立てに基づいて破産手続開始の決定があった場合又は第二百五十二条第二項の規定による破産手続開始の決定があった場合における破産法の関係規定の適用については、更生計画認可の決定によって効力を失った破産手続における破産手続開始の申立てがあった時に破産手続開始の申立てがあったものとみなす。
4 前項に規定する破産手続開始の決定があった場合における破産法第百七十六条前段の規定の適用については、更生計画認可の決定によって効力を失った破産手続における破産手続開始の日を同条前段の破産手続開始の日とみなす。
5 第一項各号又は第三項に規定する破産手続開始の決定があった場合における破産法第百四十八条第一項第三号の規定の適用については、同号中「包括的禁止命令」とあるのは「包括的禁止命令若しくは会社更生法第二十五条第二項に規定する包括的禁止命令」と、「期間がある」とあるのは「期間又は同法第五十条第二項の規定により国税滞納処分をすることができない期間がある」とする。
6 前項に規定する破産手続開始の決定があった場合には、共益債権(更生手続が開始されなかった場合における第六十二条第二項並びに第百二十八条第一項及び第四項に規定する請求権を含む。第二百五十七条において同じ。)は、財団債権とする。破産手続開始後の株式会社について第二百三十四条第一号から第三号までに掲げる事由の発生又は第二百三十六条若しくは第二百三十七条第一項の規定による更生手続廃止の決定の確定によって破産手続が続行された場合も、同様とする。
(破産債権の届出を要しない旨の決定)
第二百五十五条 裁判所(破産事件を取り扱う一人の裁判官又は裁判官の合議体をいう。次項において同じ。)は、前条第一項各号又は第三項に規定する破産手続開始の決定をする場合において、終了した更生手続において届出があった更生債権等の内容及び原因並びに議決権の額、第百五十一条第一項本文に規定する異議等のある更生債権等の数、更生計画による権利の変更の有無及び内容その他の事情を考慮して相当と認めるときは、当該決定と同時に、破産債権であって当該更生手続において更生債権等としての届出があったもの(租税等の請求権及び第百四十二条第二号に規定する更生手続開始前の罰金等の請求権を除く。以下この条において同じ。)を有する破産債権者は当該破産債権の届出をすることを要しない旨の決定をすることができる。
2 裁判所は、前項の規定による決定をしたときは、破産法第三十二条第一項の規定による公告に、破産債権であって前項の更生手続において更生債権等としての届出があったものを有する破産債権者は当該破産債権の届出をすることを要しない旨を掲げ、かつ、その旨を知れている破産債権者に通知しなければならない。
3 第一項の規定による決定があった場合には、同項の更生手続において更生債権等としての届出があった債権については、当該更生債権等としての届出をした者(当該更生手続において当該届出があった債権について届出名義の変更を受けた者がある場合にあっては、その者。第六項において同じ。)が、破産法第百十一条第一項に規定する債権届出期間の初日に、破産債権の届出(同項第四号に掲げる事項の届出を含む。)をしたものとみなす。
4 前項の場合においては、当該更生債権等としての届出があった債権についての次の各号に掲げる事項の届出の区分に応じ、破産債権の届出としてそれぞれ当該各号に定める事項の届出をしたものとみなす。
一 第百三十六条第一項第三号ロからニまでに掲げる債権についての第百三十八条第一項第三号又は第二項第三号に掲げる更生債権等についての議決権の額及び同条第一項第一号又は第二項第一号に掲げる更生債権等の原因の届出 破産法第百十一条第一項第一号に掲げる破産債権の額及び原因の届出
二 更生債権等としての届出があった債権のうち前号に掲げる債権以外のものについての第百三十八条第一項第一号又は第二項第一号に掲げる更生債権等の内容としての額及び同条第一項第一号又は第二項第一号に掲げる更生債権等の原因の届出 破産法第百十一条第一項第一号に掲げる破産債権の額及び原因の届出
三 第百三十六条第一項第一号、第二号又は第三号イに掲げる債権についての第百三十八条第一項第一号又は第二項第一号に掲げる更生債権等の内容としての額及び同条第一項第三号又は第二項第三号に掲げる更生債権等についての議決権の額の届出 届出があった更生債権等の内容としての額から届出があった更生債権等についての議決権の額を控除した額に係る部分につき破産法第百十一条第一項第三号に掲げる劣後的破産債権である旨の届出
四 第百三十六条第二項第一号から第三号までに掲げる債権についての第百三十八条第一項第一号又は第二項第一号に掲げる更生債権等の内容の届出 破産法第百十一条第一項第三号に掲げる劣後的破産債権である旨の届出
五 一般の優先権がある債権である旨の届出があった債権についての第百三十八条第一項第二号に掲げるその旨の届出 破産法第百十一条第一項第二号に掲げる優先的破産債権である旨の届出
六 約定劣後更生債権である旨の届出があった債権についての第百三十八条第一項第二号に掲げるその旨の届出 破産法第百十一条第一項第三号に掲げる約定劣後破産債権である旨の届出
七 更生手続開始当時更生会社の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権及び商法又は会社法の規定による留置権に限る。次項において同じ。)の被担保債権である更生債権についての第百三十八条第一項第三号に掲げる議決権の額の届出 破産法第百十一条第二項第二号に掲げる別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額の届出
5 前二項の場合においては、更生手続開始当時更生会社の財産につき存する担保権の被担保債権であって更生債権としての届出及び更生担保権としての届出の双方の届出があったものについて届出をしたものとみなされる破産債権の額は、前項の規定により当該更生債権及び当該更生担保権のそれぞれについて破産債権の額として届出をしたものとみなされる額を合算したものとする。
6 前三項の規定は、当該更生債権等としての届出をした者が破産法第百十一条第一項に規定する債権届出期間内に破産債権の届出をした場合には、当該更生債権等としての届出をした者が有する第三項の更生債権等としての届出があった債権については、適用しない。
(否認の請求を認容する決定に対する異議の訴え等の取扱い)
第二百五十六条 第二百三十四条第三号又は第四号に掲げる事由が生じた場合において、第二百五十四条第一項各号又は第三項に規定する破産手続開始の決定があったときは、第五十二条第四項の規定により中断した第九十七条第一項の訴えに係る訴訟手続は、破産管財人においてこれを受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
2 前項の場合においては、相手方の管財人に対する訴訟費用請求権は、財団債権とする。
3 第一項の場合において、第五十二条第四項の規定により中断した第九十七条第一項の訴えに係る訴訟手続について第一項の規定による受継があるまでに破産手続が終了したときは、当該訴訟手続は、終了する。
4 第五十二条第四項の規定により中断した第九十七条第一項の訴えに係る訴訟手続であって破産手続開始前の株式会社についての更生事件に係るものは、その中断の日から一月(その期間中に第二百五十三条第一項第一号若しくは第二号の規定による保全処分等又は第二百五十四条第二項各号に掲げる破産手続開始の申立てに係る破産手続における保全処分等がされていた期間があるときは、当該期間を除く。)以内に第二百五十四条第一項各号に規定する破産手続開始の決定がされていないときは、終了する。
5 第百六十三条第一項の規定により引き続き係属するものとされる第百五十一条第一項本文に規定する更生債権等査定申立ての手続及び第百五十三条第一項に規定する価額決定の申立ての手続は、第二百五十四条第一項各号又は第三項に規定する破産手続開始の決定があったときは、終了するものとする。この場合においては、第百六十三条第三項の規定は、適用しない。
6 第四項の規定は、第百六十三条第四項の規定により中断した第百五十二条第一項に規定する更生債権等査定異議の訴えに係る訴訟手続であって破産手続開始前の株式会社についての更生事件に係るものについて準用する。
第四節 更生手続の終了に伴う再生手続の続行
第二百五十七条 株式会社について再生事件が係属している場合において、第二百三十四条第一号から第三号までに掲げる事由の発生又は第二百三十六条若しくは第二百三十七条第一項の規定による更生手続廃止の決定の確定によって再生手続が続行されたときは、共益債権は、再生手続における共益債権とする。
第十二章 雑則
(更生会社についての登記の嘱託等)
第二百五十八条 更生手続開始の決定があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、更生手続開始の登記を更生会社の本店(外国に本店があるときは、日本における営業所。第四項及び次条第一項において同じ。)の所在地の登記所に嘱託しなければならない。
2 前項の登記には、管財人の氏名又は名称及び住所、管財人がそれぞれ単独にその職務を行うことについて第六十九条第一項ただし書の許可があったときはその旨並びに管財人が職務を分掌することについて同項ただし書の許可があったときはその旨及び各管財人が分掌する職務の内容をも登記しなければならない。
3 第一項の規定は、前項に規定する事項に変更が生じた場合について準用する。
4 開始前会社について保全管理命令又は監督命令がされたときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、保全管理命令又は監督命令の登記を開始前会社の本店の所在地の登記所に嘱託しなければならない。
5 前項の登記には、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める事項をも登記しなければならない。
一 前項に規定する保全管理命令の登記 保全管理人の氏名又は名称及び住所、保全管理人がそれぞれ単独にその職務を行うことについて第三十四条第一項において準用する第六十九条第一項ただし書の許可があったときはその旨並びに保全管理人が職務を分掌することについて第三十四条第一項において準用する第六十九条第一項ただし書の許可があったときはその旨及び各保全管理人が分掌する職務の内容
二 前項に規定する監督命令の登記 監督委員の氏名又は名称及び住所並びに第三十五条第二項の規定により指定された行為
6 第四項の規定は、同項に規定する裁判の変更若しくは取消しがあった場合又は前項に規定する事項に変更が生じた場合について準用する。
7 第一項の規定は、更生計画認可の決定があった場合又は第二百三十四条第二号から第五号までに掲げる事由が生じた場合について準用する。
8 登記官は、第一項の規定により更生手続開始の登記をする場合において、更生会社について特別清算開始の登記があるときは、職権で、その登記を抹消しなければならない。
9 登記官は、第七項の規定により更生手続開始の決定の取消しの登記をする場合において、前項の規定により抹消した登記があるときは、職権で、その登記を回復しなければならない。
10 第八項の規定は更生計画認可の登記をする場合における破産手続開始又は再生手続開始の登記について、前項の規定は更生計画認可の決定を取り消す決定が確定した場合におけるこの項において準用する第八項の規定により抹消した登記について、それぞれ準用する。
第二百五十九条 第七十二条第四項前段の規定により更生会社の機関がその権限を回復したときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、その旨の登記を更生会社の本店の所在地の登記所に嘱託しなければならない。
2 前項の規定は、第七十二条第四項前段の規定による更生計画の定め又は裁判所の決定が取り消された場合について準用する。
(登記のある権利についての登記の嘱託等)
第二百六十条 次に掲げる場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、当該保全処分の登記を嘱託しなければならない。
一 開始前会社に属する権利で登記がされたものに関し第二十八条第一項(第四十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定による保全処分があったとき。
二 登記のある権利に関し第三十九条の二第一項若しくは第四十条第一項(これらの規定を第四十四条第二項において準用する場合を含む。)又は第九十九条第一項の規定による保全処分があったとき。
2 前項の規定は、同項に規定する保全処分の変更若しくは取消しがあった場合又は当該保全処分が効力を失った場合について準用する。
3 裁判所書記官は、更生手続開始の決定があった場合において、更生会社に属する権利で登記がされたものについて会社法第九百三十八条第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)の規定による登記があることを知ったときは、職権で、遅滞なく、その登記の抹消を嘱託しなければならない。
4 前項の規定による登記の抹消がされた場合において、更生手続開始の決定を取り消す決定が確定したときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、同項の規定により抹消された登記の回復を嘱託しなければならない。
(更生計画の遂行等に関する登記の嘱託等)
第二百六十一条 第二百五十八条第一項の規定は、更生計画の遂行又はこの法律の規定により更生手続終了前に更生会社又は更生計画の定めにより設立される会社について登記すべき事項が生じた場合について準用する。この場合において、会社法第九百三十条第二項各号に掲げる事項について登記すべき事項が生じたときは、第二百五十八条第一項中「の本店」とあるのは、「の本店及び支店」と読み替えるものとする。
2 更生会社が他の会社と合併をする場合において、裁判所書記官が次に掲げる登記を嘱託するときは、合併の相手方である他の会社の解散の登記をも嘱託しなければならない。
一 吸収合併後存続する更生会社の吸収合併による変更の登記
二 新設合併により設立する会社の新設合併による設立の登記
3 第一項の規定は、他の会社が更生会社と吸収合併をして吸収合併後存続する場合における更生会社の解散の登記については、適用しない。
4 更生会社が他の会社と吸収分割をする場合において、裁判所書記官が更生会社の吸収分割による変更の登記を嘱託するときは、当該他の会社の吸収分割による変更の登記をも嘱託しなければならない。
5 更生会社が他の会社と共同して新設分割をする場合において、裁判所書記官が新設分割による設立の登記を嘱託するときは、当該他の会社の新設分割による変更の登記をも嘱託しなければならない。
6 前条第一項の規定は、更生計画の遂行により更生手続終了前に登記のある権利の得喪又は変更が生じた場合について準用する。ただし、更生会社、更生債権者等、株主及び更生計画の定めにより設立される会社以外の者を権利者とする登記については、この限りでない。
(否認の登記)
第二百六十二条 登記の原因である行為が否認されたときは、管財人は、否認の登記を申請しなければならない。登記が否認されたときも、同様とする。
2 登記官は、前項の否認の登記に係る権利に関する登記をするときは、職権で、次に掲げる登記を抹消しなければならない。
一 当該否認の登記
二 否認された行為を登記原因とする登記又は否認された登記
三 前号の登記に後れる登記があるときは、当該登記
3 前項に規定する場合において、否認された行為の後否認の登記がされるまでの間に、同項第二号に掲げる登記に係る権利を目的とする第三者の権利に関する登記(更生手続の関係において、その効力を主張することができるものに限る。第五項において同じ。)がされているときは、同項の規定にかかわらず、登記官は、職権で、当該否認の登記の抹消及び同号に掲げる登記に係る権利の更生会社への移転の登記をしなければならない。
4 裁判所書記官は、第一項の否認の登記がされている場合において、更生会社について、更生計画認可の決定が確定したときは、職権で、遅滞なく、当該否認の登記の抹消を嘱託しなければならない。
5 前項に規定する場合において、裁判所書記官から当該否認の登記の抹消の嘱託を受けたときは、登記官は、職権で、第二項第二号及び第三号に掲げる登記を抹消しなければならない。この場合において、否認された行為の後否認の登記がされるまでの間に、同項第二号に掲げる登記に係る権利を目的とする第三者の権利に関する登記がされているときは、登記官は、職権で、同項第二号及び第三号に掲げる登記の抹消に代えて、同項第二号に掲げる登記に係る権利の更生会社への移転の登記をしなければならない。
6 裁判所書記官は、第一項の否認の登記がされている場合において、更生会社について、第二百三十四条第二号若しくは第三号に掲げる事由が生じ、又は第二百三十六条若しくは第二百三十七条第一項の規定による更生手続廃止の決定が確定したときは、職権で、遅滞なく、当該否認の登記の抹消を嘱託しなければならない。
(登記嘱託書等の添付書面等)
第二百六十三条 この法律の規定による登記の嘱託情報若しくは申請情報と併せて提供することが必要な情報又は嘱託書若しくは申請書に添付すべき書面その他のものは、政令で定める。
(登録免許税の特例)
第二百六十四条 第二百五十八条から第二百六十条まで及び第二百六十二条の規定による登記については、登録免許税を課さない。
2 更生計画において更生会社が株式を発行することを定めた場合(次項、第五項及び第六項に該当する場合を除く。)における資本金の増加の登記の登録免許税の税率は、登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)第九条の規定にかかわらず、千分の一(増加した資本金の額のうち、更生債権者等又は株主に対し新たに払込み又は給付をさせないで株式を発行する部分に相当する金額以外の金額に対応する部分については、千分の三・五)とする。
3 更生計画において更生会社が株式交換をすることを定めた場合における株式交換による資本金の増加の登記の登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の一(株式交換により増加した資本金の額のうち、更生債権者等又は株主に株式又は持分を交付する部分に相当する金額以外の金額に対応する部分については、千分の三・五)とする。
4 更生計画において更生会社が株式移転をすることを定めた場合における当該株式移転による株式会社の設立の登記の登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の一(資本金の額のうち、更生債権者等又は株主に株式を交付する部分に相当する金額以外の金額に対応する部分については、千分の三・五)とする。
5 更生計画において更生会社が新設分割又は吸収分割をすることを定めた場合における当該新設分割又は吸収分割による株式会社若しくは合同会社の設立又は資本金の増加の登記の登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の三・五とする。
6 更生計画において更生会社が新設合併若しくは吸収合併又は組織変更をすることを定めた場合における当該新設合併若しくは組織変更による株式会社若しくは合同会社の設立又は吸収合併による資本金の増加の登記の登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の一(それぞれ資本金の額又は吸収合併により増加した資本金の額のうち、同法別表第一第二十四号(一)ホ又はヘの税率欄に規定する部分に相当する金額(更生債権者等に株式又は持分を交付する部分に相当する金額を除く。)に対応する部分については、千分の三・五)とする。
7 更生計画の定めに基づき第二百二十五条第一項に規定する新会社を設立することを定めた場合における新会社の設立の登記の登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の一(資本金の額のうち、更生債権者等又は株主に対し新たに払込み又は給付をさせないで株式を発行する部分に相当する金額以外の金額に対応する部分については、千分の三・五)とする。
8 更生計画において当該更生計画の定めに基づき設立された株式会社が更生会社から不動産又は船舶に関する権利の移転又は設定を受けることを定めた場合におけるその移転又は設定の登記の登録免許税の税率は、登録免許税法第九条及び租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第七十二条の規定にかかわらず、不動産に関する権利に係る登記にあっては千分の一・五(登録免許税法別表第一第一号(五)から(七)までに掲げる登記にあっては、千分の四)とし、船舶に関する権利に係る登記にあっては千分の四とする。ただし、これらの登記につきこれらの税率を適用して計算した登録免許税の額がこれらの規定を適用して計算した登録免許税の額を超えるときは、この限りでない。
(準用)
第二百六十五条 第二百六十条、第二百六十一条第六項、第二百六十二条、第二百六十三条及び前条第一項の規定は、登録のある権利について準用する。
第十三章 罰則
(詐欺更生罪)
第二百六十六条 更生手続開始の前後を問わず、債権者、担保権者(株式会社の財産につき特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権を有する者をいう。以下この章において同じ。)又は株主を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、株式会社について更生手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、更生手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一 株式会社の財産を隠匿し、又は損壊する行為
二 株式会社の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 株式会社の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 株式会社の財産を債権者、担保権者若しくは株主の不利益に処分し、又は債権者、担保権者若しくは株主に不利益な債務を株式会社が負担する行為
2 前項に規定するもののほか、株式会社について更生手続開始の決定がされ、又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者、担保権者又は株主を害する目的で、管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その株式会社の財産を取得し、又は第三者に取得させた者も、同項と同様とする。
(特定の債権者等に対する担保の供与等の罪)
第二百六十七条 株式会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、更生手続開始の前後を問わず、その株式会社の業務に関し、特定の債権者又は担保権者に対するその株式会社の債務について、他の債権者又は担保権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であってその株式会社の義務に属せず又はその方法若しくは時期がその株式会社の義務に属しないものをし、株式会社について更生手続開始の決定が確定したときは、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(管財人等の特別背任罪)
第二百六十八条 管財人、管財人代理、保全管理人、保全管理人代理、監督委員又は調査委員が、自己若しくは第三者の利益を図り又は債権者、担保権者若しくは株主に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、債権者、担保権者又は株主に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 管財人、保全管理人、監督委員又は調査委員(以下この項において「管財人等」という。)が法人であるときは、前項の規定は、管財人等の職務を行う役員又は職員に適用する。
(報告及び検査の拒絶等の罪)
第二百六十九条 第七十七条第一項又は第二百九条第三項に規定する者が第七十七条第一項(第三十四条第一項、第三十八条又は第百二十六条において準用する場合を含む。)又は第二百九条第三項の規定による報告を拒み、又は虚偽の報告をしたときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 第七十七条第一項又は第二百九条第三項に規定する者の代表者、代理人、使用人その他の従業者(第四項において「代表者等」という。)が、第七十七条第一項又は第二百九条第三項に規定する者の業務に関し、第七十七条第一項(第三十四条第一項、第三十八条又は第百二十六条において準用する場合を含む。)又は第二百九条第三項の規定による報告を拒み、又は虚偽の報告をしたときも、前項と同様とする。
3 第七十七条第一項に規定する者(同項に規定するこれらの者であった者を除く。)又は第二百九条第三項に規定する者(同項に規定するこれらの者であった者を除く。)が、その更生会社の業務に関し、第七十七条第一項(第三十四条第一項、第三十八条又は第百二十六条において準用する場合を含む。)又は第二百九条第三項の規定による検査を拒んだときも、第一項と同様とする。
4 第七十七条第二項に規定する更生会社の子会社の代表者等が、その更生会社の子会社の業務に関し、同項(第三十四条第一項、第三十八条又は第百二十六条において準用する場合を含む。)の規定による報告若しくは検査を拒み、又は虚偽の報告をしたときも、第一項と同様とする。
(業務及び財産の状況に関する物件の隠滅等の罪)
第二百七十条 更生手続開始の前後を問わず、債権者、担保権者又は株主を害する目的で、株式会社の業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造した者は、株式会社について更生手続開始の決定が確定したときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(管財人等に対する職務妨害の罪)
第二百七十一条 偽計又は威力を用いて、管財人、管財人代理、保全管理人、保全管理人代理、監督委員又は調査委員の職務を妨害した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(収賄罪)
第二百七十二条 管財人、管財人代理、保全管理人、保全管理人代理、監督委員、調査委員又は法律顧問が、その職務に関し、賄賂ろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の場合において、その管財人、管財人代理、保全管理人、保全管理人代理、監督委員、調査委員又は法律顧問が不正の請託を受けたときは、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3 管財人、保全管理人、監督委員又は調査委員(以下この条において「管財人等」という。)が法人である場合において、管財人等の職務を行うその役員又は職員が、その管財人等の職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。管財人等が法人である場合において、その役員又は職員が、その管財人等の職務に関し、管財人等に賄賂を収受させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときも、同様とする。
4 前項の場合において、その役員又は職員が不正の請託を受けたときは、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
5 更生債権者等、株主若しくは代理委員又はこれらの者の代理人、役員若しくは職員が、関係人集会の期日における議決権の行使又は第百八十九条第二項第二号に規定する書面等投票による議決権の行使に関し、不正の請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
6 前各項の場合において、犯人又は法人である管財人等が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
(贈賄罪)
第二百七十三条 前条第一項又は第三項に規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前条第二項、第四項又は第五項に規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(国外犯)
第二百七十四条 第二百六十六条、第二百六十七条、第二百七十条、第二百七十一条及び前条の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従う。
2 第二百六十八条及び第二百七十二条(第五項を除く。)の罪は、刑法第四条の例に従う。
3 第二百七十二条第五項の罪は、日本国外において同項の罪を犯した者にも適用する。
(両罰規定)
第二百七十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、第二百六十六条、第二百六十七条、第二百六十九条(第一項を除く。)、第二百七十条、第二百七十一条又は第二百七十三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
(過料)
第二百七十六条 更生会社又は更生会社の事業の更生のために債務を負担し、若しくは担保を提供する者は、第二百九条第四項の規定による裁判所の命令に違反した場合には、百万円以下の過料に処する。